ベクトル⑤では,三角関数でインピーダンスを導出しました。
三角関数では計算が大変でしたが,ベクトル図を使うと簡単になります。
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ベクトル図を使ってインピーダンスを導出
ベクトル⑤と同じく,\( \ \mathrm {RL} \ \)直列回路で考えます。
抵抗値が\( \ R \ \)の抵抗と,インダクタンス\( \ L \ \)のコイルが,角周波数\( \ \omega \ \)の交流電源に直列に接続されているとします。
回路図に電圧ベクトルと電流ベクトルを書き込みましょう(図\( \ 1 \ \))。

電源電圧を\( \ \dot{V} \ \),抵抗にかかる電圧を\( \ \dot{V_{\mathrm {R}}} \ \),コイルにかかる電圧を\( \ \dot{V_{\mathrm {L}}} \ \)とします。
電流を\( \ \dot{I} \ \)とします。直列回路ですから,抵抗にもコイルにも同じ電流が流れます。
\( \ \dot{I_{\mathrm {R}}} \ \)や\( \ \dot{I_{\mathrm {L}}} \ \)と置く必要はありませんね。
これから\( \ \dot{V} \ \)を\( \ \dot{I} \ \)の式で書くことで,インピーダンスを求めます。
まずは分かることを書きこもう
まずは回路図に分かることをどんどん書き込んでいきましょう(図\( \ 2 \ \))。

抵抗では電圧と電流は同相です。
そして,抵抗にかかる電圧の大きさは,\( \ V_{\mathrm {R}}=RI \ \)です。
※ベクトルのドットを取ると,そのベクトルの大きさという意味になります。
次に,コイルでは電流が先,電圧が後で,位相差は\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)です。
コイルにかかる電圧の大きさは,\( \ V_{\mathrm {L}}=\omega L I \ \)です。
ここで私が重要だと思うのは,まずは抵抗とコイルそれぞれでベクトルを描いてしまうことです。
初学者が困るのは,標準ベクトルをどれに決めたらいいか分からないことだと思います。
直列回路の場合,最終的には電流ベクトルを標準にするのが良いのですが,それは繰り返し問題を解いてはじめて分かることです。
初学者は,とにかく分かることをかきましょう。標準を何にするか悩んで解けなくなるくらいなら,いっそのこと,常に電圧を標準にすると決めてしまった方がいいです。
さて,抵抗とコイルについて分かることを書きました。
さらに電源電圧のベクトル\( \ \dot{V} \ \)については以下の式が成立します。
\[
\begin{eqnarray}
\dot{V} = \dot{V_{\mathrm {R}}}+\dot{V_{\mathrm {L}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
このようにして,回路図に分かる情報を書き込みます。
同じベクトルを見つけて向きをそろえる
次に,抵抗とコイルとで別々に描いたベクトル図に注目します。
電流ベクトル\( \ \dot{I} \ \)がありますが,直列回路ですから,これは同じベクトルのはずです。
ですから向きをそろえましょう。例えば右にします(図\( \ 3 \ \))。
どの向きでも構わないのですが,右向きと決めてしまった方が楽です。

電源電圧のベクトルを計算する
\( \ \dot{V} = \dot{V_{\mathrm {R}}} + \dot{V_{\mathrm {L}}} \ \)ですから,
\( \ \dot{V_{\mathrm {R}}} \ \)と\( \ \dot{V_{\mathrm {L}}} \ \)を足します。
始点をそろえて,平行四辺形の対角線を描くのでしたね(ベクトル①)。
※今回の場合は位相差が\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)なので長方形になります。
よって\( \ \dot{V} \ \)は図\( \ 4 \ \)です。

\( \ \dot{V} \ \)の大きさ\( \ V \ \)は,三平方の定理を使って計算できます(図\( \ 5 \ \))。

\[
\begin{eqnarray}
V&=&\sqrt{V_{\mathrm {R}}^2+V_{\mathrm {L}}^2} \\[ 5pt ]
&=&\sqrt{(RI)^2+(\omega L I)^2}\\[ 5pt ]
&=&\sqrt{R^2I^2+\omega^2 L^2 I^2}\\[ 5pt ]
&=&I\sqrt{R^2+\omega^2 L^2}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
インピーダンスを計算する
インピーダンス\( \ Z \ \)は電圧を電流で割った値ですから,このようになります。
\[
\begin{eqnarray}
Z&=&\displaystyle \frac{V}{I} \\[ 5pt ]
&=&\displaystyle \frac{I\sqrt{R^2+\omega^2 L^2}}{I} \\[ 5pt ]
&=&\sqrt{R^2+\omega^2 L^2}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
三角関数で計算した場合と,同じ式を簡単に導くことができました。
位相差を計算する
位相差\( \ \phi \ \)も,直角三角形から簡単に導出できます(図\( \ 6 \ \))。

