《電力・管理》〈電気施設管理〉[H19:問5]電力供給計画を策定する際に検討すべき内容に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆（普通）

次の表は，一般電気事業者（当時）が電力供給計画を策定するにあたり，検討すべき項目及びその視点の一部を記したものである。

電力需要想定を短期的及び長期的な視点で検討した後に，それに基づき供給計画のうち下表のような設備面での検討を行う。欄外に示したそれぞれの視点に関する検討内容の記載例①，②及び③にならって，表中の\( \ \mathrm {A} \ \)，\( \ \mathrm {B} \ \)，\( \ \mathrm {C} \ \)及び\( \ \mathrm {D} \ \)の各視点の検討内容を簡潔に記述せよ。
\[
\begin{array}{|l|l|}
\hline
　　　　　項　目 & 　　　　　　　視　点 \\
\hline
(1)基幹送変電設備計画 & ①主要電源地点の遠隔化に伴う送電 \\
& 　設備計画 \\
& \mathrm {A} \ 都市部近郊における送変電設備計画　　　　　　　　　　　　 \\
\hline
(2)供給力の確保 & \mathrm {B} \ 発電設備の構成 \\
& ②最大電力( \ \mathrm {kW} \ バランス) の確保 \\
& \mathrm {C} \ 電力量( \ \mathrm {kWh} \ バランス)の確保 \\
\hline
(3)電力系統運用のための設備　　　　　　　　 & \mathrm {D} \ 主要変電所の母線電圧維持対策設備 \\
\ 　対策 & ③系統設備の事故波及防止対策設備 \\
\hline
\end{array}
\]

検討項目の視点に対する検討内容の記載例
①主要電源地点の遠隔化に伴う送電設備計画
　主要電源地点は大需要地点から遠隔化となり，スケールメリットの経済性と用地の有効活用及び系統を安定運用する視点から長距離大容量送電が必要である。
　このため
　●送電電圧の高電圧化
　●送電線の耐熱電線や太線化等による大電流化
等について検討する。

②最大電力（\( \ \mathrm {kW} \ \)バランス）の確保
　電力需給は，一般に最大電力バランスと電力量バランスで表現される。このうち，最大電力の確保に関しては，発電設備事故等が発生することを想定して安定供給するために，想定した最大電力需要を上回る供給予備力を確保するような方策を検討する。
　供給予備力の大きさについては，当該事業者が所有する発電設備の構成，単機容量の大きさ等により異なるが，一般的には，\( \ 8 \sim 15 \ \mathrm {[％]} \ \)程度を確保する必要がある。

③系統設備の事故波及防止対策設備
　電力系統設備に設備事故が発生した場合，速やかに事故部分の除去を行い，他の機器への影響を最小限に抑えて安定供給を継続する視点から
　●個々の設備への各種保護・制御装置の設置
　●系統内の基幹送電線等については，事故が拡大・波及して大規模な停電事故にならないような広域的な事故波及防止システムの設置
についての導入を検討する。

【ワンポイント解説】

電力供給計画に関する問題です。
出題時は一般電気事業者すなわち電力会社が策定していましたが，現在は電力広域的運営推進機関\( \ \left( \mathrm {OCCTO}\right) \ \)が各事業者と調整し取りまとめをすることになっています。内容として現在の内容と合致している部分もありますが，最新の情報は電力広域的運営推進機関のホームページで確認しておくことをお勧めします。

出典：電力広域的運営推進機関　ＨＰ
ＵＲＬ：https://www.occto.or.jp/various/kyoukei/kyokyukeikakutoha.html

【解答】

\( \ \mathrm {A} \ \)都市部近郊における送変電設備計画
(ポイント)
日本では送配電線は架空送電，変電所も屋外とする場合が多いですが，都市部近郊においては用地確保の問題や地域環境との調和等の観点から地中送電を採用することも多いです。

(試験センター解答例)
都市部近郊における用地取得の困難性や騒音等の環境問題への対応の視点から
　●送電線は多回線併架送電線，高電圧地中ケーブルの採用
　●変電所は地下式やガス絶縁縮小形変電所
等の導入について検討する。

\( \ \mathrm {B} \ \)発電設備の構成
(ポイント)
・基本的な安定供給の考えすなわちベストミックスの思想は現在も同じです。
・出題当時と異なり，現在は太陽光をはじめとする新エネルギー発電の割合が増えていますが，安定供給，燃料調達，\( \ \mathrm {CO}_{2} \ \)等への基本的な考えは同じです。

(試験センター解答例)
供給力の安定確保と経済性の両面から，各種電源を適正な比率で構成する必要がある。これは，通常電源のベストミックスと言われ
　●運用上の効率性
　●燃料調達上のリスク回避
　●将来の需要，建設費用，燃料動向への弾力的な対応
　●さらに\( \ \mathrm {CO}_{2} \ \)など地球温暖化防止への対応
等について検討する。

\( \ \mathrm {C} \ \)電力量（\( \ \mathrm {kWh} \ \)バランス）の確保
(ポイント)
・出題当時は水力，火力，原子力を中心に電力量の供給を確保していましたが，近年は新エネルギー発電の割合が増加，既設の汽力発電所が廃止等も考慮し，長期的な供給力確保が検討されています。
・近年の蓄電設備の増加傾向も日毎の\( \ \mathrm {kWh} \ \)バランスの観点で考慮されます。

(試験センター解答例)
電力量の確保に関しては，原子力，火力，水力等の各種電源を経済的に運用することを条件に，電源毎の水利上，燃料利用，運用面等の制約条件を考慮して，需要に対応した年度別，月別，日別等の供給力分担を検討する。

\( \ \mathrm {D} \ \)主要変電所の母線電圧維持対策設備対策
(ポイント)
・変電所における電圧維持の対策設備対策は基本的には出題当時と同じです。

(試験センター解答例)
電気の基本的品質である電圧を一定の範囲内に維持することは，系統の安定運用や需要家の機器の正常な使用にとって必要不可欠である視点から，主要変電所の母線電圧維持対策設備として
　●電力用コンデンサや静止形無効電力補償装置\( \ \left( \mathrm {SVC} \right) \ \)
　●負荷時電圧調整変圧器\( \ \left( \mathrm {LRT} \right) \ \)
等の設備導入について検討する。