《機械》〈照明〉[R06:問4]光源の全光束の求め方に関する計算・空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,光源の全光束の求め方に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

配光は,光源が放射する光束を,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)の空間分布として表したものである。鉛直配光が水平角\( \ \varphi \ \)に依存しない場合は,配光は鉛直角\( \ \theta \ \)の関数\( \ I\left( \theta \right) \ \)として表される。このとき,この光源の全光束\( \ \mathit {\Phi } \ \)は次式によって表される。
\[
\begin{eqnarray}
\mathit {\Phi } &=& \ \fbox {  (2)  } \  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] 実在の光源では複雑な配光を有するものが多いので,全光束\( \ \mathit {\Phi } \ \)は実測した\( \ I\left( \theta \right) \ \)を数値積分することで求める。その方法の一つとして,以下に示す\( \ \fbox {  (3)  } \ \)と呼ばれる図を用いる方法がある。

\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の左側には,光源の光中心を中心とした半径\( \ r \ \)の半円を描き,その内側に配光\( \ I\left( \theta \right) \ \)(曲線\( \ \mathrm {abc} \ \))を描く。また,半円上において,\( \ \theta \ \)に対応する点を\( \ \mathrm {P} \ \)としている。

さらに,図の右側には,直交座標\( \ xy \ \)をとっている。\( \ x \ \)軸(縦軸)において,座標の原点\( \ \mathrm {O} \ \)は,左側の半円上の\( \ \theta =0 \ \)の点\( \ \mathrm {N} \ \)に対応している。同様に,\( \ x \ \)軸上の点\( \ \mathrm {P}^{\prime } \ \)は半円上の点\( \ \mathrm {P} \ \)に対応している。\( \ x \ \)軸において,原点\( \ \mathrm {O} \ \)から点\( \ \mathrm {P}^{\prime } \ \)までの長さ(点\( \ \mathrm {P} \ \)における球帽の高さ)が\( \ x \ \)である。\( \ y \ \)軸(横軸)には,\( \ \theta \ \)に対応する\( \ I\left( \theta \right) \ \)をプロットしている。すなわち,図の左側の配光曲線\( \ \mathrm {abc} \ \)が,図の右側の曲線\( \ \mathrm {ABC} \ \)に対応している。

この図において,\( \ x \ \)軸上の微小幅を\( \ \mathrm {d}x \ \)とすると,曲線\( \ \mathrm {ABC} \ \)と\( \ x \ \)軸とで囲まれる面の面積\( \ S \ \)は次式で与えられる。
\[
\begin{eqnarray}
S &=& \int _{0}^{2r} I\left( \theta \right) \mathrm {d}x  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ② \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] ここで,\( \ x \ \)は\( \ r \ \)と\( \ \theta \ \)を使って
\[
\begin{eqnarray}
x &=& r\left( 1-\cos \theta \right) \  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ③ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と表すことができるので,これを使うと,②式は次式のようになる。
\[
\begin{eqnarray}
S &=& \ \fbox {  (4)  }  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ④ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] さらに,①式と④式とを比較することで次式を求めることができる。
\[
\begin{eqnarray}
\mathit {\Phi } &=& \ \fbox {  (5)  }  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ ⑤ \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] すなわち,面積\( \ S \ \)を求めることによって,光源の全光束\( \ \mathit {\Phi } \ \)を求めることができる。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 2r\int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \cos \theta \mathrm {d}\theta      &(ロ)& 2\pi \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \cos \theta \mathrm {d}\theta      &(ハ)& 2\pi \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \sin \theta \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] &(ニ)& \frac {\pi }{r}S      &(ホ)& \frac {2\pi }{r}S      &(ヘ)& \frac {\pi }{2r}S \\[ 5pt ] &(ト)& ルーソー図     &(チ)& 色度図     &(リ)& 等光度図 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 輝度     &(ル)& 光度     &(ヲ)& 光束発散度 \\[ 5pt ] &(ワ)& \pi \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \mathrm {d}\theta      &(カ)& r \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \sin \theta \mathrm {d}\theta      &(ヨ)& 2r \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

