【三角関数③】”サイン”カーブの名前の由来。サインを使ってサインカーブが描けることをくわしく解説

三角関数①では,サインカーブをばねの動きで解説しました。
しかし,これではなぜ”サイン”カーブなのかが分かりません。
サインカーブとは,サインの値を使って描くことができる曲線です。

円運動の\( \ y \ \)軸方向の動きだけに注目する

点\( \ \mathrm {P} \ \)が円周上を一定の速度で動くとします。分かりやすいように,\( \ 3 \ \)秒間で\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ動くとしましょう。

\( \ 1 \ \)秒間に\( \ \displaystyle \frac{\pi}{6} \ \)動くということです。

ここで,点\( \ \mathrm {P} \ \)が動いた距離そのものではなく,”\( \ y \ \)軸方向にどれだけ動いたか”だけに注目します。

最初の\( \ 1 \ \)秒(赤色)が長く,次の\( \ 1 \ \)秒(水色)が中くらい,最後の\( \ 1 \ \)秒(緑色)が短くなります。三角関数①で解説した,サインカーブの特徴ですね。

次に,時間を横軸にとって,点\( \ \mathrm {P} \ \)の\( \ y \ \)座標を縦軸にしたグラフをかきます。
こうすることで,円周上を回る点\( \ \mathrm {P} \ \)を,時系列で書き表すことができます。

点\( \ \mathrm {P} \ \)をもっと動かしましょう。最大値である\( \ 1 \ \)から\( \ 0 \ \)に向かうときは,最初の\( \ 1 \ \)秒(緑色)が短く,次の\( \ 1 \ \)秒(水色)が中くらい,最後の\( \ 1 \ \)秒(赤色)が長くなります。だんだんとサインカーブが見えてきましたね。

今度は円の左下です。まずは\( \ 0 \ \)から\( \ -1 \ \)に向かいます。ここでも,最初の\( \ 1 \ \)秒(赤色)が長く,次の\( \ 1 \ \)秒(水色)が中くらい,最後の\( \ 1 \ \)秒(緑色)が短くなります。

最後は円の右下です。最小値である\( \ -1 \ \)から\( \ 0 \ \)へ向かいます。最初の\( \ 1 \ \)秒(緑色)が短く,次の\( \ 1 \ \)秒(水色)が中くらい,最後の\( \ 1 \ \)秒(赤色)が長くなります。

以上,点\( \ \mathrm {P} \ \)の”\( \ y \ \)軸方向の動き”に注目しました。言い換えれば,\( \ y \ \)座標の時間変化を描いたということです。
そして,単位円の\( \ y \ \)座標とはサインのことですから,この曲線を”サイン”カーブといいます。

変化量はどれくらい違うのか

前の説明では,”長い,中くらい,短い…“と抽象的に表現しましたが,実際にどれくらい違うのかを見てきましょう。

点\( \ \mathrm {P} \ \)は\( \ 1 \ \)秒間で\( \ \displaystyle \frac{\pi}{6} \ \)動きます。点\( \ \mathrm {P} \ \)から\( \ x \ \)軸に線をおろして直角三角形を作ると,下図のようになります。

\( \ \displaystyle \frac{\pi}{6} \ \)の角度を持つ直角三角形は特別で,辺の比が\( \ 1:\displaystyle \frac{1}{2}:\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \ \)でしたね。そして,単位円の半径が\( \ 1 \ \)なので,三角形の斜辺の長さは\( \ 1 \ \)です。よって,底辺が\( \ \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \ \),高さが\( \ \displaystyle \frac{1}{2} \ \)となります。

以上より点\( \ \mathrm {P} \ \)が\( \ y \ \)軸方向に動いた距離は\( \ \displaystyle \frac{1}{2} \ \)です。

次の\( \ 1 \ \)秒間で点\( \ \mathrm {P} \ \)はさらに\( \ \displaystyle \frac{\pi}{6} \ \)進みますから,\( \ x \ \)軸と作る角度は\( \ \displaystyle \frac{\pi}{3} \ \)となります。

\( \ \displaystyle \frac{\pi}{3} \ \)の角を持つ直角三角形は特別な三角形で, 辺の比が\( \ 1:\displaystyle \frac{1}{2}:\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \ \)でしたね。
そして,単位円の半径が\( \ 1 \ \)なので,三角形の斜辺の長さは\( \ 1 \ \)です。
よって,底辺が\( \ \displaystyle \frac{1}{2} \ \),高さが\( \ \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \ \)となります。

以上より,この\( \ 1 \ \)秒間で点\( \ \mathrm {P} \ \)が\( \ y \ \)軸方向に動いた距離は\( \ \displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} – \displaystyle \frac{1}{2}\ \)です。

そして,次の\( \ 1 \ \)秒間で点\( \ \mathrm {P} \ \)は\( \ (0,1) \ \)に移動します。この\( \ 1 \ \)秒間で点\( \ \mathrm {P} \ \)が\( \ y \ \)軸方向に動いた距離は\( \ 1-\displaystyle \frac{\sqrt{3}}{2} \ \)です。

