《電力》〈水力〉[R08:問1]揚水発電所の始動と可変速揚水システムに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,揚水発電所に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

揚水発電所は,従来,深夜の余剰電力で揚水して水を蓄え,昼間等の電力需要のピーク時に,蓄えた水を用いて発電することが基本的な運用であったが,近年は太陽光発電の導入量増加によって昼間に揚水するケースも増えてきた。

ポンプ水車が用いられる揚水発電所において,発電方向の始動は通常の水車と同じ取り扱いになるが,揚水方向の始動はポンプ運転時のランナの\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を低減する目的で水面押し下げ制御が行われる。この間,入口弁,案内羽根は全閉し,ランナシール部には\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を供給しつつ,発電電動機を始動し,系統に並列する。系統並列後,水面押し下げに使用した空気を排除して,ランナ・ケーシング内を充水し,揚水を開始する。

発電電動機の始動方法として,一般的に用いられているサイリスタ始動方式は,直流励磁を\( \ \fbox {  (3)  } \ \)に発電電動機の回転子に与え,サイリスタ変換装置の可変周波数交流出力を低周波から定格周波数まで連続的に固定子へ供給して,加速する方式である。

また,\( \ 1990 \ \)年以降開発された可変速揚水システムでは,可変速励磁用変換器を用いた揚水自己始動によるコスト低減の検討もなされているが,最大の特徴は,揚水運転時の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の調整であり,ポンプの回転速度の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)に比例して\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を変化させることができる。このため,再生可能エネルギーの普及に伴って,周波数調整面からその役割が増加している。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 冷却水     &(ロ)& 始動開始直後       &(ハ)& 発電電力 \\[ 5pt ] &(ニ)& 制動トルク       &(ホ)& 漏水補水     &(ヘ)& 3 \ 乗 \\[ 5pt ] &(ト)& 最低電力     &(チ)& 潤滑油     &(リ)& 加速中 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 始動開始前     &(ル)& 2 \ 乗     &(ヲ)& 反抗トルク \\[ 5pt ] &(ワ)& 最大トルク     &(カ)& 入力電力     &(ヨ)& \frac {5}{4} \ 乗 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

揚水発電所の始動方法と可変速揚水システムに関する問題です。
過去問で類題が出題されたことがありますが,全体としては専門性は高い内容と言えると思います。
数年に\( \ 1 \ \)回程度類題が出題されている印象なので,過去問を中心に学習していくようにして下さい。

1.揚水発電所始動時の水面押し下げ制御
揚水運転始動時,ランナが水中にある状態で回転させると,水による大きな抵抗(反抗トルク)が生じるため,空気を送り込んで水面を押し下げ,ランナを空気中で回転させることで,始動トルクおよび始動所要動力を大幅に低減できます。これを水面押し下げ制御といい,始動用電動機等の容量を小さく設計できます。
具体的な手順としては,①入口弁および案内羽根を閉鎖し,②コンプレッサからランナ室に圧縮空気を送り込み,③反抗トルクが小さい空気中で発電電動機を始動・加速させ,④定格回転速度に到達させた後電力系統へ並列し,⑤排気弁を開いてランナ室内の圧縮空気を抜き,⑥水を再びケーシング内へ充水し,揚水運転へと移行します。
水面を押し下げ空気中でランナを高速回転させると,ランナシール部での摩擦熱により,熱膨張による接触や焼き付きの原因となるため,ランナシール部に外部から冷却水を注水します。

2.揚水発電所の揚水時の始動方式
①制動巻線始動方式
 回転子の制動巻線を利用してかご形誘導電動機として始動する方式です。構造が簡単で制動巻線を回転子に持っていれば良いという特徴がありますが,始動時の入力が系統に影響を与えるため,主に小容量機に採用されます。

②同期始動方式
 発電電動機と他の発電機を停止状態で電気的に接続し,両機に励磁を加えた後に,両機を同期しながら速度を上昇させ,規定の回転数まで上昇させたら並列する方式です。発電電動機とは別に発電機が必要で,構造や回路も複雑となりますが,系統からの入力がないため,系統への影響がない特徴があり,主に大~中容量機に採用されています。

③直結電動機始動方式
 発電電動機と同軸上に発電電動機より\( \ 2 \ \)極少ない(定格速度より速くなる)巻線形誘導電動機を直結し始動する方式です。巻線形誘導電動機の二次巻線に接続された抵抗器により始動トルクを制御します。発電電動機を直結するため付属設備が多くなり,軸長も長くなります。したがって,大容量かつ発電所の主機の台数が少ない場合にのみ採用されます。

④サイリスタ始動方式
 発電電動機の停止中に励磁を与え,サイリスタ変換装置で回転子の磁極位置に対応した零\( \ \left( 0 \right) \ \)から発電電動機の定格周波数まで変化する交流電力を電機子に加えて回転数を上昇させる方式です。機械的な始動装置でないため,保守面で有利であり,回生制動が利用できる特徴があります。主に大容量機かつ主機の台数が多い発電所で採用されます。

3.可変速揚水発電システム
可変速揚水発電システムは下図のようなシステムで,二次励磁装置により固定子と回転子の差の周波数(回転数)をコントロールし,系統の周波数を調整します。
これはこれまで石油火力や天然ガス火力で調整していた系統周波数の調整,すなわち有効電力の調整を揚水発電所で行おうとするもので,発電運転している時のみでなく揚水運転している夜間も行うことができます。
これにより,火力発電所の燃料費を抑え,全体として経済的な運用を行うことができます。
なお,揚水時の流量に比例する流速は回転速度に比例し,揚程は運動エネルギーが流速の\( \ 2 \ \)乗に比例することから回転速度の\( \ 2 \ \)乗に比例することから,流量と揚程の積により求められる入力有効電力は,回転速度の\( \ 3 \ \)乗に比例することになります。

【解答】

(1)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ニ)制動トルク,(ヲ)反抗トルク,(ワ)最大トルク,になると思います。
ワンポイント解説「1.揚水発電所始動時の水面押し下げ制御」の通り,水面押し下げ制御はポンプ運転時のランナの反抗トルクを低減する目的で行われます。

(2)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)冷却水,(ホ)漏水補水,(チ)潤滑油,になると思います。
ワンポイント解説「1.揚水発電所始動時の水面押し下げ制御」の通り,水面押し下げ制御時は,ランナシール部には摩擦熱が発生するため冷却水を供給します。

(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ロ)始動開始直後,(リ)加速中,(ヌ)始動開始前,になると思います。
ワンポイント解説「2.揚水発電所の揚水時の始動方式」の通り,サイリスタ始動方式は直流励磁を始動開始前に発電電動機の回転子に与えます。

(4)解答:カ
題意より解答候補は,(ハ)発電電力,(ト)最低電力,(カ)入力電力,になると思います。
ワンポイント解説「3.可変速揚水発電システム」の通り,可変速揚水システムでは,揚水運転時の入力電力を調整することで,系統の周波数を調整することができます。

(5)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ヘ)\( \ 3 \ \)乗,(ル)\( \ 2 \ \)乗,(ヨ)\( \ \displaystyle \frac {5}{4} \ \)乗,になると思います。
ワンポイント解説「3.可変速揚水発電システム」の通り,入力電力はポンプの回転速度の\( \ 3 \ \)乗に比例して変化します。



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