【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,リラクタンスモータに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。
リラクタンスモータは,計算機設計ツールの普及やパワーエレクトロニクス技術の発展などによって,近年実用化が進んでいる。
永久磁石を用いないリラクタンスモータは,構造的にシンクロナスリラクタンスモータ\( \ \left( \mathrm {SynRM} \right) \ \)とスイッチトリラクタンスモータ\( \ \left( \mathrm {SRM} \right) \ \)に分けられる。ともに突極性を有し,回転子位置に応じて変化するリラクタンス(磁気抵抗)に基づくトルクによって回転する。
シンクロナスリラクタンスモータの固定子構造は,従来の交流機と同様に固定子のスロットに分布巻コイルが配置され,三相交流の給電によってギャップに正弦波分布した回転磁界を発生する。\( \ \fbox { (1) } \ \)で作られた回転子は,発生した回転磁界に\( \ \fbox { (2) } \ \)その磁気抵抗が最小になるように回転する。負荷がかかると回転子は回転磁界より負荷角\( \ \delta \ \)だけ遅れ,この角度は負荷の大きさに依存する。回転子構造は突極構造を実現するため,種々の形状が提案されている。磁気抵抗の小さい軸を\( \ d \ \)軸,大きい軸を\( \ q \ \)軸とし,対応するインダクタンスをそれぞれ\( \ d \ \)軸インダクタンス\( \ L_{d} \ \),\( \ q \ \)軸インダクタンス\( \ L_{q} \ \)とすれば,両者の比\( \ \displaystyle \frac {L_{d}}{L_{q}} \ \)を\( \ \fbox { (3) } \ \)と呼ぶ。トルク対電流の比,力率及び効率の向上のためには,\( \ \fbox { (3) } \ \)の\( \ \fbox { (4) } \ \)ことが望まれる。
一方,スイッチトリラクタンスモータの基本構造は,固定子,回転子とも突極構造をなし,固定子には\( \ \fbox { (5) } \ \)コイルが配置される。固定子,回転子の突極数については種々の組み合わせがある。その動作は,固定子突極に対して回転子突極がその磁気抵抗を最小にするように,非対向状態から対向状態にトルクを発生させる。その対向直前で次の相に励磁を切り換え,回転を維持する。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 短絡比 &(ロ)& 抵抗体 &(ハ)& 非同期で \\[ 5pt ]
&(ニ)& 非磁性体 &(ホ)& 小さい &(ヘ)& 突極比 \\[ 5pt ]
&(ト)& 集中巻 &(チ)& 同期して &(リ)& 強磁性体 \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 分圧比 &(ル)& 環状卷 &(ヲ)& 等しい \\[ 5pt ]
&(ワ)& 分布巻 &(カ)& 大きい &(ヨ)& 無関係に \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
リラクタンスモータに関する問題です。
交流機の電機子の巻線法や永久磁石式同期電動機等は電験\( \ 2 \ \)種や\( \ 3 \ \)種でも出題されたことがあるため,比較的理解しやすい方も多いかと思います。
わからなくても,わからないなりに選択肢を絞り,文脈からある程度正答できる練習をしておくと良いでしょう。
1.リラクタンスモータ
回転子に永久磁石を用いずに突極形の強磁性体を用いる,界磁による磁気抵抗の非対称性によるトルク(リラクタンストルク)により回転するモータです。シンクロナスリラクタンスモータ\( \ \left( \mathrm {SynRM} \right) \ \)とスイッチトリラクタンスモータ\( \ \left( \mathrm {SRM} \right) \ \)に分けられます。永久磁石を用いないので,安価で高出力のモータが得られる特徴があります。
①シンクロナスリラクタンスモータ\( \ \left( \mathrm {SynRM} \right) \ \)
図1に示すような固定子の電機子巻線を複数のスロットに巻き付ける分布巻の固定子に三相交流を流し回転磁界を発生させ,突極形の回転子の磁気抵抗が最小となるように回転する原理を利用して回転させます。図1の例で言えば,鉄心部の方が空隙部よりも磁気抵抗が小さいため,固定子から出た磁束と突出部が引き寄せられるようなトルクが働きます。
このような原理から回転子は回転磁界に同期して回転するため,シンクロナス(同期式)リラクタンスモータと呼ばれます。
一般に\( \ \mathrm {d} \ \)軸方向の\( \ \mathrm {q} \ \)軸方向に対するインダクタンスの比を突極比といい,突極比が大きい回転子の方が引き寄せるトルクが大きくなり,トルク対電流の比,力率及び効率が向上することが分かっています。

②スイッチトリラクタンスモータ
図2に示すような,固定子回転子ともに突極構造で,極数の異なるものを組み合わせて使用されるモータです。図2は固定子\( \ 6 \ \)極,回転子\( \ 4 \ \)極の構造です。固定子は電機子巻線を一つのスロットに集中して巻き付ける集中巻で,励磁し磁界を発生させ,突極形の回転子の磁気抵抗が最小となるように回転し,突出部が引き寄せられる直前に励磁する相を変え回転を維持させます。

【解答】
(1)解答:リ
題意より解答候補は,(ロ)抵抗体,(ニ)非磁性体,(リ)強磁性体,になると思います。
ワンポイント解説「1.リラクタンスモータ」の通り,シンクロナスリラクタンスモータの回転子は強磁性体でできています。
(2)解答:チ
題意より解答候補は,(ハ)非同期で,(チ)同期して,(ヨ)無関係に,になると思います。
ワンポイント解説「1.リラクタンスモータ」の通り,シンクロナスリラクタンスモータの回転子は回転磁界に同期して回転します。
(3)解答:ヘ
題意より解答候補は,(イ)短絡比,(ヘ)突極比,(ヌ)分圧比,になると思います。
ワンポイント解説「1.リラクタンスモータ」の通り,\( \ d \ \)軸インダクタンス\( \ L_{d} \ \)と\( \ q \ \)軸インダクタンス\( \ L_{q} \ \)の比\( \ \displaystyle \frac {L_{d}}{L_{q}} \ \)を突極比といいます。
(4)解答:カ
題意より解答候補は,(ホ)小さい,(ヲ)等しい,(カ)大きい,になると思います。
ワンポイント解説「1.リラクタンスモータ」の通り,トルク対電流の比,力率及び効率の向上のためには,突極比が大きいことが望まれます。
(5)解答:ト
題意より解答候補は,(ト)集中巻,(ル)環状卷,(ワ)分布巻,になると思います。
ワンポイント解説「1.リラクタンスモータ」の通り,スイッチトリラクタンスモータの固定子は集中巻のコイルが配置されます。