《機械》〈電動機応用〉[R01:問5]電動機の可変速ドライブシステムに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,電動機の可変速ドライブシステムに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電力変換器と電動機及びその制御装置で構成される可変速ドライブシステムは,省エネルギー性が高く低速から高速まで高精度に電動機の速度(回転数)やトルクの制御が可能であることから,さまざまな用途に用いられている。

サイリスタレオナード法は,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を低損失で可変速制御するもので,制御電圧源による閉ループの速度制御ドライブとして用いられる。この制御の動作は,一般に電動機の端子電圧と速度の比例性がよい定格電圧以下の定トルク駆動範囲に限られている。さらに電動機の高回転が必要な場合には,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)制御を用いて電動機の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を一定とする定出力運転領域で高速回転を得る。

交流電動機を対象とした可変速ドライブでは,原則として周波数と電圧の制御により電動機の速度制御を行う。実際の制御は,可変電圧・可変周波数の電力変換器を用いて駆動する。この場合,開ループ制御又は電動機速度等をフィードバックして指令値に一致させるよう制御する閉ループ制御のいずれかが選ばれる。特に同期機を\( \ \fbox {  (4)  } \ \)で速度制御する場合には急加減速や負荷急変による過渡時に脱調するおそれがあり,このようなとき,高精度な制御が要求される場合には\( \ \fbox {  (5)  } \ \)検出を行い,この信号を電力変換器制御ループに取り込むなどの方法が採用される。

近年は,ディジタル技術の制御精度が向上する一方で,低価格・低損失半導体デバイスとして\( \ \mathrm {GCT} \ \)や\( \ \fbox {  (6)  } \ \)などの\( \ \fbox {  (7)  } \ \)の半導体素子が採用されたことにより,高キャリア周波数による低騒音化や高効率化による装置の小形化が進み,可変速ドライブシステムは,家電から,風力発電装置まで多様な領域で利用されている。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \mathrm {FACTS} \ 機器     &(ロ)& 一次抵抗     &(ハ)& 光点弧サイリスタ \\[ 5pt ] &(ニ)& 閉ループ制御     &(ホ)& ゲート信号     &(ヘ)& 弱め界磁 \\[ 5pt ] &(ト)& 固定界磁     &(チ)& 短絡比     &(リ)& 他励式 \\[ 5pt ] &(ヌ)& ステッピングモータ     &(ル)& 回転子位置     &(ヲ)& 開ループ制御 \\[ 5pt ] &(ワ)& 電機子電圧     &(カ)& 自己消弧形     &(ヨ)& 直流電動機 \\[ 5pt ] &(タ)& 回生制動     &(レ)& 誘導電動機     &(ソ)& 滑り \\[ 5pt ] &(ツ)& 力率     &(ネ)& \mathrm {IGBT}     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電動機の知識,パワーエレクトロニクスの知識等近年の動向に沿った幅広い知識を必要とする問題となっています。後半の(5)~(7)は文脈からある程度類推でき,1種受験者であればかなり正答率が高くなりますので,確実に得点しておきたいところです。

1.サイリスタレオナード法
図1のような電動機をサイリスタと界磁電流で可変速制御するもので,交流で受電してきたものをサイリスタで直流に整流及び電機子電流の大きさをコントロールし,直流電動機に送ります。制御としては,速度指令の信号とともに,直流電動機の速度検出からのフィードバックも行い,界磁電流と点弧角の制御します。

2.他励式直流電動機の等価回路
他励式直流電動機の等価回路を図2に示します。ここで\( \ V \ \)は端子電圧,\( \ E \ \)は逆起電力,\( \ I_{\mathrm {f}} \ \)は界磁電流,\( \ I_{\mathrm {a}} \ \)は電機子電流,\( \ R_{\mathrm {a}} \ \)は電機子抵抗,\( \ \phi \ \)は界磁磁束,\( \ N \ \)は電動機の回転速度となります。
図2より,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&V-R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があり,逆起電力\( \ E \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&k\phi N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。(\( \ \displaystyle k=\frac {pZ}{60a} \ \)は定数)

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ヌ)ステッピングモータ,(ヨ)直流電動機,(レ)誘導電動機,等になると思います。ワンポイント解説「1.サイリスタレオナード法」の通り,サイリスタレオナード法は直流電動機を可変速制御する方法です。

(2)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ロ)一次抵抗,(ホ)ゲート信号,(ヘ)弱め界磁,(ト)固定界磁,(ワ)電機子電圧,等になると思います。
ワンポイント解説「2.他励式直流電動機の等価回路」より,
\[
\begin{eqnarray}
E &=&V-R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] E &=&k\phi N \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があるので,上式を\( \ N \ \)について整理すると,
\[
\begin{eqnarray}
k\phi N &=&V-R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ] N &=&\frac {V-R_{\mathrm {a}}I_{\mathrm {a}}}{k\phi } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があります。電動機の高回転が必要な場合には上式の分母である磁束\( \ \phi \ \)をコントロールし,弱め界磁制御を行います。

(3)解答:ワ
題意より,解答候補は(ワ)電機子電圧,(ソ)滑り,(ツ)力率,等になると思います。定出力運転領域では電動機の電機子電圧を一定とします。

(4)解答:ヲ
題意より,解答候補は(ニ)閉ループ制御,(ヲ)開ループ制御,となると思います。急加減速や負荷急変による過渡時に脱調するおそれがあるのはフィードバックを伴わない開ループ制御となります。

(5)解答:ル
題意より,解答候補は(ル)回転子位置のみとなると思います。高精度な制御が要求される場合には回転子位置検出を行います。

(6)解答:ネ
題意より,解答候補は(イ)\( \ \mathrm {FACTS} \ \)機器,(ハ)光点弧サイリスタ,(ネ)\( \ \mathrm {IGBT} \ \),となると思います。近年は低価格・低損失のデバイスとして\( \ \mathrm {IGBT} \ \)が多方面で採用されています。

(7)解答:カ
題意より,解答候補は(カ)自己消弧形のみとなると思います。\( \ \mathrm {IGBT} \ \)はバイポーラトランジスタに\( \ \mathrm {MOSFET} \ \)のゲート入力を組み込んだ自己消弧形のデバイスです。



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