\[
\begin{eqnarray}
\tan \phi =\frac{V_{\mathrm {L}}}{V_{\mathrm {R}}}= \frac{\omega L I}{RI} = \frac{\omega L}{R}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
抵抗は位相差なし,コイルは電圧が先,電流が後です。
ですから抵抗とコイルの回路では,電圧が先,電流が後です。
直列回路では電流が共通なので,電流を基準として,”電圧は電流より進む”と表現をするのが良いでしょう。
以上より,位相差についての解答はこうなります。
電圧は電流に対して\( \ \phi \ \)だけ進む。
\( \ \phi \ \)とは下式を満たす角度。
\[
\begin{eqnarray}
\tan \phi = \frac{\omega L}{R}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
以上がベクトルを使った場合です。
三角関数で計算した場合(ベクトル⑤)と比較して,簡単だったのではないでしょうか?
ベクトルを使うと,三角関数の計算ではなく,幾何的に解くことができるので,楽なのです。
最後に練習問題として,抵抗とコンデンサの直列回路,\( \ \mathrm {RC} \ \)直列回路のインピーダンスを求めます。
練習問題
抵抗値が\( \ R \ \)の抵抗と,静電容量\( \ C \ \)のコンデンサが,角周波数\( \ \omega \ \)の交流電源に直列に接続された回路(\( \ \mathrm {RC} \ \)直列回路)について,インピーダンスを導出しましょう(図\( \ 7 \ \))。

電源電圧を\( \ \dot{V} \ \),抵抗にかかる電圧を\( \ \dot{V_{\mathrm {R}}} \ \),コンデンサにかかる電圧を\( \ \dot{V_{\mathrm {C}}} \ \)とします。
電流を\( \ \dot{I} \ \)とします。直列回路ですから,抵抗にもコンデンサにも同じ電流が流れます(図\( \ 8 \ \))。
\( \ \dot{I_{\mathrm {R}}} \ \)や\( \ \dot{I_{\mathrm {C}}} \ \)と置く必要はありませんね。

これから\( \ \dot{V} \ \)を\( \ \dot{I} \ \)の式で書くことで,インピーダンスを求めます。
まずは回路図に分かることをどんどん書き込んでいきましょう(図\( \ 9 \ \))。

抵抗では電圧と電流は同相です。
そして,抵抗にかかる電圧の大きさは,\( \ V_{\mathrm {R}}=RI \ \)です。
次に,コンデンサでは電圧が先,電流が後で,位相差は\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)です。
コンデンサにかかる電圧の大きさは,\( \ V_{\mathrm {C}}=\displaystyle \frac{I}{\omega C} \ \)です。
さらに電源電圧のベクトル\( \ \dot{V} \ \)については,以下の式が成立します。
\[
\begin{eqnarray}
\dot{V} = \dot{V_{\mathrm {R}}}+\dot{V_{\mathrm {C}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
このようにして,回路図に分かる情報を書き込みます。
次に,抵抗とコンデンサとで別々に描いたベクトル図に注目します。
電流ベクトル\( \ \dot{I} \ \)がありますが,直列回路ですから,これは同じ向きです(図\( \ 10 \ \))。

そして,\( \ \dot{V} = \dot{V_{\mathrm {R}}} + \dot{V_{\mathrm {C}}} \ \)ですから,
\( \ \dot{V_{\mathrm {R}}} \ \)と\( \ \dot{V_{\mathrm {C}}} \ \)を足します。
始点をそろえて,平行四辺形の対角線を描くのでしたね(ベクトル①)。
※今回の場合は位相差が\( \ \displaystyle \frac{\pi}{2} \ \)なので長方形になります。
よって\( \ \dot{V} \ \)は図\( \ 11 \ \)です。

\( \ \dot{V} \ \)の大きさ\( \ V \ \)は,三平方の定理を使って計算できます(図\( \ 12 \ \))。

\[
\begin{eqnarray}
V&=&\sqrt{V_{\mathrm {R}}^2+V_{\mathrm {C}}^2} \\[ 5pt ]
&=&\sqrt{(RI)^2+\left(\displaystyle \frac{I}{\omega C}\right)^2}\\[ 5pt ]
&=&\sqrt{R^2I^2+\displaystyle \frac{I^2}{\omega^2 C^2}}\\[ 5pt ]
&=&I\sqrt{R^2+\displaystyle \frac{1}{\omega^2 C^2}}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
そして,インピーダンス\( \ Z \ \)は電圧を電流で割った値ですから,このようになります。
\[
\begin{eqnarray}
Z&=&\displaystyle \frac{V}{I} \\[ 5pt ]
&=&\displaystyle \frac{I\sqrt{R^2+\displaystyle \frac{1}{\omega^2 C^2}}}{I} \\[ 5pt ]
&=&\sqrt{R^2+\displaystyle \frac{1}{\omega^2 C^2}}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
位相差\( \ \phi \ \)も,直角三角形から簡単に導出できます(図\( \ 13 \ \))。
遅れなのか進みなのかはいったん無視して,位相”差”だけを三角形から計算します。

\[
\begin{eqnarray}
\tan \phi =\frac{V_{\mathrm {C}}}{V_{\mathrm {R}}}=\frac{\displaystyle \frac{I}{\omega C}}{RI} = \frac{I}{RI\omega C}= \frac{1}{\omega RC}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
抵抗は位相差なし,コンデンサは電流が先,電圧が後です。
ですから抵抗とコンデンサの回路では,電流が先,電圧が後です。
直列回路では電流が共通なので,電流を基準として,”電圧は電流より遅れる”と表現をするのが良いでしょう。
以上より,位相差についての解答はこうなります。
電圧は電流に対して\( \ \phi \ \)だけ遅れる。
\( \ \phi \ \)とは下式を満たす角度。
\[
\begin{eqnarray}
\tan \phi = \frac{1}{\omega RC}\\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]

