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【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
次の文章は,保護リレーシステムに関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句又は式を解答群の中から選びなさい。
保護リレーシステムにおける最も重要な機能は,系統や設備に発生した故障を高速に除去することである。このために保護リレーには\( \ \fbox { (1) } \ \)や方向距離判別の基本検出機能を有することが重要となる。
上記の機能を実現するために保護リレーシステムでは,変流器と計器用変圧器とにより電流及び電圧要素を取り込み,故障の発生を検出している。リレー方式により使用する電流要素,電圧要素が異なっており,図の\( \ \Large {\bullet } \ \)にリレーが設置されているとき,距離リレー方式では\( \ \fbox { (2) } \ \)の演算式により,回線選択リレー方式では\( \ \fbox { (3) } \ \)の演算式により,電流差動リレー方式では\( \ \fbox { (4) } \ \)の演算式により短絡故障の発生を検出している。この\( \ 3 \ \)方式のリレーにおいて最も確実に\( \ \fbox { (1) } \ \)を行えるのは\( \ \fbox { (5) } \ \)方式である。
〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 電流差動リレー &(ロ)& 距離リレー &(ハ)& \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \\[ 5pt ]
&(ニ)& 過渡現象判別 &(ホ)& {\dot V}_{\mathrm {a}} &(ヘ)& \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}-{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \\[ 5pt ]
&(ト)& \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}}} &(チ)& 電流変化判別 &(リ)& {\dot I}_{\mathrm {a1}} \\[ 5pt ]
&(ヌ)& {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}} &(ル)& {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}} &(ヲ)& 回線選択リレー \\[ 5pt ]
&(ワ)& 区間判別 &(カ)& \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}} &(ヨ)& \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}-{\dot V}_{\mathrm {b}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \\[ 5pt ]
\end{eqnarray}
\]
【ワンポイント解説】
送電線のリレーシステムに関する問題です。
リレーシステムは\( \ 3 \ \)種ではあまり出題されていない内容ですが,\( \ 2 \ \)種になると比較的出題されやすい内容です。ただし,リレーの内容は勉強をはじめると非常に奥が深いので,電験の対策としてはまずはワンポイント解説に記載している概要で十分ですから理解しておくようにしましょう。
1.距離継電器
距離継電器は系統の電圧,電流を測定して事故点までの距離を測定し,事故点が保護区間内にある場合に動作する継電器です。
送電側の変電所に距離リレーを設置したときの例を図1に示します。
図1の\( \ \mathrm {F} \ \)点にて事故が発生したとすると,計器用変圧器\( \ \mathrm {VT} \ \)を介して変電所母線の電圧\( \ V \ \),変流器\( \ \mathrm {CT} \ \)を介して送電線の電流\( \ I \ \)を測定し,そのインピーダンス\( \ Z \ \)が\( \ \displaystyle \frac {V}{I} \ \)で求められます。距離継電器はこのインピーダンス\( \ Z \ \)の大きさにより変電所から事故点までの距離に応じ,保護範囲であれば動作します。
系統保護における主保護リレー又は後備保護リレーとして使用されています。
2.回線選択継電器
平行\( \ 2 \ \)回線の送電線において,両回線の変流器二次側を交差接続し,その差電流を測定することで事故回線を検出します。
事故発生時には,事故相側の電流値が健全相側の電流値より大きくなること,非電源側では事故相側の電流が反対方向となることを利用して事故回線を検出します。変電所母線の電圧\( \ \dot V \ \),各相に流れる電流を\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}1} \ \)及び\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}2} \ \)とすればそのインピーダンス\( \ \displaystyle \frac {\dot V}{{\dot I}_{\mathrm {a}1}-{\dot I}_{\mathrm {a}2}} \ \)を検出し,保護範囲内であれば動作します。
3.電流差動継電器
図3のように,送電線の入口側と出口側の電流の差を取り,送電線内の事故を検出します。
通常の送電中は\( \ {\dot I}_{\mathrm {a}}-{\dot I}_{\mathrm {b}} \ \)は零ですが,事故発生時には零でなくなり,整定値以上になったら動作します。事故区間を高速にかつ確実に選択遮断できる方式となっています。
各端子の電流値は\( \ \mathrm {PCM} \ \)変調(パルスコード変調)もしくは\( \ \mathrm {FM} \ \)変調(周波数変調)で信号伝送されますが,現在はディジタル化に伴い\( \ \mathrm {PCM} \ \)変調が主流となっています。
【解答】
(1)解答:ワ
題意より解答候補は,(ニ)過渡現象判別,(チ)電流変化判別,(ワ)区間判別,になると思います。
保護リレーにはもちろん電流値による判別が必要ですが,この中でも検出機能として最も重要なのは事故区間のみを遮断する区間判別となります。
(2)解答:カ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \ \),(ホ)\( \ \displaystyle {\dot V}_{\mathrm {a}} \ \),(ヘ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}-{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \),(ト)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \),(リ)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}} \ \),(ヌ)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}} \ \),(ル)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}} \ \),(ヨ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}-{\dot V}_{\mathrm {b}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「1.距離継電器」の通り,距離リレー方式では\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}} \ \)の演算式により短絡故障を検出します。
(3)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \ \),(ホ)\( \ \displaystyle {\dot V}_{\mathrm {a}} \ \),(ヘ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}-{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \),(ト)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \),(リ)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}} \ \),(ヌ)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}} \ \),(ル)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}} \ \),(ヨ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}-{\dot V}_{\mathrm {b}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.回線選択継電器」の通り,回線選択リレー方式では\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}-{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \)の演算式により短絡故障を検出します。
(4)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \ \),(ホ)\( \ \displaystyle {\dot V}_{\mathrm {a}} \ \),(ヘ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}-{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \),(ト)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}}} \ \),(リ)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}} \ \),(ヌ)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}} \ \),(ル)\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {a2}} \ \),(カ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}} \ \),(ヨ)\( \ \displaystyle \frac {{\dot V}_{\mathrm {a}}-{\dot V}_{\mathrm {b}}}{{\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}}} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「3.電流差動継電器」の通り,電流差動リレー方式では\( \ \displaystyle {\dot I}_{\mathrm {a1}}+{\dot I}_{\mathrm {b1}} \ \)の演算式により短絡故障を検出します。電流の向きに注意するようにしましょう。送電線のリレーでは問題図の方向を取ることが多いです。
(5)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)電流差動リレー,(ロ)距離リレー,(ヲ)回線選択リレー,になると思います。
ワンポイント解説「3.電流差動継電器」の通り,最も確実に区間判別を行えるのは電流差動リレー方式となります。