【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,発光ダイオード(\( \ \mathrm {Light \ Emitting \ Diode} \ \):以下\( \ \mathrm {LED} \ \)とする)の発光原理と発光波長に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
半導体を\( \ \mathrm {pn} \ \)接合すると,電子で満たされた価電子帯と電子の満たされていない伝導帯との間に,電子が存在できない禁制帯が形成される。\( \ \mathrm {LED} \ \)は,半導体の\( \ \mathrm {pn} \ \)接合に順方向電流を流すと,\( \ \fbox { (1) } \ \)とが禁制帯を超えて再結合するときに,禁制帯の幅に応じた波長の光を発生する。\( \ \mathrm {LED} \ \)の発光波長\( \ \lambda \ \mathrm {[nm]} \ \)は,禁制帯幅\( \ E_{\mathrm {g}} \ \mathrm {[eV]} \ \),プランクの定数\( \ h \ \mathrm {[eV\cdot s]} \ \),光速\( \ c \ \mathrm {[m/s]} \ \)が関係し,①式で求めることができる。
\[
\begin{eqnarray}
\lambda &=&\frac {hc}{E_{\mathrm {g}}}\times 10^{9}≒\frac {1240}{E_{\mathrm {g}}} ・・・・・・・・・ ① \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
これによれば,可視領域に対応した発光を得るには,禁制帯幅\( \ E_{\mathrm {g}} \ \)を\( \ \fbox { (2) } \ \)とすることが必要になる。\( \ \mathrm {LED} \ \)の開発は,周期律表の主に\( \ \fbox { (3) } \ \)の化合物半導体が用いられ,可視領域に対応した発光の実用化は,赤,黄など\( \ \fbox { (4) } \ \)禁制帯幅をもつ材料から始まり,実用化が困難であるとされた青色光は,\( \ \fbox { (5) } \ \)系材料によって得られるようになった。
〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 1.59 \ \mathrm {eV} \ ~ \ 3.26 \ \mathrm {eV} &(ロ)& \mathrm {n} \ 形領域のイオンと \ \mathrm {p} \ 形領域の電子 \\[ 5pt ]
&(ハ)& \mathrm {GaP} &(ニ)& 1.77 \ \mathrm {eV} \ ~ \ 4.13 \ \mathrm {eV} \\[ 5pt ]
&(ホ)& 比較的小さい &(ヘ)& Ⅲ族とⅤ族 \\[ 5pt ]
&(ト)& \mathrm {GaN} &(チ)& \mathrm {n} \ 形領域の正孔と \ \mathrm {p} \ 形領域の電子 \\[ 5pt ]
&(リ)& 中程度の &(ヌ)& 比較的大きい \\[ 5pt ]
&(ル)& \mathrm {n} \ 形領域の電子と \ \mathrm {p} \ 形領域の正孔 &(ヲ)& Ⅱ族とⅥ族 \\[ 5pt ]
&(ワ)& Ⅰ族とⅣ族 &(カ)& 1.43 \ \mathrm {eV} \ ~ \ 3.10 \ \mathrm {eV} \\[ 5pt ]
&(ヨ)& \mathrm {GaAs} && \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
半導体工学の内容からの出題となっています。電子工学を専門とされていた方であれば比較的基本的な内容となると思います。正確に理解するためにはエネルギーバンド構造のバンドギャップを理解する必要がありますが,電験においてはそこまで深く学ぶ必要はないと思います。
1.\( \ \mathrm {LED} \ \)の発光原理
図1のように,\( \ \mathrm {pn} \ \)接合した半導体に順方向電圧をかけると,\( \ \mathrm {p} \ \)型半導体と\( \ \mathrm {n} \ \)型半導体の界面にて電子と正孔が再結合し発光します。
【解答】
(1)解答:ル
題意より,解答候補は(ロ)\( \ \mathrm {n} \ \)形領域のイオンと\( \ \mathrm {p} \ \)形領域の電子,(チ)\( \ \mathrm {n} \ \)形領域の正孔と\( \ \mathrm {p} \ \)形領域の電子,(ル)\( \ \mathrm {n} \ \)形領域の電子と\( \ \mathrm {p} \ \)形領域の正孔,になると思います。ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {LED} \ \)の発光原理」の通り,\( \ \mathrm {LED} \ \)は\( \ \mathrm {n} \ \)形領域の電子と\( \ \mathrm {p} \ \)形領域の正孔が再結合することにより発光します。
(2)解答:イ
可視光の波長は\( \ 380~780 \ \mathrm {[nm]} \ \)なので,それぞれ①に代入すると,
\[
\begin{eqnarray}
380 &≒&\frac {1240}{E_{\mathrm {g}}} &→& E_{\mathrm {g}} &≒&3.26 \ \mathrm {[eV]} \\[ 5pt ]
780 &≒&\frac {1240}{E_{\mathrm {g}}} &→& E_{\mathrm {g}} &≒&1.59 \ \mathrm {[eV]} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
となるので,可視領域に対応した発光を得るには,禁制帯幅\( \ E_{\mathrm {g}} \ \)を\( \ 1.59 \ \mathrm {eV} \ ~ \ 3.26 \ \mathrm {eV} \ \)とすることが必要になる。
(3)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ヘ)Ⅲ族とⅤ族,(ワ)Ⅰ族とⅣ族,(ヲ)Ⅱ族とⅥ族,になると思います。発光ダイオードの開発として使用されてきたのは主にⅢ族とⅤ族の組み合わせです。
(4)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)比較的小さい,(リ)中程度の,(ヌ)比較的大きい,となると思います。当初\( \ \mathrm {LED} \ \)の開発に成功したのは,\( \ \mathrm {AlGaAs} \ \)の赤色や\( \ \mathrm {GaP} \ \)の黄色等比較的禁制帯の小さい材料でした。
(5)解答:ト
題意より,解答候補は(ハ)\( \ \mathrm {GaP} \ \),(ト)\( \ \mathrm {GaN} \ \),(ヨ)\( \ \mathrm {GaAs} \ \),となると思います。青色\( \ \mathrm {LED} \ \)の開発に成功したのは\( \ \mathrm {GaN} \ \)系材料です。