光源の配光と全光束を求める方法に関する問題です。
均等放射の光源に関する問題が電験では出題されるので,本問は少し専門領域に入る部類の内容かと思います。
知識以上に文章を読解しながら解いていく数学力が問われている\( \ 1 \ \)種らしい問題です。

1.光束\( \ F \ \)
光源から出る可視光の量(エネルギー)で,単位は\( \ \mathrm {[lm]} \ \)となります。
電磁気の分野の電束に似たようなイメージで良いです。

2.立体角の定義
図2のように球体があり,半径\( \ r \ \mathrm {[m]} \ \)の錐体が球面を切り取った時の面積を\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)とすると,立体角\( \ \omega \ \mathrm {[sr]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\omega &=&\frac {S}{r^{2}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,平面角\( \ \theta \ \mathrm {[rad]} \ \)で表すと,
\[
\begin{eqnarray}
\omega &=&2\pi \left( 1-\cos \theta \right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。球全体の立体角は\( \ \theta = \pi \ \)の時であり,\( \ \omega =4\pi \ \)となります。

3.光度\( \ I \ \)
ある方向に向かう光束を立体角で割ったもので,微小立体角\( \ \mathrm {d}\omega \ \mathrm {[sr]} \ \)に向かう光束が\( \ \mathrm {d}F \ \mathrm {[lm]} \ \)であるとき,光度\( \ I \ \mathrm {[cd]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {\mathrm {d}F}{\mathrm {d}\omega } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

【解答】

(1)解答:ル
題意より解答候補は,(ヌ)輝度,(ル)光度,(ヲ)光束発散度,になると思います。
ワンポイント解説「1.光束\( \ F \ \)」や「3.光度\( \ I \ \)」の通り,配光は光源が放射する光束を,光度の空間分布として表したものとなります。輝度や光束発散度を忘れてしまった方は令和3年問5の問題を見てみて下さい。

(2)解答:ハ
ワンポイント解説「3.光度\( \ I \ \)」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
I &=&\frac {\mathrm {d}\mathit {\Phi }}{\mathrm {d}\omega } \\[ 5pt ] \mathrm {d}\mathit {\Phi }&=&I\mathrm {d}\omega \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] の関係があり,ワンポイント解説「2.立体角の定義」より,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {\mathrm {d}\omega }{\mathrm {d}\theta } &=&\left\{ 2\pi \left( 1-\cos \theta \right)\right\} ^{\prime } \\[ 5pt ] &=&2\pi \sin \theta \\[ 5pt ] \mathrm {d}\omega &=&2\pi \sin \theta \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {d}\mathit {\Phi }&=&I\mathrm {d}\omega \\[ 5pt ] &=&2\pi I\sin \theta \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。よって,全光束\( \ \mathit {\Phi } \ \)は\( \ \theta \ \)を\( \ 0 \ \)から\( \ \pi \ \)まで積分したものであるから,
\[
\begin{eqnarray}
\mathit {\Phi } &=& 2\pi \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \sin \theta \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(3)解答:ト
題意より解答候補は,(ト)ルーソー図,(チ)色度図,(リ)等光度図,になると思います。
問題に与えられている図をルーソー図といいます。専門用語ですから,本空欄は覚えておくしかありません。

(4)解答:カ
③式の両辺を微分すると,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {\mathrm {d}x }{\mathrm {d}\theta } &=& r\sin \theta \\[ 5pt ] \mathrm {d}x &=& r\sin \theta \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,\( \ x \ \)が\( \ 0 \ \)から\( \ 2r \ \)まで変化するとき,\( \ \theta \ \)は\( \ 0 \ \)から\( \ \pi \ \)まで変化するので,②式は,
\[
\begin{eqnarray}
S &=&r \int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \sin \theta \mathrm {d}\theta \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ホ
(4)解答式より,
\[
\begin{eqnarray}
\int _{0}^{\pi }I\left( \theta \right) \sin \theta \mathrm {d}\theta &=&\frac {S}{r} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,これを(2)解答式に代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
\mathit {\Phi } &=& 2\pi \cdot \frac {S}{r} \\[ 5pt ] &=& \frac {2\pi }{r}S \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



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