【ベクトル①】ベクトルとは?ベクトルが同じとはどういうことか?足し算の考え方も解説

まずはベクトルとは何か,丁寧に解説します。

ベクトルとは「大きさ」と「向き」を同時に表すもの

ベクトルとは,「大きさ」と「向き」とを同時に表すものです。

例えば図\( \ 1 \ \)のように右上を向いたベクトルを考えます。

ある量がベクトルであることは,記号の上にドットを付けて表記します。
\( \ \dot{A} \ \)と書いて,「エーベクトル」と読みます。

※\( \ \vec{A} \ \)と表記する方法もあります。

矢印の始まりをベクトルの始点,終わりを終点と呼びます。

矢印の長さ,つまりベクトルの大きさは,ドットを取って表現します。
つまり\( \ \dot{A} \ \)の大きさは,\( \ A \ \)です。

そして,ベクトルにおいて大切なことは,「位置は関係がないこと」です。
ベクトルは「大きさ」と「向き」を表すものであり,矢印がどの場所から始まっているかは関係がないのです。

なぜベクトルが便利なのか

なぜベクトルを学習するのかと言うと,交流回路の計算に便利だからです。
交流電源の電圧は時間によって変化するため,サインカーブ(図\( \ 2 \ \))で表せるのでしたね(三角関数①)。

そしてサインカーブは,「最大値」と「位相」で決まります(三角関数⑥)。
いうなれば,「大きさ」と「位相(角度)」の\( \ 2 \ \)つの情報でサインカーブを描くことができます。

この特徴が,「大きさ」と「向き」の\( \ 2 \ \)つの情報を同時に表すことができる,ベクトルと相性がよいのです(図\( \ 3 \ \))。

今はピンと来ないかもしれませんが,学習を進めると,ベクトルの便利さを実感できると思います。

ベクトルが「同じ」とは?

ベクトルとは,大きさと向きを同時に表すものですから,ベクトルが「同じ」とは,「大きさ」も「向き」の両方が同じだということです。
では,図\( \ 4 \ \)で,\( \ \dot{A} \ \)と同じベクトルを探してみてください。

まずは大きさについて考えます。
大きさが同じなのは,\( \ \dot{B} \ \),\( \ \dot{E} \ \),\( \ \dot{F} \ \)です(図\( \ 5 \ \))。

なお,ベクトルからドットを取ると,そのベクトルの「大きさ」という意味なので,このように描くことができます。

\[
\begin{eqnarray}
A=B=E=F\\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

次に向きについて考えます。
向きが同じなのは,\( \ \dot{D} \ \),\( \ \dot{F} \ \),\( \ \dot{H} \ \)です(図\( \ 6 \ \))。

以上より,大きさと向きの両方が同じものは,\( \ \dot{F} \ \)です。

つまり,\( \ \dot{A} \ \)と\( \ \dot{F} \ \)は,大きさも向きも同じため,”全く同じベクトル”ということができます。
始点と終点の位置が違いますが,前に述べた通り,ベクトルでは位置は関係ありません。
「大きさ」と「向き」の両方が同じなら,同じベクトルです。

したがって,\( \ \dot{A}=\dot{F} \ \)です。

言い換えれば,ベクトルは「自由に平行移動が可能」ということです(図\( \ 7 \ \))。
ここはとても重要なので,確実におさえてください。

ベクトルの足し算:向きが同じまたは逆の場合

ここからは,ベクトルの足し算を学習します。
どんな場合も,終点と始点をつなぎ合わせて全体のスタートとゴールをつなぎ合わせる,というのが原則です。

まずは,向きが同じ場合で,\( \ \dot{A} +\dot{B} \ \)を考えます(図\( \ 8 \ \))。

\( \ \dot{A} \ \)の終点と,\( \ \dot{B} \ \)の始点をつないで,全体のスタートとゴールをつなぎ合わせたら完成です。

続いて,向きが逆の場合です(図\( \ 9 \ \))。

やはり終点と始点をつないで,全体のスタートとゴールをつなぎ合わせたら完成です。

では,向きが同じでも逆向きでもない場合はどうするのでしょうか。

ベクトルの足し算:向きが同じでも逆向きでもない場合

向きが同じでも逆向きでもない場合です。

この場合も,単純につなぎ合わせればよいのです。
\( \ \dot{A} \ \)の終点と,\( \ \dot{B} \ \)の始点をつないでから,全体のスタートとゴールをつなぎ合わせたら完成です(図\( \ 10 \ \))。

ベクトルの足し算の考え方:慣れてきたら平行四辺形の対角線と考えよう

上で述べたとおり,ベクトルの足し算は,どんな場合も「矢印同士のつなぎ合わせ」です。

しかしここでは,ちょっと楽に解ける考え方をお伝えします。

電験の問題では,\( \ 2 \ \)つのベクトルの始点が同じ場所,というパターンが多いです。

このとき,基本である「矢印同士をつなぎ合わせる」に従えば,\( \ \dot{B} \ \)を平行移動させます(図\( \ 11 \ \))。


ここで,移動前の\( \ \dot{B} \ \)と,移動後の\( \ \dot{B} \ \)に注目してください(図\( \ 12 \ \))。

これらは平行です。平行移動させたのですから,当たり前ですね。

そして,長さも同じです。平行移動させただけですからね。

したがって,この四角形は必ず「平行四辺形」となります。

そして,\( \ \dot{A} +\dot{B} \ \)は,図\( \ 13 \ \)の通りです。

これって「平行四辺形の対角線」ですね。

以上をまとめると,始点が揃っている\( \ 2 \ \)つのベクトルを足し算するとき,
平行移動をさせて,終点と始点をつないで考えてもよいですが,
平行四辺形を描いて,その対角線と考えることもできます(図\( \ 14 \ \))。

電験では始点が揃っている場合が多いので,平行四辺形の考え方を使うのが,早く解くことができ,おススメです。

\( \ 3 \ \)つのベクトルを足す場合

足すベクトルが\( \ 3 \ \)つの場合は,まずどれか\( \ 2 \ \)つを足し算してから,残りの\( \ 1 \ \)つを足します。
足し算するベクトルが\( \ 4 \ \)つ,\( \ 5 \ \)つとなっても同様です(図\( \ 15 \ \))。

練習問題

\( \ (1) \ \) \( \ \dot{A} +\dot{B} \ \)を求めよ(図\( \ 16 \ \))。

\( \ (2) \ \) \( \ \dot{A} +\dot{B} \ \)を求めよ(図\( \ 17 \ \))。

\( \ (3) \ \) \( \ \dot{A} +\dot{B} +\dot{C} \ \)を求めよ(図\( \ 18 \ \))。

【解答】(クリックして表示)

\( \ (1) \ \) \( \ \dot{A} +\dot{B} \ \)は図\( \ 19 \ \)の通り,\( \ \dot{A} \ \)の終点と,\( \ \dot{B} \ \)の始点をつなぎ合わせて,全体のスタートからゴールを結びます。

\( \ (2) \ \) \( \ \dot{A} +\dot{B} \ \)は図\( \ 20 \ \)の通り,平行四辺形を描いて,その対角線です。
こちらも,\( \ (1) \ \)と同様に\( \ \dot{A} \ \)の終点と,\( \ \dot{B} \ \)の始点をつなぎ合わせて,全体のスタートからゴールを結んでも構いません。

\( \ (3) \ \) \( \ \dot{A} +\dot{B}+\dot{C} \ \)は図\( \ 21 \ \)の通り,まずはどれか\( \ 2 \ \)つを足し算してから,残りの\( \ 1 \ \)つを足します。