《機械》〈回転機〉[H25:問5]一般的な三相同期電動機の始動方法に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,一般的な三相同期電動機の始動方法に関する記述である。

同期電動機は始動のときに回転子を同期速度付近まで回転させる必要がある。

一つの方法として,回転子の磁極面に施した\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)を利用して,始動トルクを発生させる方法があり,\( \ \fbox {  (ア)  } \ \)は誘導電動機のかご形\( \ \fbox {  (イ)  } \ \)と同じ働きをする。この方法を\( \ \fbox {  (ウ)  } \ \)法という。

この場合,\( \ \fbox {  (エ)  } \ \)に全電圧を直接加えると大きな始動電流が流れるので,始動補償器,直列リアクトル,始動用変圧器などを用い,低い電圧にして始動する。

他の方法には,誘導電動機や直流電動機を用い,これに直結した三相同期電動機を回転させ,回転子が同期速度付近になったとき同期電動機の界磁巻線を励磁し電源に接続する方法があり,これを\( \ \fbox {  (オ)  } \ \)法という。この方法は主に大容量機に採用されている。

上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ),(エ)及び(オ)に当てはまる組合せとして,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
\[
\begin{array}{cccccc}
& (ア) & (イ) & (ウ) & (エ) & (オ) \\
\hline
(1) & 制動巻線 & 回転子導体 & 自己始動 & 固定子巻線 & 始動電動機 \\
\hline
(2) & 界磁巻線 & 回転子導体 & \mathrm {Y}-\mathrm {\Delta }始動 & 固定子巻線 & 始動電動機 \\
\hline
(3) & 制動巻線 & 固定子巻線 & \mathrm {Y}-\mathrm {\Delta }始動 & 回転子導体 & 自己始動 \\
\hline
(4) & 界磁巻線 & 固定子巻線 & 自己始動 & 回転子導体 & 始動電動機 \\
\hline
(5) & 制動巻線 & 回転子導体 & \mathrm {Y}-\mathrm {\Delta }始動 & 固定子巻線 & 自己始動 \\
\hline
\end{array}
\]

【ワンポイント解説】

同期電動機の始動方法に関する問題です。同期電動機の停止時は\( \ 180° \ \)回転する毎にトルクの向きが反転するため,始動時同期速度にするまでは何らかの形で加速させる必要があり,主に5つの方法があります。

1.自己始動法
回転子の磁極面に施した制動巻線を利用して始動する方式です。制動巻線に発生するトルクにより始動させ,制動巻線はかご形誘導電動機の回転子と同じ原理で始動させます。

2.始動電動機法
三相同期電動機に直結した誘導電動機や直流電動機を用いて同期速度付近まで加速した後,界磁電流を流して励磁し同期する方法です。始動用の誘導電動機は,同期電動機よりも磁極数を\( \ 2 \ \)極少ないものを選定して,同期速度以上に加速できるようにします。

3.サイリスタ始動法
同期電動機をあらかじめ励磁しておき,サイリスタ変換装置により電動機の周波数を変化させることにより始動する方法です。

4.同期始動法
同期電動機と同期発電機を停止状態で接続し,同期発電機を始動して同期速度まで回転数を上昇させる方式です。ほかの同期発電機が使用できる場合に限り適用されます。

5.低周波始動法
周波数を可変させることができる電源を使用して始動する方式です。低周波のうちに同期化した後,励磁を与えて加速していきます。

【解答】

解答:(1)
(ア)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,回転子の磁極面に施した制動巻線を利用して始動する方式です。

(イ)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,制動巻線はかご形誘導電動機の回転子導体と同じ働きをします。

(ウ)
ワンポイント解説「1.自己始動法」の通り,制動巻線を使用して始動する方法を自己始動法と言います。

(エ)
自己始動法において,始動時は回転磁界により固定子巻線に高電圧が誘導され,大きな始動電流が流れるので,始動補償器,直列リアクトル,始動用変圧器等を用いて,低い電圧にして始動します。

(オ)
ワンポイント解説「2.始動電動機法」の通り,誘導電動機や直流電動機を使用し始動する方法を始動電動機法と言います。