《機械》〈情報伝送及び処理〉[R04:問7]コンピュータシステムの保守,運用に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,コンピュータシステムの保守,運用に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

コンピュータシステムは期待された性能を安定に発揮することを求められており,その基準となる信頼性,\( \ \fbox {  (1)  } \ \),保守容易性を\( \ \mathrm {RAS} \ \)と称している。近年では,データを破壊から守る保全性や部外者のアクセスを制限する機密性も加えた\( \ \mathrm {RASIS} \ \)と呼ばれる場合もある。

信頼性は,平均故障間隔\( \ \left( \mathrm {MTBF} \right) \ \)で表され,保守容易性は,平均修理時間\( \ \left( \mathrm {MTTR} \right) \ \)で表される。これらの指標を用いて,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を表す稼働率は,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)式で求められる。

今,ある装置\( \ \mathrm {X} \ \)を\( \ 5 \ \)年間連続して稼働させたところ,故障は\( \ 2 \ \)回で修理の合計時間は\( \ 1 \ 200 \ \mathrm {h} \ \)であった。\( \ 1 \ \)年間を\( \ 8 \ 760 \ \mathrm {h} \ \)とすると,この装置\( \ \mathrm {X} \ \)の稼働率は\( \ \fbox {  (3)  } \ \mathrm {%} \ \)である。

次に装置\( \ \mathrm {Y} \ \)を装置\( \ \mathrm {X} \ \)に直列に接続して用いることを考える。このままでは装置単独で用いるよりも信頼性が低下する。よって,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)に基づく設計を適用し,予備機を待機させ,障害発生時にはこの待機系に切り替えて運用できる図示のシステム\( \ \mathrm {Z} \ \)を構築することにした。このシステムを\( \ \fbox {  (5)  } \ \)システムという。この装置の信頼度を稼働状態と待機状態との区別なく,装置\( \ \mathrm {X} \ \)は\( \ 0.7 \ \),装置\( \ \mathrm {Y} \ \)は\( \ 0.8 \ \)とするとき,待機系への切り替え時に生じる故障や停止を無視すると,システム\( \ \mathrm {Z} \ \)の信頼度は\( \ \fbox {  (6)  } \ \)に改善される。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 0.806     &(ロ)& 高速性     &(ハ)& デュアル \\[ 5pt ] &(ニ)& 0.750     &(ホ)& 97.3     &(ヘ)& \frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTBF}+\mathrm {MTTR}} \\[ 5pt ] &(ト)& 可用性     &(チ)& 1-\frac {\mathrm {MTTR}}{\mathrm {MTBF}}     &(リ)& 応答性 \\[ 5pt ] &(ヌ)& デュプレックス       &(ル)& 94.7     &(ヲ)& シンプレックス \\[ 5pt ] &(ワ)& 94.4     &(カ)& \frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTTR}}     &(ヨ)&  フールプルーフ \\[ 5pt ] &(タ)& 1.12     &(レ)& フォールトトレランス     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

コンピュータシステムの保守,運用のおける基本事項に関する問題です。
コンピュータの分野で電験の範囲としては選択項目となるので,勉強していない受験生も多いかと思いますが,内容はそれほど難しい内容ではありません。
本問で内容を理解するようにしましょう。

1.\( \ \mathrm {RAS} \ \),\( \ \mathrm {RASIS} \ \)
コンピュータシステムが安定して機能や性能を発揮できるかを示す指標で\( \ \mathrm {RAS} \ \)は\( \ \mathrm {Reliability} \ \)(信頼性), \( \ \mathrm {Avalability} \ \)(可用性), \( \ \mathrm {Serviceability} \ \)(保守性) の頭文字を取ったもの,\( \ \mathrm {RASIS} \ \)は\( \ \mathrm {RAS} \ \)に加えて\( \ \mathrm {Integrity} \ \)(保全性), \( \ \mathrm {Security} \ \)(機密性) を加えたものです。

\( \ \mathrm {Reliability} \ \)(信頼性)
故障や障害によるシステムの停止の発生しにくさを表します。
平均故障間隔\( \ \mathrm {MTBF\left( Mean \ Time \ Between \ Failures \right) } \ \)(故障発生から次の故障が発生するまでの時間)を指標とします。

