《機械》〈電気化学〉[H20:問7]電気化学システムにおける亜鉛に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電気化学システムにおける亜鉛に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

亜鉛は電気化学的に活性であり,マンガン乾電池では\( \ \fbox {  (1)  } \ \)として利用されている。鉄板の表面に亜鉛を被覆したものは\( \ \fbox {  (2)  } \ \)と呼ばれ,鉄の腐食を防ぐのに用いられる。これらの用途に使われる亜鉛は,主に電気分解によって作られる。この亜鉛電解では,電解質として\( \ \fbox {  (3)  } \ \)水溶液が用いられ,陰極で\( \ \fbox {  (4)  } \ \)反応が起こり,亜鉛が析出する。この際,陰極に析出する亜鉛の質量は\( \ \fbox {  (5)  } \ \)に比例する。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 硫 酸     &(ロ)& ブリキ     &(ハ)& 電解質 \\[ 5pt ] &(ニ)& 塩 酸     &(ホ)& 電 圧     &(ヘ)& 酸 化 \\[ 5pt ] &(ト)& 負極活物質       &(チ)& ステンレス       &(リ)& 中 和 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 正極活物質     &(ル)& 電気量     &(ヲ)& 還 元 \\[ 5pt ] &(ワ)& アルカリ     &(カ)& 溶液量     &(ヨ)& トタン \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電気化学システムのうち,亜鉛に関連する知識を問う問題です。
電解採取のプロセスは基本的には同じような原理なので,銅の電解精錬を代表として覚えておくと良いかと思います。

1.銅の電解精製プロセス
乾式精錬で純度を\( \ 99 \ \mathrm {%} \ \)程度に上げた粗銅を,さらに純度を上げ\( \ 99.99 \ \mathrm {%} \ \)以上に上げるため,図1に示すようなプロセス行う方法です。陽極(アノード)に粗銅,陰極(カソード)に純銅を配置して,電解液に硫酸水溶液等を用いて,以下のような反応をさせます。
\[
\begin{eqnarray}
陽極(アノード)&:& \mathrm {Cu} &→& \mathrm {Cu}^{2+} +2\mathrm {e}^{-} \\[ 5pt ] 陰極(カソード)&:& \mathrm {Cu}^{2+} +2\mathrm {e}^{-} &→& \mathrm {Cu} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

2.電気分解におけるファラデーの法則
電極に析出する物質の質量\( \ W \ \mathrm {[g]} \ \)は溶液を通過する電気量\( \ Q \ \mathrm {[C]} \ \)に比例する(第\( \ 1 \ \)法則)もしくは物質の化学当量(=原子量\( \ m \ \)/原子価\( \ n \ \))に比例する(第\( \ 2 \ \)法則)という法則で,ファラデー定数を\( \ F≒96 \ 500 \ \mathrm {[C / mol]} \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
W&=&\frac {1}{F}\cdot \frac {m}{n} Q \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。また,電流\( \ I \ \mathrm {[A]} \ \)を時間\( \ t \ \mathrm {[s]} \ \)通電していたとすると,\( \ Q=It \ \)の関係から,
\[
\begin{eqnarray}
W&=&\frac {1}{F}\cdot \frac {m}{n} It \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

※ファラデーの法則を覚えても良いですが,できるだけ単位や化学式を用いた解法をマスターするようにしましょう。

3.金属のイオン化傾向
金属のイオンのなりやすさを示す指標で以下のような順番になります。高校の化学で覚え方も習ったと思います。
\[
\begin{eqnarray}
\mathrm {K}→\mathrm {Ca}→\mathrm {Na}→\mathrm {Mg}→\mathrm {Al}→\mathrm {Zn}→\mathrm {Fe}→\mathrm {Ni}→\mathrm {Sn}→\mathrm {Pb} \\[ 5pt ] →\mathrm {( H ) }→\mathrm {Cu}→\mathrm {Hg}→\mathrm {Ag}→\mathrm {Pt}→\mathrm {Au} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【覚え方】
 かそうかな、まああてにするな、ひどすぎる借金

4.マンガン乾電池
正極に二酸化マンガン,負極に亜鉛,電解液に塩化亜鉛を用いるものが一般的で,電解液に水酸化カリウムを用いたものをアルカリマンガン乾電池(アルカリ乾電池)といいます。

特徴
・一次電池として最も広く長く利用されている
・公称電圧は\( \ 1.5 \ \mathrm {V} \ \)程度
・アルカリマンガン乾電池の方が容量は大きいが,マンガン乾電池はしばらく時間が経過すると電圧が回復する性質がある
・アルカリマンガン乾電池の低価格化に伴い,現在はアルカリマンガン乾電池が主流となっている

【解答】

(1)解答:ト
題意より解答候補は,(ハ)電解質,(ト)負極活物質,(ヌ)正極活物質,になると思います。
ワンポイント解説「4.マンガン乾電池」の通り,マンガン乾電池は亜鉛は負極活物質として利用されています。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ロ)ブリキ,(チ)ステンレス,(ヨ)トタン,になると思います。
鉄板の表面に亜鉛を被覆し,腐食に強くしたものをトタンといいます。ブリキは鉄板にスズをメッキしたもの,ステンレスは鉄にクロムやニッケル等を加え合金としたもので,いずれも原理や用途は異なりますが耐腐食効果があります。

(3)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)硫酸,(ニ)塩酸,(ワ)アルカリ,になると思います。
ワンポイント解説「1.銅の電解精製プロセス」の通り,亜鉛電解においては電解質として硫酸が用いられます。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)酸化,(リ)中和,(ヲ)還元,になると思います。
ワンポイント解説「1.銅の電解精製プロセス」の通り,亜鉛電解の陰極で起こる反応は電子を受け取る還元反応となります。

(5)解答:ル
題意より解答候補は,(ホ)電圧,(ル)電気量,(カ)溶液量,になると思います。
ワンポイント解説「2.電気分解におけるファラデーの法則」の通り,亜鉛電解の陰極で起こる反応は電子を受け取る還元反応となります。



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