【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,架空送電線路に使用される電線に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
架空送電線路に広く使用されている鋼心アルミより線は,亜鉛めっき鋼線の外側に硬アルミ線をより合わせた合成より線である。硬アルミ線の導電率は硬銅線の\( \ \fbox { (1) } \ \)で鋼心線よりは高く,一般に,鋼心線には電流が流れないものとして抵抗値を計算する。一方,電線のたるみを計算する際に用いられる弾性係数\( \ \mathrm {[Pa]} \ \)は,硬アルミ線と鋼心線の特性を考慮し,\( \ \fbox { (2) } \ \)と計算される。ただし,硬アルミ線と鋼心線の弾性係数\( \ \mathrm {[Pa]} \ \)をそれぞれ\( \ E_{\mathrm {a}} \ \),\( \ E_{\mathrm {s}} \ \)とし,断面積\( \ \mathrm {[{mm}^{2}]} \ \)をそれぞれ\( \ A_{\mathrm {a}} \ \),\( \ A_{\mathrm {s}} \ \)とする。
電線に流すことのできる電流(許容電流)は,電線の\( \ \fbox { (3) } \ \)を考慮して決定された最高許容温度を超えない電流として算定される。電流が連続的に流れる場合の許容電流(連続許容電流)は,外部環境の影響をうけるため,最高許容温度の状態において抵抗損と日射による熱量の増加と,風と放射による熱量の減少が平衡する電流値として計算される。このとき,電線の抵抗値が電線温度の上昇により\( \ \fbox { (4) } \ \)ことや,\( \ \fbox { (5) } \ \)などにより電線の抵抗値が直流の場合に比べて\( \ \fbox { (4) } \ \)ことを考慮する必要がある。
〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {s}}^{2}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {a}}^{2}}{A_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {s}}} &(ロ)& 約 \ 40 \ [%] &(ハ)& マイスナー効果 \\[ 5pt ]
&(ニ)& \frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {a}}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {s}}}{A_{\mathrm {a}}+A_{\mathrm {s}}} &(ホ)& \frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {s}}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {a}}}{A_{\mathrm {a}}+A_{\mathrm {s}}} &(ヘ)& 誘導特性 \\[ 5pt ]
&(ト)& 約 \ 80 \ [%] &(チ)& 表皮効果 &(リ)& 約 \ 60 \ [%] \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 軟化特性 &(ル)& 減少する &(ヲ)& 溶融点 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 増加する &(カ)& \left( E_{\mathrm {a}}+E_{\mathrm {s}}\right) \frac {A_{\mathrm {s}}}{A_{\mathrm {a}}} &(ヨ)& ホール効果 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
電線の敷設に関する問題で,(2)以外は3種の頃から出題されているような内容であると思います。この問題であれば,科目合格者だと\( \ 4 \ \)問ぐらいは正答するのではないかというレベルの問題だと思います。
1.鋼心アルミより線
鋼心アルミより線は亜鉛めっき鋼線の外側に硬アルミ線をより合わせた電線であり,鋼の強い引張強さとアルミの軽量かつ高い導電性の特性を合わせ持ったような電線で現在の架空送電線の主流となっています。表皮効果により亜鉛めっき鋼線には電流は流れないものとして計算します。アルミニウムは,銅と比較して導電率が約\( \ 60 \ [%] \ \)程度と低いですが,比重が約\( \ \displaystyle \frac {1}{3} \ \)であるため,電気抵抗と長さが同じ電線の場合,アルミニウム線の質量は銅線の半分ぐらいになります。
【解答】
(1)解答:リ
題意より,解答候補は(ロ)約\( \ 40 \ [%] \ \),(ト)約\( \ 80 \ [%] \ \),(リ)約\( \ 60 \ [%] \ \),になると思います。ワンポイント解説「1.鋼心アルミより線」の通り,硬アルミ線の導電率は硬銅線の導電率の約\( \ 60 \ [%] \ \)程度となります。
(2)解答:ニ
題意より,解答候補は(イ)\( \ \displaystyle \frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {s}}^{2}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {a}}^{2}}{A_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {s}}} \ \),(ニ)\( \ \displaystyle \frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {a}}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {s}}}{A_{\mathrm {a}}+A_{\mathrm {s}}} \ \),(ホ)\( \ \displaystyle \frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {s}}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {a}}}{A_{\mathrm {a}}+A_{\mathrm {s}}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \left( E_{\mathrm {a}}+E_{\mathrm {s}}\right) \frac {A_{\mathrm {s}}}{A_{\mathrm {a}}} \ \),になると思います。
硬アルミ線と鋼心線の引張強度をそれぞれ\( \ F_{\mathrm {a}} \ \),\( \ F_{\mathrm {s}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
F_{\mathrm {a}}&=&E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {a}} \\[ 5pt ]
F_{\mathrm {s}}&=&E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {s}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となり,図1のようにそれぞれをより合わせた場合の弾性係数は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {F_{\mathrm {a}}+F_{\mathrm {s}}}{A_{\mathrm {a}}+A_{\mathrm {s}}}&=&\frac {E_{\mathrm {a}}A_{\mathrm {a}}+E_{\mathrm {s}}A_{\mathrm {s}}}{A_{\mathrm {a}}+A_{\mathrm {s}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
と求められます。
(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ヘ)誘導特性,(ヌ)軟化特性,(ヲ)溶融点,になると思います。許容電流は,電線の軟化特性を考慮して決定された最高許容温度を超えない電流として算定されます。
(4)解答:ワ
題意より,解答候補は(ル)減少する,(ワ)増加する,になると思います。電線の抵抗値は電線温度の上昇により増加し,流れにくくなります。
(5)解答:チ
題意より,解答候補は(ハ)マイスナー効果,(チ)表皮効果,(ヨ)ホール効果,になると思います。ワンポイント解説「1.鋼心アルミより線」の通り,表皮効果により電線の中心には電流が流れにくくなる性質があります。マイスナー効果は超伝導に関する性質,ホール効果は半導体の性質となります。