\( \ \mathrm {Avalability} \ \)(可用性)
故障の発生しにくさや故障時間の短さを表します。
稼働率の高さ\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTBF}+\mathrm {MTTR}} \ \)を指標とします。

\( \ \mathrm {Serviceability} \ \)(保守性)
故障の復旧のしやすさを表します。
平均修理時間\( \ \mathrm {MTTR\left( Mean \ Time \ To \ Repairs \right) } \ \)を指標とします。

\( \ \mathrm {Integrity} \ \)(完全性)
データの欠損や不整合の起きにくさを表します。

\( \ \mathrm {Security} \ \)(機密性)
外部からの不正侵入や情報漏洩の起きにくさを表します。

2.直列システム及び並列システムの信頼度
システムの信頼度が\( \ R_{1} \ \),\( \ R_{2} \ \),\( \ \cdots \ \),\( \ R_{\mathrm {n}} \ \)のシステムを直列及び並列接続するときの信頼度は以下の式で求められます。

①直列システム
\[
\begin{eqnarray}
R&=&R_{1}\cdot R_{2}\cdot \ \cdots \ \cdot R_{\mathrm {n}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

②並列システム
\[
\begin{eqnarray}
R&=&1-\left( 1-R_{1}\right) \left( 1-R_{2}\right) \cdots \left( 1-R_{\mathrm {n}}\right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【解答】

(1)解答:ト
題意より解答候補は,(ロ)高速性,(ト)可用性,(リ)応答性,になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {RAS} \ \),\( \ \mathrm {RASIS} \ \)」の通り,\( \ \mathrm {RAS} \ \)の基準となっているのは可用性となります。

(2)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ヘ)\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTBF}+\mathrm {MTTR}} \ \),(チ)\( \ \displaystyle 1-\frac {\mathrm {MTTR}}{\mathrm {MTBF}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTTR}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.\( \ \mathrm {RAS} \ \),\( \ \mathrm {RASIS} \ \)」の通り,可用性は\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTBF}+\mathrm {MTTR}} \ \)で表されます。

(3)解答:ホ
装置\( \ \mathrm {X} \ \)の平均故障間隔\( \ \mathrm {MTBF} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {MTBF}&=&\frac {8 \ 760\times 5 -1 \ 200}{2} \\[ 5pt ] &=&21 \ 300 \ \mathrm {[h]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,平均修理時間\( \ \mathrm {MTTR} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {MTTR}&=&\frac {1 \ 200}{2} \\[ 5pt ] &=&600 \ \mathrm {[h]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,稼働率は,
\[
\begin{eqnarray}
稼働率&=&\frac {\mathrm {MTBF}}{\mathrm {MTBF}+\mathrm {MTTR}} \\[ 5pt ] &=&\frac {21 \ 300}{21 \ 300+600} \\[ 5pt ] &≒&0.97260 → 97.2 \ \mathrm {[%]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:レ
題意より解答候補は,(ハ)デュアル,(ヌ)デュプレックス,(ヲ)シンプレックス,(ヨ)フールプルーフ,(レ)フォールトトレランス,になると思います。
予備機を待機させる等システムの障害が発生した場合にでも継続して運転できるようにすることをフォールトトレランスといいます。

(5)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)デュアル,(ヌ)デュプレックス,(ヲ)シンプレックス,(ヨ)フールプルーフ,(レ)フォールトトレランス,になると思います。
システム\( \ \mathrm {Z} \ \)のように,機器の信頼性を高める二重化の技術をデュプレックスシステムといいます。デュアルも二重の意味を持つ言葉で,パソコンの\( \ \mathrm {CPU} \ \)ではデュアルコアという使い方をしますが,システムではデュプレックスが使用されます。

(6)解答:イ
装置\( \ \mathrm {X} \ \)と装置\( \ \mathrm {Y} \ \)の直列接続の信頼度は\( \ 0.7\times 0.8=0.56 \ \)であるから,全体の信頼度\( \ R \ \)は,ワンポイント解説「2.直列システム及び並列システムの信頼度」の通り,
\[
\begin{eqnarray}
R&=&1-\left( 1-0.56\right) \left( 1-0.56\right) \\[ 5pt ] &≒&0.806 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



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