ここから,ベクトル図を描く練習をします。
まずはとてもシンプルな回路から始めます。
抵抗・コイル・コンデンサのうち,どれか\( \ 1 \ \)つだけの回路です。
抵抗だけの回路
図\( \ 1 \ \)のような,抵抗だけの回路です。

電圧ベクトルを\( \ \dot{V} \ \),電流ベクトルを\( \ \dot{I} \ \)とします。
ベクトル図の書き方の手順はこちらです。
①基準ベクトルを決める
②右向きに描く
③残りのベクトルを描く
一緒に描いていきましょう。
①基準ベクトルをどれにするか決めます。今回は電圧ベクトルにしましょう。
②基準ベクトルは右向きに描きます。
右向きでないとダメということではありませんが,”基準ベクトルは右向き”と決めてしまった方がミスが減ります。
単位円を想像しやすいというメリットがあります。
③他のベクトルを描きます。
電流ベクトルを描きたいので,どの向きになるか考えます。
抵抗の場合,電圧と電流とで位相差は生じません(図\( \ 2 \ \))。

したがって,電流ベクトルは電圧ベクトルと同じ方向です。
以上より,抵抗だけの回路のベクトル図は図\( \ 3 \ \)となります。

コイルだけの回路
図\( \ 4 \ \)のような,コイルだけの回路です。

やはり電圧ベクトルを基準に決めて,右向きに描きます。
次に電流ベクトルがどの向きになるかを考えます。
コイルでは,電流が電圧に対して\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ遅れます(図\( \ 5 \ \))。

とにかく,コイルは電流が遅れると覚えてください。
覚え方ですが,コイルは電流を流そうとすると,”そうはさせるか”と起電力が生じるのでしたね(これを誘導起電力と言います)。
ですから,電流が後です。
\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ遅れるので,時計回りに\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ回して,下向きです。
以上より,抵抗だけの回路のベクトル図は図\( \ 6 \ \)となります。

コンデンサだけの回路
図\( \ 7 \ \)のような,コンデンサだけの回路です。

やはり電圧ベクトルを基準に決めて,右向きに描きます。
次に電流ベクトルがどの向きになるかを考えます。
コンデンサでは,電圧が電流に対して\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ遅れます(図\( \ 8 \ \))。

とにかく,コンデンサは電圧が遅れると覚えてください。
覚え方ですが,コンデンサは電流がある程度たまってから,電圧が生じるのでしたね。
ですから,電圧が後です。
電圧が\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ遅れるということは,電流が\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ進むということです。
したがって電流ベクトルは,反時計回りに\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)だけ回して,上向きです。
以上より,コンデンサだけの回路のベクトル図は図\( \ 9 \ \)となります。

ベクトル図まとめ
まとめると,抵抗・コイル・コンデンサのうち,どれか\( \ 1 \ \)つだけの回路について,
電圧と電流の関係をベクトル図にすると,図\( \ 10 \ \)になります。

電流ベクトルを基準にすると
基準は電流ベクトルにしても構いません(図\( \ 11 \ \))。
電圧ベクトル基準の場合と比べると見た目は変わりますが,回転したら同じ形になっています。

ベクトルなのに向きは気にしなくていいの?
ここで,こんな心配する方もいるでしょう。
「ベクトルは向きと大きさを表すものなのに,向きが変わってもいいの?」
この疑問にお答えしましょう。
電気回路におけるベクトルの使い方とは,刻一刻と変化する電圧や電流を,
サインカーブ(三角関数)を使わずに表すことで,計算を簡単にすることです。
刻一刻と変化する電圧や電流を表すので,ベクトルはグルグル回ります(ベクトル③)。
したがって,図\( \ 11 \ \)でいえば,電圧ベクトルと電流ベクトルの相対的な向きだけが大切なのです。
今後問題を解くときに,自分の書いたベクトル図が解説のベクトル図と違っていても,回転させて同じであれば,全く問題ありません。

