《電力》〈火力〉[R03:問2]火力発電所で使用されるLNGに関する空欄穴埋問題

1 【問題】
2 【ワンポイント解説】
3 【解答】

【問題】

【難易度】★★★★☆（やや難しい）

次の文章は，火力発電所で使用される$ \ \mathrm {LNG} \ $に関する記述である。文中の$ \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ $に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

$ \ \mathrm {LNG} \ $はメタン，エタンを主成分とする天然ガスを超低温で液化したもので，その主成分は約$ \ \fbox {　（１）　} \ $がメタンで占められている。メタンは常温・常圧で気体であるが$ \ \fbox {　（２）　} \ $℃という超低温まで冷却すると液化し，体積は約$ \ \fbox {　（３）　} \ $に減少するため大量貯蔵を可能としている。また，液化する過程で$ \ \fbox {　（４）　} \ $，窒素分，炭酸ガス，水分などの不純物を除去できるので大都市圏の大気汚染防止対策用のクリーンエネルギーとして注目されている。

$ \ \mathrm {LNG} \ $の特色としては石炭や石油に比べ発火点が$ \ \fbox {　（５）　} \ $，組成も単純で火炎が安定しているため燃焼制御が容易であり，燃焼により煤煙の発生がほとんどなく，また灰のような残留物もないことなどがあげられる。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&（イ）&　水素　　　　　&（ロ）&　7 \ 割　　　　　&（ハ）&　硫黄分 \\[ 5pt ] &（ニ）&　高く　　　　　&（ホ）&　低く　　　　　&（ヘ）&　9 \ 割 \\[ 5pt ] &（ト）&　-162　　　　　&（チ）&　6 \ 割　　　　　&（リ）&　\frac {1}{600} \\[ 5pt ] &（ヌ）&　軟質炭化水素　　　　　　　&（ル）&　同等で　　　　　&（ヲ）&　\frac {1}{500} \\[ 5pt ] &（ワ）&　-192　　　　　&（カ）&　\frac {1}{700}　　　　　&（ヨ）&　-132 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

火力発電所の燃料である$ \ \mathrm {LNG} \ $に関する出題です。
火力発電等の燃料を扱っている方以外の方には厳しい問題かと思います。特に(5)は燃焼制御と関係ある引火点ではなく発火点の出題なので，解けなくても仕方がない空欄かと思います。

1.$ \ \mathrm {LNG} \ $の特徴及び性質
$ \ \mathrm {LNG} \ $は$ \ \mathrm {Liquefied \ Natural \ Gas} \ $の略で，日本語名では液化天然ガスとなります。主成分は約$ \ 90 \ ％ \ $がメタンです。
天然ガスを$ \ -162 \ $℃まで冷やし，液化することで体積を約$ \ \displaystyle \frac {1}{600} \ $まで減少させることで，船舶での運搬や貯蔵をしやすくなります。
液化する過程で硫黄分や窒素分等の不純物を除去できるので，フューエル$ \ \mathrm {NO_{x}} \ $や$ \ \mathrm {SO_{x}} \ $の発生はほとんどなくなり，化石燃料としてはクリーンなエネルギーとなります。
また，石炭や石油に比べ引火点が低く，燃焼制御がしやすいという特徴もあります。

参考：$ \ \mathrm {LNG} \ $の性状例
① 外観：無色透明
② 臭い：無臭
③ 沸点、初留点及び沸騰範囲：$ \ -161 \ $℃（メタン）
④ 引火点：$ \ -187.78 \ $℃（メタン）
⑤ 燃焼又は爆発範囲の上限、下限：$ \ 5～15 \ \mathrm {vol％} \ $（メタン）
⑥ 蒸気圧：$ \ 4.250 \ \mathrm {MPa} \ $（$ \ -83 \ $℃／メタン）
⑦ 比重（相対密度）：$ \ 0.62 \ $程度
⑧ 自然発火温度：$ \ 537 \ $℃（メタン）
⑨ 総発熱量：$ \ 43.7 \ \mathrm {MJ / Nm^{3}} \ $程度

出典：安全データシート(SDS)

【解答】

(1)解答：ヘ
題意より解答候補は，（ロ）$ \ 7 \ $割，（ヘ）$ \ 9 \ $割，（チ）$ \ 6 \ $割，になると思います。
ワンポイント解説「1.$ \ \mathrm {LNG} \ $の特徴及び性質」の通り，$ \ \mathrm {LNG} \ $の約$ \ 9 \ $割がメタンガスとなります。

(2)解答：ト
題意より解答候補は，（ト）$ \ -162 \ $，（ワ）$ \ -192 \ $，（ヨ）$ \ -132 \ $，になると思います。
ワンポイント解説「1.$ \ \mathrm {LNG} \ $の特徴及び性質」の通り，$ \ \mathrm {LNG} \ $を$ \ -162 \ $℃まで冷却すると液化します。

(3)解答：リ
題意より解答候補は，（リ）$ \ \displaystyle \frac {1}{600} \ $，（ヲ）$ \ \displaystyle \frac {1}{500} \ $，（カ）$ \ \displaystyle \frac {1}{700} \ $，になると思います。
ワンポイント解説「1.$ \ \mathrm {LNG} \ $の特徴及び性質」の通り，$ \ \mathrm {LNG} \ $は液化すると体積が約$ \ \displaystyle \frac {1}{600} \ $となります。

(4)解答：ハ
題意より解答候補は，（イ）水素，（ハ）硫黄分，（ヌ）軟質炭化水素，になると思います。
ワンポイント解説「1.$ \ \mathrm {LNG} \ $の特徴及び性質」の通り，$ \ \mathrm {LNG} \ $は液化する過程で大気汚染物質の$ \ \mathrm {SO_{x}} \ $の元となる硫黄分を取り除くことができます。したがって，$ \ \mathrm {LNG} \ $を燃料とする火力発電所においては脱硫装置（硫黄酸化物対策の設備）が不要となります。

(5)解答：ニ
題意より解答候補は，（ニ）高く，（ホ）低く，（ル）同等で，になると思います。
ワンポイント解説「1.$ \ \mathrm {LNG} \ $の特徴及び性質」の通り，$ \ \mathrm {LNG} \ $は石炭や石油に比べ引火点が非常に低く，発火点は高いという特徴があります。