《電力》〈変電〉[R05:問3]電力系統における開閉サージに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,電力系統における開閉サージに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

遮断器や断路器の開閉操作を行う際には,開閉サージと呼ばれる過渡的な過電圧を生じる場合がある。無負荷送電線の投入に際しては,送電線に電源電圧の波高値で充電された電荷が残留している場合,最大で電源電圧の波高値のおよそ\( \ \fbox {  (1)  } \ \)倍まで送電線の対地電圧が上昇する可能性がある。この対策として,我が国の\( \ 500 \ \mathrm {kV} \ \)系統では\( \ \fbox {  (2)  } \ \)付の遮断器を用いることでサージ電圧を抑制している。

電流の遮断に際しても開閉サージが生じる場合がある。短絡インピーダンスの抵抗成分が無視できる事故点で地絡故障が生じ,交流の地絡電流が零値を通過するときに遮断が行われる場合では,遮断直後の電源側端子の対地電圧は平常時の交流電圧の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)となる。したがって,過渡的な電圧の最大値は平常時の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)のおよそ\( \ \fbox {  (4)  } \ \)倍となる。また,変圧器の励磁電流のような小さな遅相電流を遮断(電流裁断)する際には,変圧器のインダクタンスを\( \ L \ \),変圧器電流を\( \ I \ \)とすると,遮断直後の変圧器端子の電圧は\( \ \fbox {  (5)  } \ \)と表される。このように,電流裁断が発生すると高い過電圧を生じる可能性がある。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& コンデンサ     &(ロ)& LI     &(ハ)& \sqrt {3} \\[ 5pt ] &(ニ)& 抵抗       &(ホ)& 2      &(ヘ)& 4.5 \\[ 5pt ] &(ト)& 避雷器     &(チ)& 1.5     &(リ)& \frac {1}{2}LI^{2} \\[ 5pt ] &(ヌ)& 3     &(ル)& リアクトル       &(ヲ)& 波高値 \\[ 5pt ] &(ワ)& 波高値の半分       &(カ)& 実効値       &(ヨ)& L\frac {\mathrm {d}I}{\mathrm {d}t} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電力系統での開閉サージに関する問題です。
かなりピンポイントで深い知識が求められる問題で,知っているかどうかが勝負の問題でした。この問題で覚えておきましょう。

1.超高圧系統における開閉サージとその対策
開閉サージとは,遮断器や断路器の開閉操作を行う際に発生する過電圧で,無負荷送電線の投入に関しては下図に示すように電源電圧の波高値の\( \ 3 \ \)倍以上まで上昇することがあります。また,事故電流の遮断に対しても電流零点で遮断した際にその時の電圧値が波高値であった場合,半サイクル後の対地電圧が平常時の\( \ 2 \ \)倍まで上昇する可能性があり,再点弧を起こす可能性があります。
\( \ 500 \ \mathrm {kV} \ \)系統においては抵抗付の遮断器や避雷器等を用いて開閉サージを低減する対策が取られています。


出典:電気工学ハンドブック(第7版) 一般社団法人電気学会 オーム社 P.1510

【解答】

(1)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \sqrt {3} \ \),(ホ)\( \ 2 \ \),(チ)\( \ 1.5 \ \),(ヌ)\( \ 3 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.超高圧系統における開閉サージとその対策」の通り,無負荷送電線の投入に際しては,最大で電源電圧の波高値のおよそ\( \ 3 \ \)倍まで送電線の対地電圧が上昇する可能性があります。

(2)解答:ニ
題意より解答候補は,(イ)コンデンサ,(ニ)抵抗,(ト)避雷器,(ル)リアクトルになると思います。
ワンポイント解説「1.超高圧系統における開閉サージとその対策」の通り,開閉サージ抑制対策として\( \ 500 \ \mathrm {kV} \ \)系統においては抵抗付の遮断器が採用されています。

(3)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヲ)波高値,(ワ)波高値の半分,(カ)実効値,になると思います。
短絡インピーダンスの抵抗成分が無視できる事故点で地絡故障が生じ,交流の地絡電流が零値を通過するときに遮断が行われる場合では,電圧と電流の位相差が\( \ 90° \ \)となるため,遮断直後の電源側端子の対地電圧は平常時の交流電圧の波高値となります。

(4)解答:ホ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \sqrt {3} \ \),(ホ)\( \ 2 \ \),(チ)\( \ 1.5 \ \),(ヌ)\( \ 3 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.超高圧系統における開閉サージとその対策」の通り,地絡電流遮断時の過渡的な電圧の最大値は平常時の波高値のおよそ\( \ 2 \ \)倍となります。

(5)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ロ)\( \ LI \ \),(リ)\( \ \displaystyle \frac {1}{2}LI^{2} \ \),(ヨ)\( \ \displaystyle L\frac {\mathrm {d}I}{\mathrm {d}t} \ \),になると思います。
変圧器の励磁電流のような小さな遅相電流を遮断する際の遮断直後の変圧器端子の電圧は\( \ \displaystyle L\frac {\mathrm {d}I}{\mathrm {d}t} \ \)となります。こちらは過渡現象の内容や各選択肢の単位\( \ LI \ \mathrm {[Wb]} \ \),\( \ \displaystyle \frac {1}{2}LI^{2}\ \mathrm {[J]} \ \),を考えれば正答が導き出せるかと思います。



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