《法規》〈電気設備技術基準〉[H26:問11]「電気設備技術基準の解釈」に基づく風圧荷重に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

鋼心アルミより線(ACSR)を使用する\(6600 \ \mathrm {V}\)高圧架空電線路がある。この電線路の電線の風圧荷重について「電気設備技術基準の解釈」に基づき,次の(a)及び(b)の問に答えよ。

なお,下記の条件に基づくものとする。

① 氷雪が多く,海岸地その他の低温季に最大風圧を生じる地方で,人家が多く連なっている場所以外の場所とする。

② 電線構造は図のとおりであり,各素線,鋼線ともに全てが同じ直径とする。

③ 電線被覆の絶縁体の厚さは一様とする。

④ 甲種風圧荷重は\(980 \ \mathrm {Pa}\),乙種風圧荷重の計算に使う氷雪の厚さは\(6 \ \mathrm {mm}\)とする。

   

(a) 高温季において適用する風圧荷重(電線1条,長さ\(1 \ \mathrm {m}\)当たり)の値\( [ \mathrm {N} ] \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) 4.9  (2) 5.9  (3) 7.9  (4) 9.8  (5) 21.6

(b) 低温季において適用する風圧荷重(電線1条,長さ\(1 \ \mathrm {m}\)当たり)の値\( [ \mathrm {N} ] \)として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

 (1) 4.9  (2) 8.9  (3) 10.8  (4) 17.7  (5) 21.6

【ワンポイント解説】

電気設備技術基準の解釈第58条からの出題となっています。内容は若干複雑ですが,風圧荷重は非常にパターン化された問題が多く,出題頻度も高い内容なので,確実に得点できるようにしておきましょう。

1.風圧荷重の種類
①甲種風圧荷重
 電線の横から風が吹くと想定し,電線の垂直投影面に加わる圧力の大きさを基本として計算したもの,もしくは風速\(40 \ \mathrm {m / s}\)の風圧荷重を想定した風洞実験に基づく値から計算したものです。

②乙種風圧荷重
 電線の周囲に厚さ\(6 \ \mathrm {mm}\),比重\(0.9\)の氷雪が付着した状態に対し,甲種風圧荷重の\(0.5\)倍として計算したものです。

③丙種風圧荷重
 甲種風圧荷重の\(0.5\)倍として計算したものです。

2.風圧荷重の適用
①高温季
 甲種風圧荷重 

②低温季
 a.氷雪の多い地方で海岸地その他の低温季に最大風圧が生じる地方
  甲種風圧荷重もしくは乙種風圧荷重の大きい方

 b.氷雪の多い地方(a.以外)
  乙種風圧荷重

 c.氷雪の多い地方以外の地方
  丙種風圧荷重

【解答】

(a)解答:(4)
長さ\(1 \ \mathrm {m}\)当たりの垂直投影面積\(S_{1}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
S_{1} &=& ( 2.0 + 2.0 + 2.0 + 2.0 +2.0 ) \times 10^{-3} \times 1 \\[ 5pt ] &=&1.0 \times 10^{-2} \ \mathrm {[m^{2}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,甲種風圧荷重\(W_{1}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
W_{1} &=& 980 \times S_{1} \\[ 5pt ] &=& 980 \times 1.0 \times 10^{-2} \\[ 5pt ] &=&9.8 \ \mathrm {[N]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(b)解答:(3)
乙種風圧荷重を求める。厚さ\(6 \ \mathrm {mm}\)の氷雪が付着した時の長さ\(1 \ \mathrm {m}\)当たりの垂直投影面積\(S_{2}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
S_{2} &=& ( 10.0 +6.0 \times 2 ) \times 10^{-3} \times 1 \\[ 5pt ] &=&2.2 \times 10^{-2} \ \mathrm {[m^{2}]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,ワンポイント解説「1.風圧荷重の種類」より乙種風圧荷重\(W_{2}\)は,
\[
\begin{eqnarray}
W_{2} &=& 980 \times 0.5 \times S_{2} \\[ 5pt ] &=& 980 \times 0.5 \times 2.2 \times 10^{-2} \\[ 5pt ] &≒&10.8 \ \mathrm {[N]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。ワンポイント解説「2.風圧荷重の適用」より,\(W_{1} < W_{2}\)なので,低温季において適応する風圧荷重は,\(10.8 \ \mathrm {[N]}\)となる。

<電気設備技術基準の解釈第58条>(抜粋)
架空電線路の強度検討に用いる荷重は、次の各号によること。
一 風圧荷重 架空電線路の構成材に加わる風圧による荷重であって、次の規定によるもの

イ 風圧荷重の種類は、次によること。

(イ) 甲種風圧荷重 58-1表に規定する構成材の垂直投影面に加わる圧力を基礎として計算したもの、又は風速40m/s以上を想定した風洞実験に基づく値より計算したもの

(ロ) 乙種風圧荷重 架渉線の周囲に厚さ6mm、比重0.9の氷雪が付着した状態に対し、甲種風圧荷重の0.5倍を基礎として計算したもの

(ハ) 丙種風圧荷重 甲種風圧荷重の0.5倍を基礎として計算したもの

(ニ) 着雪時風圧荷重 架渉線の周囲に比重0.6の雪が同心円状に付着した状態に対し、甲種風圧荷重の0.3倍を基礎として計算したもの

ロ 風圧荷重の適用区分は、58-2表によること。ただし、異常着雪時想定荷重の計算においては、同表にかかわらず着雪時風圧荷重を適用すること。