《電力》〈変電〉[R07:問6]変圧器や送電線の保護に活用されている差動リレーに関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,変圧器や送電線の保護に広く活用されている差動リレーに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

差動リレーは動作原理とリレー構成が簡単であり,事故区間の判断を確実かつ高速に行うことができるため,送電線,母線,変圧器,発電機など設備の主保護リレーとして幅広く使用されている。動作原理は保護する設備に流入・流出する電流の差を監視するもので,被保護設備内に事故がなければ電流の差が零であるという\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を応用したものである。図1のように被保護設備に流入・流出する電流を\( \ \mathrm {CT} \ \)で検出し,図のように動作回路を構成すれば,設備事故時のみ\( \ i_{1}≠i_{2} \ \)となり,動作回路の\( \ \mathrm {OC} \ \)に\( \ i_{\mathrm {d}} \ \)が流れる。特性図は図2のようになり,第二,第四象限は両端から電流が流入するときの\( \ \fbox {  (2)  } \ \)事故を意味する。図中の\( \ K \ \)は一端から電流が流入するときの動作値を示す。

しかし,実際の差動リレーでは,

①各端子\( \ \mathrm {CT} \ \)の特性差や電流集中による一部\( \ \mathrm {CT} \ \)の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)
②各端子\( \ \mathrm {CT} \ \)二次回路の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)の不平衡
③被保護設備が変圧器の場合,タップ切換器の動作などによる\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の不整合
④被保護設備が送電線の場合,表示線の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)や電流波形\( \ \fbox {  (6)  } \ \)誤差

など,被保護設備健全時においても\( \ i_{\mathrm {d}}≠0 \ \)となる要因が多数あるため,端子電流\( \ i_{1} \ \),\( \ i_{2} \ \)が大きいときは\( \ i_{\mathrm {d}} \ \)の動作限界値を大きくすることで誤動作を防止している。このことを抑制をかけるといい,このようなリレーを比率差動リレーという。

比率差動リレーにおける抑制方式としては,\( \ \fbox {  (7)  } \ \)和抑制方式や最大端子\( \ \fbox {  (7)  } \ \)抑制方式が一般的であり,各被保護設備への適用においては,各設備固有の問題に対して適切な対策を講じる必要がある。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& キルヒホッフの第 \ 2 \ 法則         &(ロ)& インピーダンス \\[ 5pt ] &(ハ)& 感度低下     &(ニ)& \mathrm {CT} \ 比 \\[ 5pt ] &(ホ)& 内部     &(ヘ)& サンプリング \\[ 5pt ] &(ト)& 飽和     &(チ)& 鳳-テブナンの定理 \\[ 5pt ] &(リ)& 伝送     &(ヌ)& 外部 \\[ 5pt ] &(ル)& スカラ     &(ヲ)& 共振 \\[ 5pt ] &(ワ)& 励磁電流     &(カ)& キャパシタンス \\[ 5pt ] &(ヨ)& ベクトル     &(タ)& キルヒホッフの第 \ 1 \ 法則 \\[ 5pt ] &(レ)& 位相 && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変圧器や送電線の保護に用いられる差動リレーに関する問題です。
動作域の内容が少し高度で\( \ 1 \ \)種らしい問題と言えますが,問題文をしっかりと読み込めばある程度解答も絞り込めるため,合格点は十分に狙える問題かと思います。

1.変圧器に用いられる電気的保護装置
変圧器で最も多いのは巻線間短絡事故ですが,一般の過電流リレーや地絡リレーでの検出が困難なため,図3に示すような比率差動継電器が用いられます。
比率差動継電器は,変圧器の一次側と二次側電流を\( \ \mathrm {CT} \ \)を介して検出し,一次側と二次側の差が分かるようにする継電器で,通常時は図1(a)のように動作コイルに流れる電流がほぼ零となるように整定され,異常発生時は図1(b)のように動作コイルに流れる電流が零でなくなります。しかし,一次側と二次側\( \ \mathrm {CT} \ \)の違いや誤差等により,厳密に動作コイルに流れる電流を零とすることができないため,抑制コイルを設けています。また,抑制コイルには外部事故が発生した際等の誤動作防止の役割もあります。

実際の比率差動継電器の特性例は図4のようになります。変圧器外部事故等の外部要因により誤動作が発生してしまう可能性があるため,小電流領域ではベクトル和がある一定以上に大きくなった際に動作するように設定しますが,スカラー和が多くなり誤差の電流が大きくなる場合には,ベクトル和の感度をやや低くなるように設定しています。

【解答】

(1)解答:タ
題意より解答候補は,(イ)キルヒホッフの第\( \ 2 \ \)法則,(チ)鳳-テブナンの定理,(タ)キルヒホッフの第\( \ 1 \ \)法則,になると思います。
差動リレーは流入・流出する電流の差を監視するものなので,キルヒホッフの第\( \ 1 \ \)法則を応用したものとなります。

(2)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)内部,(ヌ)外部,になると思います。
ワンポイント解説「1.変圧器に用いられる電気的保護装置」の通り,図2の第二,第四象限は\( \ i_{1} \ \)と\( \ i_{2} \ \)が正負反対である領域であり,内部事故が発生した際の領域となります。

(3)解答:ト
題意より解答候補は,(ハ)感度低下,(ト)飽和,(ヲ)共振,等になると思います。
電流集中による一部\( \ \mathrm {CT} \ \)に発生するのは磁気の飽和となります。

(4)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)インピーダンス,(ニ)\( \ \mathrm {CT} \ \)比,(ワ)励磁電流,(カ)キャパシタンス,(レ)位相,等になると思います。
ワンポイント解説「1.変圧器に用いられる電気的保護装置」の通り,上記のうち\( \ \mathrm {CT} \ \)二次回路の不均衡要因となりうるのは抑制コイル等を含むインピーダンスとなります。

(5)解答:ニ
題意より解答候補は,(ロ)インピーダンス,(ニ)\( \ \mathrm {CT} \ \)比,(ワ)励磁電流,(カ)キャパシタンス,(レ)位相,等になると思います。
変圧器の場合,タップ切換器の動作などにより一次二次の巻数比が変わるため,タップの選択により\( \ \mathrm {CT} \ \)比が不整合となってしまう可能性があります。

(6)解答:リ
題意より解答候補は,(ヘ)サンプリング,(リ)伝送,(レ)位相,等になると思います。
送電線の場合,変圧器よりも長距離の範囲を保護するため伝送誤差が発生しやすく,電流波形の位相や大きさを一致させることが難しくなります。

(7)解答:ル
題意より解答候補は,(ル)スカラ,(ヨ)ベクトル,になると思います。
ワンポイント解説「1.変圧器に用いられる電気的保護装置」の通り,比率差動リレーにおける抑制方式として,スカラ和抑制方式や最大端子スカラ抑制方式があります。



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