【三角比①】三角比とは何か。斜辺・底辺・高さの定義から詳しく解説

斜辺・底辺・高さの定義

ひとくちに直角三角形といっても,形も大きさも向きも様々です。
まずは向きを統一しましょう。直角が右下にくるようにします。

このときに左下にくる角度を\( \ \theta \ \)(シータ)と呼びます。例えば左下の角度が\( \ 20^\circ \ \)であれば, “\( \ \theta=20^\circ \ \)の直角三角形” と表現します。

辺の名前は,斜めの一番長い辺が ”斜辺(しゃへん)” ,横の辺が ”底辺” ,縦の辺が ”高さ” です。

※底辺は “隣辺” ,高さは “対辺” とも言いますが,ここでは分かりやすさを重視して,”底辺” と “高さ” とします。

ここで注意したいのが,どの角度を\( \ \theta \ \)とするかで,底辺と高さが変わることです。

同じ三角形を,ひっくり返して置いた場合は,”\( \ \theta=70^\circ \ \)の直角三角形” と表現し,底辺と斜辺も図のように変わります。

斜辺が\( \ 2 \ \)倍,\( \ 3 \ \)倍のとき,高さはどうなる?

ここで,\( \ \theta=20^\circ \ \),斜辺\( \ 2 \ \mathrm {cm} \ \)の直角三角形を一緒に描いてみましょう。分度器も定規も使わず適当でいいです。ノートがなければ,頭の中でも構いません。

ノートの罫線(印刷されている横線)に対して,\( \ 20^\circ \ \)っぽい角度で直線をひき,長さ\( \ 2 \ \mathrm {cm} \ \)っぽいところで止めます。これが斜辺です。そこから真下に線を引き,ノートの罫線と直角になるところで止めます。底辺を書いて,直角三角形のできあがりです。

今みなさまは,”高さ” で悩まなかったはずです。つまり,”\( \ \theta \ \)と斜辺が決まっていれば,高さは自動的に決まった” のです。このことは,後ほど解説します。

今度は,\( \ \theta=20^\circ \ \)はそのままで,斜辺を\( \ 2 \ \)倍の\( \ 4 \ \mathrm {cm} \ \)にします。高さはどうなるでしょう?高さも\( \ 2 \ \)倍ですね。
斜辺を\( \ 3 \ \)倍の\( \ 6 \ \mathrm {cm} \ \)にするとどうでしょう。高さも\( \ 3 \ \)倍です。

実際の高さはこうなります。

ここで,高さ:斜辺 で比をとると,\( \ 3 \ \)つの三角形はどれも比が同じだと分かります。

斜辺\( \ 2 \ \mathrm {cm} \ \)の三角形の高さ:斜辺\( \ = 0.684:2 = 0.342:1 \ \)
斜辺\( \ 4 \ \mathrm {cm} \ \)の三角形の高さ:斜辺\( \ = 1.368:4 = 0.342:1 \ \)
斜辺\( \ 6 \ \mathrm {cm} \ \)の三角形の高さ:斜辺\( \ = 2.052:6 = 0.342:1 \ \)

三角比とは,辺の長さ:辺の長さ の ”比の値” のこと

みなさまは, ”比の値” という言葉をご存じでしょうか。
小学\( \ 6 \ \)年生くらいで,比と一緒に習っているはずです。といっても,私は覚えていませんでした。

比の値とは,\( \ a:b \ \)で表された比で,\( \ b \ \)を\( \ 1 \ \)とみたときに\( \ a \ \)がいくつになるかです。
要するに,\( \ a:b \ \)の比の値は,\( \ a \div b \ \)です。
例えば, \( \ 3:4 \ \)の比の値は,\( \ 3 \div 4 = 0.75 \ \)です。

同様に, 高さ:斜辺 の比の値は, 高さ\( \ \div \ \)斜辺です。

三角比とは,直角三角形の辺の長さと辺の長さの比の値なのです。

ここで,図\( \ 6 \ \)の\( \ 3 \ \)つの三角形について,比の値を確認しましょう。

斜辺\( \ 2 \ \mathrm {cm} \ \)の三角形の高さ\( \ \div \ \)斜辺\( \ = 0.684 \div 2 = 0.342 \ \)
斜辺\( \ 4 \ \mathrm {cm} \ \)の三角形の高さ\( \ \div \ \)斜辺\( \ = 1.368 \div 4 = 0.342 \ \)
斜辺\( \ 6 \ \mathrm {cm} \ \)の三角形の高さ\( \ \div \ \)斜辺\( \ = 2.052 \div 6 = 0.342 \ \)

