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【問題】
【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)
次の文章は,水力発電所の吸出し管に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。
吸出し管は,\( \ \fbox { (1) } \ \)のランナ出口から放水路を結ぶ管で,単なる導水管として用いられるだけでなく,管内に充満する水頭を利用して,ランナ出口の圧力を大気圧以下に保ち,また,ランナ出口の水の持つ\( \ \fbox { (2) } \ \)をランナ出口から\( \ \fbox { (3) } \ \)までの落差として回収するためのものである。
ランナの指定位置の標高と\( \ \fbox { (3) } \ \)の標高差を吸出し高さと言い,これを高くとり過ぎると\( \ \fbox { (4) } \ \)が発生しやすくなる。標準大気圧に相当する理論上の水柱の高さは約\( \ \fbox { (5) } \ \mathrm {m} \ \)であるが,\( \ \fbox { (4) } \ \)を考慮して,吸出し高さは通常\( \ 7 \ \mathrm {m} \ \)以下としている。
〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 衝動水車 &(ロ)& ドラフト底面 &(ハ)& 8 \\[ 5pt ]
&(ニ)& コロージョン &(ホ)& 放水面 &(ヘ)& 圧力エネルギー \\[ 5pt ]
&(ト)& 9 &(チ)& エロージョン &(リ)& 運動エネルギー \\[ 5pt ]
&(ヌ)& 10 &(ル)& 衝撃水車 &(ヲ)& 河川下床面 \\[ 5pt ]
&(ワ)& 位置エネルギー &(カ)& キャビテーション &(ヨ)& 反動水車 \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
吸出し管に関する問題です。
\( \ 3 \ \)種ではキャビテーション対策としてよく出題されている印象でしたが,\( \ 2 \ \)種では近年出題されていませんでした。
そもそもの衝動水車と反動水車の違いやキャビテーションの内容も絡め,忘れてしまった方はテキスト等で復習しておくようにして下さい。
1.吸出し管
フランシス水車をはじめとする水が充満されている反動水車の出口に設けられる管で,図1に示すようなラッパ状の形をしたものが一般的です。
ランナで仕事をした水をそのまま放水口に出すのではなく,ランナから出た水の流路を広げランナ出口の圧力を大気圧以下に保持し,ラッパ状に広げ流速を落とすことで運動エネルギーを位置エネルギーとして回収します。
理論上の吸出し管の高さは大気圧(1気圧)である約\( \ 10.33 \ \mathrm {m} \ \)までですが,実際にはキャビテーション発生防止のため\( \ 7 \ \mathrm {m} \ \)程度までとしています。
【解答】
(1)解答:ヨ
題意より解答候補は,(イ)衝動水車 ,(ル)衝撃水車,(ヨ)反動水車,になると思います。
ワンポイント解説「1.吸出し管」の通り,吸出し管は反動水車のランナ出口に設けられる管となります。
(2)解答:リ
題意より解答候補は,(ヘ)圧力エネルギー,(リ)運動エネルギー,(ワ)位置エネルギー,になると思います。
ワンポイント解説「1.吸出し管」の通り,吸出し管は一般にラッパ状にして流水の速度を落とすことで運動エネルギーを位置エネルギーとして回収します。
(3)解答:ホ
題意より解答候補は,(ロ)ドラフト底面,(ホ)放水面,(ヲ)河川下床面,になると思います。
ワンポイント解説「1.吸出し管」の通り,ランナと放水面の標高差を吸出し高さといいます。
(4)解答:カ
題意より解答候補は,(ニ)コロージョン,(チ)エロージョン,(カ)キャビテーション,になると思います。
ワンポイント解説「1.吸出し管」の通り,吸出し高さを上げすぎるとキャビテーションが発生しやすくなります。キャビテーションは飽和蒸気圧以下に低下したときに,水が水蒸気になり気泡が発生し,その気泡が再び圧力が高い場所に行くと液化し,気泡が崩壊し大きな機械的衝撃が加わる現象です。コロージョンは腐食,エロ―ジョンは侵食であり,文章としてはキャビテーションが発生することによりエロ―ジョンが発生する可能性があるという言い方が正しいかと思います。
(5)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ 8 \ \),(ト)\( \ 9 \ \),(ヌ)\( \ 10 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.吸出し管」の通り,標準大気圧に相当する理論上の水柱の高さは約\( \ 10 \ \mathrm {m} \ \)となります。