《電力》〈原子力〉[H30:問4]原子力発電所の蒸気タービンの特徴に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★☆☆☆☆(易しい)

次の文章は,我が国の原子力発電所の蒸気タービンの特徴に関する記述である。

原子力発電所の蒸気タービンは,高圧タービンと低圧タービンから構成され,くし形に配置されている。

原子力発電所においては,原子炉又は蒸気発生器によって発生した蒸気が高圧タービンに送られ,高圧タービンにて所定の仕事を行った排気は,\(\fbox {  (ア)  }\)分離器に送られて,排気に含まれる\(\fbox {  (ア)  }\)を除去した後に低圧タービンに送られる。

高圧タービンの入口蒸気は,\(\fbox {  (イ)  }\)であるため,火力発電所の高圧タービンの入口蒸気に比べて,圧力・温度ともに\(\fbox {  (ウ)  }\),そのため,原子力発電所の熱効率は,火力発電所と比べて\(\fbox {  (ウ)  }\)なる。また,原子力発電所の高圧タービンに送られる蒸気量は,同じ出力に対する火力発電所と比べて\(\fbox {  (エ)  }\)。

低圧タービンの最終段翼は,\(35~54\)インチ(約\( \ 89 \ \mathrm {cm} \ ~ \ 137 \ \mathrm {cm}\))の長大な翼を使用し,\(\fbox {  (ア)  }\)による翼の浸食を防ぐため翼先端周速度を減らさなければならないので,タービンの回転速度は\(\fbox {  (オ)  }\)としている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 空気 & 過熱蒸気 & 高く & 多い & 1500 \ \mathrm {min ^{-1}}又は1800 \ \mathrm {min ^{-1}} \\
\hline
(2) & 湿分 & 飽和蒸気 & 低く & 多い & 1500 \ \mathrm {min ^{-1}}又は1800 \ \mathrm {min ^{-1}} \\
\hline
(3) & 空気 & 飽和蒸気 & 低く & 多い & 750 \ \mathrm {min ^{-1}}又は900 \ \mathrm {min ^{-1}} \\
\hline
(4) & 湿分 & 飽和蒸気 & 高く & 少ない & 750 \ \mathrm {min ^{-1}}又は900 \ \mathrm {min ^{-1}} \\
\hline
(5) & 空気 & 過熱蒸気 & 高く & 少ない & 750 \ \mathrm {min ^{-1}}又は900 \ \mathrm {min ^{-1}} \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

原子力発電所の特徴で,やや機械分野の範囲になるかもしれませんが,内容は原子力発電所の基本となりますので,本問でよく理解しておくようにしましょう。過熱器がなく蒸気が高温高圧の乾いた過熱蒸気にできないので,火力発電所の低圧タービンが\(3000 \ \mathrm {min ^{-1}}又は3600 \ \mathrm {min ^{-1}}\)が主流なのに対し,原子力発電所の低圧タービンの回転速度が\(1500 \ \mathrm {min ^{-1}}又は1800 \ \mathrm {min ^{-1}}\)となっているのが特徴です。

【解答】

解答:(2)
(ア)
原子炉から飽和蒸気で送られた蒸気は高圧タービンで仕事をすることにより,湿分を含む蒸気となります。したがって,湿分によるタービン翼の損傷を防ぐため,湿分分離器があります。

(イ)
(ウ)
原子力発電所においては,高圧タービンの入口蒸気(≒原子炉から発生する蒸気)は飽和蒸気(水から水蒸気になったギリギリの蒸気)であるので,火力発電所に比べ,圧力・温度ともに低くなります。

(エ)
原子力発電所の蒸気は,火力発電所に比べ圧力・温度ともに低く,単位流量あたりの蒸気のエネルギーが小さいので,蒸気量は多くなります。

(オ)
原子力発電所の低圧タービン最終段は最も湿り気の多い蒸気が通過する場所で,翼の浸食が最も厳しい場所となります。したがって,火力発電所よりタービンの回転速度を遅くした設計となっています。