《機械》〈電熱〉[R03:問7]ヒートポンプのメカニズムや成績係数に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,ヒートポンプに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

ヒートポンプは,外部から機械的な仕事を加えることによって低温熱源から熱を吸収し,高温熱源へ放出する熱機関である。冷暖房,冷凍,給湯などの熱源機として広く用いられている。ヒートポンプの熱サイクルにおいて,熱の輸送を担う物質は冷媒と呼ばれ,ハイドロフルオロカーボン,\( \ \fbox {  (1)  } \ \),アンモニアなどが用いられている。冷媒にはヒートポンプにおける良好な熱輸送特性のほか,環境問題から地球温暖化係数や\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が小さいことが求められている。

ヒートポンプの熱サイクルの基本サイクルは\( \ \fbox {  (3)  } \ \)と呼ばれる。冷媒は,低温熱源側に設置した蒸発器において,低温熱源から熱を吸収して蒸発する。その後,外部動力によって駆動する圧縮機において高温,高圧となり,高温熱源側に設置した\( \ \fbox {  (4)  } \ \)に送り込まれる。そこで冷媒は熱を高温熱源に放出する。その後,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)によって低温,低圧となり,再び蒸発器に戻される。

ヒートポンプの性能を示す指標の一つに\( \ \mathrm {COP} \ \)(成績係数)がある。低温熱源の温度を\( \ T_{1} \ \mathrm {[K]} \ \),高温熱源の温度を\( \ T_{2} \ \mathrm {[K]} \ \),とすると,加熱の場合の\( \ \mathrm {COP} \ \)の理論上の最高値は\( \ \fbox {  (6)  } \ \)となる。また,蒸発器で吸収した熱量を\( \ Q_{\mathrm {L}} \ \mathrm {[J]} \ \),ヒートポンプを動かすために使った仕事を\( \ W \ \mathrm {[J]} \ \)として,熱損失などを無視すると加熱の場合の\( \ \mathrm {COP} \ \)は\( \ \fbox {  (7)  } \ \)で与えられる。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \frac {Q_{\mathrm {L}} }{W}     &(ロ)& 逆カルノーサイクル       &(ハ)& 凝縮器 \\[ 5pt ] &(ニ)& 水     &(ホ)& \frac {Q_{\mathrm {L}}+W}{W}     &(ヘ)& \frac {T_{2}-T_{1}}{T_{2}} \\[ 5pt ] &(ト)& \frac {Q_{\mathrm {L}}-W}{W}     &(チ)& \frac {T_{2}}{T_{1}}     &(リ)& 復水器 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 膨張弁     &(ル)& カルノーサイクル     &(ヲ)& 過熱器 \\[ 5pt ] &(ワ)& エンタルピー     &(カ)& \frac {T_{2}}{T_{2}-T_{1}}     &(ヨ)& 四方弁 \\[ 5pt ] &(タ)& オゾン破壊係数       &(レ)& ナトリウム     &(ソ)& 二酸化炭素 \\[ 5pt ] &(ツ)& 加減弁     &(ネ)& ランキンサイクル     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

ヒートポンプに関する問題です。
問6がやや難易度が高めの問題であったため,多くの受験生が本問を選択したと思います。
代替フロンの内容やサイクル名等少し深めの内容も含まれていますが,選択肢を絞りやすいこともあり\( \ 1 \ \)種としては比較的取り組みやすい問題と言えるでしょう。

1.ヒートポンプの構成機器
ヒートポンプのフローを図1に示します。冷房時が青線,暖房時は赤線の流れとなります。冷房時を例に示します。
 蒸発器:膨張弁からの低温低圧の液を蒸発させ気化させます。
 四方弁:暖房冷房時に圧縮機に流れる媒体の向きを同じにするために向きを変えるものです。
 圧縮機:蒸発器から出た低圧の蒸気を高圧蒸気にします。
 凝縮器:圧縮機で高温高圧となった蒸気を凝縮し,液化させます。
 膨張弁:凝縮器から出た液を膨張し,低温低圧の液にします。

ヒートポンプのサイクルとして用いられる冷媒は代替フロンとして使用されているハイドロフルオロカーボン(\( \ \mathrm {HFC} \ \))が一般的ですが,地球温暖化係数が高い物質であるため,二酸化炭素やアンモニア等の地球温暖化係数のより小さい冷媒が用いられることも多くなってきています。