比の値が同じです。

この\( \ 3 \ \)つだけでなく,\( \ \theta=20^\circ \ \)の直角三角形ならば,必ず 高さ\( \ \div \ \)斜辺\( \ = 0.342 \ \) となります。

言い換えれば,” \( \ \theta \ \)が決まれば, 高さ\( \ \div \ \)斜辺も決まる” のです。

つまり,辺の長さが分からないのに,辺と辺の比の値だけが分かる,ということですね。
これが,三角比が難しい理由ですが,ご理解いただけましたでしょうか?

【参考:三角比の一覧表】

高さ\( \ \div \ \)斜辺は,\( \ \theta \ \)ごとに決まった値なので,一覧表があります。
確かに\( \ \theta=20^\circ \ \)なら\( \ 0.342 \ \)になっていますね。

角度[°]高さ/斜辺角度[°]高さ/斜辺角度[°]高さ/斜辺角度[°]高さ/斜辺角度[°]高さ/斜辺
10.017210.358410.656610.875810.988
20.035220.375420.669620.883820.990
30.052230.391430.682630.891830.993
40.070240.407440.695640.899840.995
50.087250.423450.707650.906850.996
60.105260.438460.719660.914860.998
70.122270.454470.731670.921870.999
80.139280.469480.743680.927880.999
90.156290.485490.755690.934891.000
100.174300.500500.766700.940
110.191310.515510.777710.946
120.208320.530520.788720.951
130.225330.545530.799730.956
140.242340.559540.809740.961
150.259350.574550.819750.966
160.276360.588560.829760.970
170.292370.602570.839770.974
180.309380.616580.848780.978
190.326390.629590.857790.982
200.342400.643600.866800.985

練習問題

図の直角三角形について,印をつけた角(角度を\( \ \theta \ \)とする)に注目した場合の,斜辺・底辺・高さを答えましょう。
さらに,高さ:斜辺の比の値を求め,一覧表を利用して\( \ \theta \ \)がおおよそ何度か(何度から何度の間か)を求めましょう。

【解答】(クリックして表示)

直角が右下,\( \ \theta \ \)が左下になるように直角三角形を置きます。そして,高さ:斜辺の比の値とは,高さ\( \ \div \ \)斜辺のことです。

\( \ (1) \ \) 斜辺\( \ 5 \ \mathrm {cm} \ \),底辺\( \ 3 \ \mathrm {cm} \ \),高さ\( \ 4 \ \mathrm {cm} \ \),\( \ \theta \ \)は\( \ 53^\circ \ \)と\( \ 54^\circ \ \)の間

斜辺・底辺・高さは定義の通りです。
比の値は,高さ\( \ \div \ \)斜辺 \( \ = 4 \div 5 = 0.8 \ \)です。
一覧表から\( \ 0.8 \ \)に近い値を探して, \( \ \theta \ \)は\( \ 53^\circ \ \)と\( \ 54^\circ \ \)の間だと分かります。

\( \ (2) \ \) 斜辺\( \ 5 \ \mathrm {cm} \ \),底辺\( \ 4 \ \mathrm {cm} \ \),高さ\( \ 3 \ \mathrm {cm} \ \),\( \ \theta \ \)は\( \ 36^\circ \ \)と\( \ 37^\circ \ \)の間

斜辺・底辺・高さは定義の通りです。
比の値は,高さ\( \ \div \ \)斜辺 \( \ = 3 \div 5 = 0.6 \ \)です。
一覧表から\( \ 0.6 \ \)に近い値を探して,\( \ \theta \ \)は\( \ 36^\circ \ \)と\( \ 37^\circ \ \)の間だと分かります。

【別解】\( \ (1) \ \) の角度が\( \ 53^\circ \ \)と\( \ 54^\circ \ \)の間だと分かったので,\( \ 90^\circ \ \)からこれらの角度を引き算して,\( \ 36^\circ \ \)と\( \ 37^\circ \ \)の間である。