《電力》〈変電〉[H26:問6]事故発生時の変圧器の保護に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,変圧器の保護に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

変圧器内部に事故が発生すると,故障電流アークによりガスが発生し,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)のためにタンクが破損,破損したタンクから噴出した\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の引火による火災を招くおそれがある。そのため,事故を高速に検出し変圧器を系統より切り離す必要がある。

変圧器事故のうち\( \ \fbox {  (3)  } \ \)は,通常の過電流リレーや地絡リレーでの検出が困難である。そのため,変圧器保護に適用される電気式のリレーには一次側と二次側の電流の差から事故を検出する差動リレー方式が用いられることが多い。

差動リレー方式では,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が発生した際に誤差電流が生じ誤動作するおそれがある。そのため,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)に示すような特性をもたせた\( \ \fbox {  (6)  } \ \)リレーを用いることが多い。また,差動リレー方式の差動回路には励磁電流に対応した電流が流れ,誤差の原因となる。常時はこの電流は小さいが,変圧器を投入した際には比較的大きな励磁突入電流が流れることがある。この電流による誤動作を防止する方法の一つとして,\( \ \fbox {  (7)  } \ \)を検出した際にリレーの出力を\( \ \fbox {  (8)  } \ \)方式や励磁突入電流が流れる期間,感度を低下させる方式などがある。

図中の\( \ I_{\mathrm {d}} \ \)は一次側電流と二次側電流のベクトル和の大きさを表しており, \( \ I_{\mathrm {r}} \ \)は一次側電流と二次側電流のスカラ和を表している。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 高圧巻線と低圧巻線の混触 \\[ 5pt ] &(ロ)& タンクの内圧上昇     &(ハ)& 比率差動 \\[ 5pt ] &(ニ)& タンク内部腐食     &(ホ)& 高調波電流 \\[ 5pt ] &(ヘ)& 飽和させる     &(ト)& 遮断器動作 \\[ 5pt ] &(チ)& 巻線と鉄心間の絶縁破壊による地絡 \\[ 5pt ] &(リ)& 図 3     &(ヌ)& 巻線間短絡 \\[ 5pt ] &(ル)& 鉄心脱落     &(ヲ)& ロックする \\[ 5pt ] &(ワ)& 変圧器外部短絡事故          &(カ)& \mathrm {SF_{6}} \ ガス \\[ 5pt ] &(ヨ)& 電流平衡     &(タ)& 過電圧 \\[ 5pt ] &(レ)& 変圧器負荷の急増     &(ソ)& 図 1 \\[ 5pt ] &(ツ)& 絶縁油     &(ネ)& 図 2 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

本問は一次二次問わず非常に重要な内容となります。変圧器で出題されるリレーは比率差動リレーが圧倒的に多くなっていますので,そのメカニズムは理解しておくようにしておきましょう。

1.比率差動リレー方式
図4に示されるような方式で,変圧器の一次側と二次側電流を\( \ \mathrm {CT} \ \)を介して検出し,一次側と二次側の差が分かるようにするリレーです。通常時は(a)のように動作コイルに流れる電流がほぼ零となるように整定しておき,異常発生時は(b)のように動作コイルに流れる電流が零でなくなります。しかし,一次側と二次側\( \ \mathrm {CT} \ \)の違いや誤差等により,厳密に動作コイルに流れる電流を零とすることができないため,抑制コイルを設けています。また,抑制コイルには外部事故が発生した際等の誤動作防止の役割もあります。

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【解答】

(1)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)タンクの内圧上昇,(ニ)タンク内部腐食,等になると思います。ガスが発生するとガスによりタンク内部の圧力が上昇します。

(2)解答:ツ
題意より,解答候補は(カ)\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガス,(ツ)絶縁油,になると思います。引火するのは絶縁油で,\( \ \mathrm {SF_{6}} \ \)ガスは不燃性のガスです。ただし,温室効果ガスなので,厳重な管理が必要となっています。

(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(イ)高圧巻線と低圧巻線の混触,(チ)巻線と鉄心間の絶縁破壊による地絡,(ヌ)巻線間短絡,(ワ)変圧器外部短絡事故,等になると思います。変圧器で最も多い事故が巻線間短絡ですが,通常の過電流リレーや地絡リレーでの検出が困難なため,比率差動リレーで保護します。

(4)解答:ワ
題意より,解答候補は(イ)高圧巻線と低圧巻線の混触,(ホ)高調波電流,(チ)巻線と鉄心間の絶縁破壊による地絡,(ヌ)巻線間短絡,(ワ)変圧器外部短絡事故,等になると思います。ワンポイント解説「1.比率差動リレー方式」にある通り,変圧器外部事故が発生した際に誤動作防止のため,抑制コイルが設けられています。

(5)解答:ソ
題意より,解答候補は(リ)図3,(ソ)図1,(ネ)図2,になると思います。小電流領域ではベクトル和がある一定以上に大きくなった際に動作するように設定しますが,電流量(スカラー量)が多くなると,誤差の電流も大きくなるので,ベクトル和の感度をやや低く設定するようにします。したがって,最も適当なのは図1となります。

(6)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)比率差動,(ヨ)電流平衡,(タ)過電圧,になると思います。ワンポイント解説にも示している通り,変圧器で使用されるリレーは比率差動リレーとなります。

(7)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)高調波電流,(ト)遮断器動作,(ヨ)電流平衡,になると思います。励磁突入電流には第2調波が多く含まれるので,問題文にある通り継電器の誤動作防止としてロックする方式や,励磁突入電流が流れる期間感度を低下させる方法があり,他にも高調波抑制フィルタを用いる方法があります。

(8)解答:ヲ
題意より,解答候補は(ヘ)飽和させる,(ヲ)ロックする,になると思います。誤動作防止のためにはリレーをロックします



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