 ※図1において,暖房時には熱交換器である蒸発器と凝縮器の役割が逆となります。

2.ヒートポンプの成績係数(\( \ \mathrm {COP} \ \))
図1において,蒸発器の吸熱量\( \ Q_{\mathrm {L}} \ \)及び圧縮機にかける仕事量\( \ W \ \)と凝縮器の放熱量\( \ Q_{\mathrm {H}} \ \)は等しいので,
\[
\begin{eqnarray}
Q_{\mathrm {H}}&=&Q_{\mathrm {L}}+W \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] という関係があり,冷房時と暖房時の成績係数\( \ \mathrm {{COP}_{L}} \ \),\( \ \mathrm {{COP}_{H}} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {{COP}_{L}}&=&\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ] \mathrm {{COP}_{H}}&=&\frac {Q_{\mathrm {H}}}{W} \\[ 5pt ] &=&\frac {Q_{\mathrm {L}}+W}{W} \\[ 5pt ] &=&1+\frac {Q_{\mathrm {L}}}{W} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。また,熱量が熱容量と温度の積であることから,低温熱源の温度を\( \ T_{\mathrm {L}} \ \),高温熱源の温度を\( \ T_{\mathrm {H}} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {{COP}_{L}}&=&\frac {T_{\mathrm {L}}}{T_{\mathrm {H}}-T_{\mathrm {L}}} \\[ 5pt ] \mathrm {{COP}_{H}}&=&\frac {T_{\mathrm {H}}}{T_{\mathrm {H}}-T_{\mathrm {L}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と表すことも可能となります。

【解答】

(1)解答:ソ
題意より,解答候補は(ニ)水,(レ)ナトリウム,(ソ)二酸化炭素,になると思います。
ヒートポンプに使用される冷媒としては二酸化炭素となります。水は沸点が高いため採用できず,ナトリウムは軽金属で酸素や水と激しく反応するためヒートポンプには適しません。

(2)解答:タ
題意より,解答候補は(ワ)エンタルピー,(タ)オゾン破壊係数,になると思います。
環境問題として問題となるのは地球温暖化係数とオゾン破壊係数です。クロロフルオロカーボン(\( \ \mathrm {CFC} \ \))やハイドロクロロフルオロカーボン(\( \ \mathrm {HCFC} \ \))はオゾン破壊係数が高いため,現在は代替フロンとしてハイドロフルオロカーボン(\( \ \mathrm {HFC} \ \))が使用されていますが,地球温暖化係数が高いという点が問題となっています。

(3)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)逆カルノーサイクル,(ル)カルノーサイクル,(ネ)ランキンサイクル,になると思います。
ヒートポンプのサイクルは逆カルノーサイクルと呼ばれ,低温熱源から熱を吸収し,高温の熱源に熱を放出するサイクルとなります。カルノーサイクルは熱効率が最大になる理想的な熱サイクルで,ランキンサイクルは汽力発電での熱サイクルです。

(4)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)凝縮器,(リ)復水器,(ヌ)膨張弁,(ヲ)過熱器,(ヨ)四方弁,(ツ)加減弁,になると思います。
ワンポイント解説「1.ヒートポンプの構成機器」の通り,圧縮機で高温高圧となった冷媒は凝縮器へ送られ,熱を高温熱源に放出します。

(5)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ハ)凝縮器,(リ)復水器,(ヌ)膨張弁,(ヲ)過熱器,(ヨ)四方弁,(ツ)加減弁,になると思います。
ワンポイント解説「1.ヒートポンプの構成機器」の通り,凝縮で熱交換した冷媒は膨張弁によって低温,低圧となります。

(6)解答:カ
題意より,解答候補は(ヘ)\( \ \displaystyle \frac {T_{2}-T_{1}}{T_{2}} \ \),(チ)\( \ \displaystyle \frac {T_{2}}{T_{1}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \frac {T_{2}}{T_{2}-T_{1}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.ヒートポンプの成績係数(\( \ \mathrm {COP} \ \))」の通り,低温熱源の温度を\( \ T_{1} \ \mathrm {[K]} \ \),高温熱源の温度を\( \ T_{2} \ \mathrm {[K]} \ \)としたとき,加熱の場合の\( \ \mathrm {COP} \ \)は\( \ \displaystyle \frac {T_{2}}{T_{2}-T_{1}} \ \)となります。

(7)解答:ホ
題意より,解答候補は(イ)\( \ \displaystyle \frac {Q_{\mathrm {L}} }{W} \ \),(ホ)\( \ \displaystyle \frac {Q_{\mathrm {L}}+W}{W} \ \),(ト)\( \ \displaystyle \frac {Q_{\mathrm {L}}-W}{W} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.ヒートポンプの成績係数(\( \ \mathrm {COP} \ \))」の通り,加熱の場合の\( \ \mathrm {COP} \ \)は\( \ \displaystyle \frac {Q_{\mathrm {L}}+W}{W} \ \)となります。



記事下のシェアタイトル