以上をまとめるとこちらです。点\( \ \mathrm {P} \ \)の\( \ y \ \)軸方向の動きは,\( \ 3 \ \)秒間で\( \ 0 \ \)から\( \ 1 \ \)まで進むわけですが,最初の\( \ 1 \ \)秒間で\( \ 0.5 \ \)進み,最後の\( \ 1 \ \)秒間は\( \ 0.134 \ \)しか進まないことが分かります。

時間を横軸にとって,サインカーブにしたものがこちらです。\( \ 0 \ \)から最大値である\( \ 1 \ \)に向かうにつれて,増加量が小さくなることが分かります。

そして,ここまでは時間を横軸にとっていましたが,一定の速度で動いているわけですから,角度を横軸に取っても同じです。円の一周が\( \ 2 \pi \ \)ですから,波の周期も\( \ 2 \pi \ \)となります。

交流電源の電圧はサインカーブで変化する

ここまでの解説で,サインカーブがその名の通り”サイン”のカーブであることが分かりました。

ここで,目的を見失ってはいけないので,そもそもなぜサインカーブを勉強しているかを復習します。

交流電源の電圧がサインカーブで変化するからです(三角関数①)。
交流電源の電圧は,ある時点で\( \ 0 \ \)であり,徐々に上がって最大値となり,徐々に下がって再び\( \ 0 \ \)になり,今度はマイナスの方向に向かい,最小値をとって,また\( \ 0 \ \)に戻り,再びプラス方向に上がって最大値を迎え…と繰り返します。
そして電圧の上がり方・下がり方は一定ではないため,ギザギザ線ではなく,ゆるやかなサインカーブとなります。

コサインカーブはどうなるか

コサインカーブもサインカーブと同様に描くことができます。コサインとは\( \ x \ \)座標のことですから,単位円の下側にカーブを描く方が分かりやすいでしょう。

スタートの座標は\( \ ( 1,0 ) \ \)で,コサインとは\( \ x \ \)座標のことですから,コサインカーブは最大値である\( \ 1 \ \)から始まります。
その後の\( \ x \ \)座標の動きを,時間または角度ごとに描いたのがコサインカーブです。

サインカーブと同様に,点\( \ \mathrm {P} \ \)が\( \ 1 \ \)秒で\( \ \displaystyle \frac{\pi}{6} \ \)だけ移動するとします(なお,単位円は半径\( \ 1 \ \)の円なので,\( \ \displaystyle \frac{\pi}{6} \ \)というのは,角度のことでもあり,円周の長さでもあります)。

点\( \ \mathrm {P} \ \)の移動距離のうち,\( \ x \ \)軸方向の動きだけに注目すると,最初の\( \ 1 \ \)秒は緑色矢印,次の\( \ 1 \ \)秒は水色矢印,次の\( \ 1 \ \)秒は赤矢印です。

サインカーブと同様に,最大値である\( \ 1 \ \)から\( \ 0 \ \)に向かうにつれて減少量が大きくなっています。

その後,点\( \ \mathrm {P} \ \)が\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)まで移動したら座標\( \ (0,1) \ \)ですからコサインは\( \ 0 \ \),

\( \ \pi \ \)なら座標は\( \ ( -1,0 ) \ \)ですからコサインは\( \ -1 \ \),

\( \ \displaystyle \frac{3}{2}\pi \ \)なら座標は\( \ ( 0,1 ) \ \)ですからコサインは\( \ 0 \ \),

\( \ 2 \pi \ \)なら座標は\( \ ( 1,0 ) \ \)ですからコサインは\( \ 1 \ \)となります。

向きを直すとこちらです。

なお,\( \ \theta \ \)が\( \ 2 \pi \ \)よりずっと大きい値や負の値であっても,コサインの値は存在しますから, \( \ 2 \pi \ \)を一つの周期としてずっと続くカーブとなります。これもサインカーブと同じですね。
サインカーブとコサインカーブを並べて比較すると図\( \ 23 \ \)です。コサインカーブは,サインカーブを\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ左にずらしたような形となります。

練習問題

ちょっと変わった練習問題となりますが,フリーハンドでサインカーブを描いてみましょう。
電験の問題を解くために,正確なサインカーブを描く必要はありません。しかし,あまりにも雑な図を描いてしまうと,自分の書いた図に惑わされて,問題が解きづらくなることも。
そこで,時間のロスにならない程度に,”いい感じの”サインカーブを描くコツを紹介します。

【解答】(クリックして表示)

① ノートの罫線(印刷されている横の線)があると思うので,その\( \ 5 \ \)本,つまり\( \ 4 \ \)行分を使います。
② 等間隔に点を\( \ 3 \ \)つ打ちます
③ 真ん中の位置の,\( \ 2 \ \)つ上の罫線と,\( \ 2 \ \)つ下の罫線に点を打ちます
④ 今度はだいたい\( \ 3 \ \)等分して,図の通り,\( \ 1 \ \)つ上の罫線と\( \ 1 \ \)つ下の罫線に点を打ちます。※サインカーブでは,\( \ y=0 \ \)の近くで変化量が大きいので,\( \ 0 \ \)の近くで横軸が\( \ \displaystyle \frac{1}{3} \ \)進むだけで縦軸は\( \ \displaystyle \frac{1}{2} \ \)進みます。
⑤ なだらかな線で結びます。

間である。