【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,電力用の保護機器に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
避雷器は,雷,開閉サージなどに起因する過電圧の波高値がある値を超えた場合,これに伴う電流を分流することによって過電圧を制限して電力用電気設備の絶縁を保護する。また,分流作用に伴う\( \ \fbox { (1) } \ \)を短時間のうちに遮断して,系統の正常な状態を乱すことなく原状に自復する機能をもつ。その定格電圧は,所定の動作責務が遂行できる商用周波電圧値であり,一線地絡時の\( \ \fbox { (2) } \ \),又は負荷遮断によって電気設備に印加される短時間の電圧に基づいて選択される。また,定格の一つである公称放電電流は\( \ \fbox { (3) } \ \)の波高値で示され,\( \ 10 \ 000 \ \mathrm {[A]} \ \)及び\( \ 5 \ 000 \ \mathrm {[A]} \ \)の\( \ 2 \ \)種類が標準的である。
避雷器,及び日本工業規格(\( \ \mathrm {JIS \ C \ 5381-1} \ \))によって規定された低圧配電システムの保護機器であるサージ防護デバイスには\( \ \fbox { (4) } \ \)抵抗特性をもつ\( \ \mathrm {ZnO} \ \)素子が主として使用されている。その電圧-電流特性は大まかに小電流領域,中電流領域及び大電流領域の三つの電流領域に区分される。小電流領域である連続使用電圧(動作開始電圧の\( \ 90 \ \mathrm {[%]} \ \)以下)における抵抗分電流は,\( \ \fbox { (5) } \ \)程度である。
〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 数百マイクロアンペア &(ロ)& 逆 流 \\[ 5pt ]
&(ハ)& 数十ミリアンペア &(ニ)& 高周波電流 \\[ 5pt ]
&(ホ)& 数アンペア &(ヘ)& 双曲線 \\[ 5pt ]
&(ト)& 急しゅん波電流 &(チ)& 続 流 \\[ 5pt ]
&(リ)& 健全相線間電圧 &(ヌ)& 転 流 \\[ 5pt ]
&(ル)& 地絡相対地電圧 &(ヲ)& 非直線 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 健全相対地電圧 &(カ)& 直 線 \\[ 5pt ]
&(ヨ)& 雷インパルス電流 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
避雷器の内容をもう少し詳しく出題したような問題です。少し突っ込んだ内容ではありますが,一種としては比較的易しい問題と言えると思います。
1.避雷器の電圧―電流特性
避雷器に扱われる炭化ケイ素(\( \ \mathrm {SiC} \ \))素子と酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子の電圧―電流特性を図1に示します。図1の通り,どちらも電圧―電流特性は非線形です。炭化ケイ素(\( \ \mathrm {SiC} \ \))素子単体では通常運転時でも電流が流れてしまう反面,酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子の場合通常電圧時では電流が流れないため,近年では酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子が多く採用されています。
【解答】
(1)解答:チ
題意より,解答候補は(ロ)逆流,(チ)続流,(ヌ)転流,となると思います。雷電流等の放電が完了した後,通常電力系統から供給されて避雷器に流れ続けようとする電流を続流と言い,避雷器は続流を短時間に遮断して正常な状態を乱すことなく原状に自復する機能を必要とします。
(2)解答:ワ
題意より,解答候補は(リ)健全相線間電圧,(ル)地絡相対地電圧,(ワ)健全相対地電圧,となると思います。一線地絡時は健全相の電圧が上昇するので,避雷器の定格電圧は健全相対地電圧に基づいて選択されます。
(3)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ニ)高周波電流,(ト)急しゅん波電流,(ヨ)雷インパルス電流,となると思います。避雷器の公称放電電流は雷インパルス電流の波高値で示されます。
(4)解答:ヲ
題意より,解答候補は(ヘ)双曲線,(ヲ)非直線,(カ)直線,となると思います。ワンポイント解説「1.避雷器の電圧―電流特性」の通り,酸化亜鉛(\( \ \mathrm {ZnO} \ \))素子は非直線抵抗特性を持ちます。
(5)解答:イ
題意より,解答候補は(イ)数百マイクロアンペア,(ハ)数十ミリアンペア,(ホ)数アンペア,になると思います。小電流領域である連続使用電圧(動作開始電圧の\( \ 90 \ \mathrm {[%]} \ \)以下)における抵抗分電流は非常に小さく,数百マイクロアンペア程度となります。