【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,変電所に設置する変電機器の耐震設計に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
変電所に設置する変電機器の耐震設計手法のうち,\( \ \fbox { (1) } \ \)的設計手法については,これまでがいし形機器やがい管を用いたブッシングを弱点部として評価対象としていた。その理由としては,がいし形機器やブッシングの固有振動数は\( \ \fbox { (2) } \ \)程度であり,高電圧の機器になるほど低くなる。実際の地震波の卓越振動数は,上記固有振動数の範囲にあるので,頭部荷重が大きい変電機器は地震波との\( \ \fbox { (3) } \ \)を起こす可能性があるため,適切な\( \ \fbox { (1) } \ \)的耐震設計を採用する必要がある。しかしながら,\( \ 2011 \ \)年に発生した東北地方太平洋沖地震では,がいし形機器やブッシング以外の部位においても被害が多数発生していることを踏まえ,単純ながいし形機器のような単一の振動数に対し評価を行う従来の設計手法である\( \ \fbox { (4) } \ \)法から,幅広い振動数を含む波形に対して耐震強度の確認が可能で,海外の変電機器の耐震規格にも採用されている\( \ \fbox { (5) } \ \)に基づく設計手法へ見直された。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 静 &(ロ)& 減衰 &(ハ)& 擬共振 \\[ 5pt ]
&(ニ)& 加速度ベクトル &(ホ)& 加速度 &(ヘ)& 応答スペクトル \\[ 5pt ]
&(ト)& 最大応答加速度 &(チ)& 0.1~0.5 \ \mathrm {Hz} &(リ)& 0.5~10 \ \mathrm {Hz} \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 共振 &(ル)& 正弦波 &(ヲ)& 発散 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 過渡 &(カ)& 動 &(ヨ)& 10~50 \ \mathrm {Hz} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
変電機器の耐震設計に関する問題です。
電気主任技術者において,変圧器の耐震設計を行う業務に携わることは一般的に少ないと思いますが,電験一種では比較的出題されやすい分野となります。
さらに詳しい内容は「変電所等における電気設備の耐震設計指針(JEAG 5003-2019 JESC E0001(2019))」に記載がありますが,電験の受験対策としては現実的ではないので,過去問を中心に内容を覚えておきましょう。
1.変電機器の耐震設計
耐震設計手法には静的設計手法と動的設計手法があります。
元々変電機器に対しては静的設計手法が用いられてきましたが,地震波の卓越振動数が\( \ 0.5 ~ 10 \ \mathrm {Hz} \ \)程度で,変電機器におけるがいし形機器やブッシングの固有振動数もこの範囲にあることが多く,共振する可能性があり,従来の静的設計よりも動的応答が大きくなってしまう可能性があることがわかったため,これらの機器に対しては静的設計手法よりも動的設計手法を用いるようになりました。これを擬共振法といいます。
具体的には,変圧器本体は剛体とみなせるため,加速度\( \ 5 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)の静的耐震設計が採用されますが,がいし形機器は水平加速度\( \ 3 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)で共振の正弦\( \ 3 \ \)波,変圧器のブッシングはブッシングポケット下端に水平加速度\( \ 5 \ \mathrm {m/s^{2}} \ \)で共振の正弦\( \ 3 \ \)波,の動的設計が採用されます。ただし,機器の共振周波数が\( \ 0.5 \ \mathrm {Hz} \ \)未満の場合は\( \ 0.5 \ \mathrm {Hz} \ \),\( \ 10 \ \mathrm {Hz} \ \)以上の場合には\( \ 10 \ \mathrm {Hz} \ \)を用います。
さらに,\( \ 2011 \ \)年に発生した東日本大震災では,がいし形機器やブッシング以外の部位においても被害が発生したため,多くの周波数成分を含む波形に対して耐震強度の確認を行う応答スペクトル法へ耐震設計が見直されてきています。
【解答】
(1)解答:カ
題意より解答候補は,(イ)静,(ホ)加速度,(ワ)過渡,(カ)動,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通り,がいし形機器やがい管を用いたブッシングを弱点部に採用された耐震設計手法は,動的設計手法となります。
(2)解答:リ
題意より解答候補は,(チ)\( \ 0.1~0.5 \ \mathrm {Hz} \ \),(リ)\( \ 0.5~10 \ \mathrm {Hz} \ \),(ヨ)\( \ 10~50 \ \mathrm {Hz} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通り,がいし形機器やブッシングの固有振動数は\( \ 0.5~10 \ \mathrm {Hz} \ \)程度となります。
(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ロ)減衰,(ヌ)共振,(ヲ)発散,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通り,頭部荷重が大きい変電機器は地震波と共振を起こす可能性があります。
(4)解答:ハ
題意より解答候補は,(ロ)減衰,(ハ)擬共振,(ニ)加速度ベクトル,(ヘ)応答スペクトル,(ト)最大応答加速度,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通り,単一の振動数に対し評価を行う従来の設計手法を擬共振法といいます。
(5)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ロ)減衰,(ハ)擬共振,(ニ)加速度ベクトル,(ヘ)応答スペクトル,(ト)最大応答加速度,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変電機器の耐震設計」の通り,\( \ 2011 \ \)年に発生した東北地方太平洋沖地震以降,幅広い振動数を含む波形に対して耐震強度の確認が可能な応答スペクトルに基づく設計手法へ見直されています。