《電力》〈送電〉[H25:問4]電力系統の短絡容量に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,電力系統の短絡容量に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

電力系統の短絡容量は\( \ 3\times \fbox {  (1)  }\times \ \)三相短絡電流によって計算する。短絡容量は系統容量の増大に伴い大きくなり,また系統連系が密になるほど大きくなる。短絡容量が遮断器の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を上回ると,事故電流を遮断できず,機器の損壊や広範囲・長時間の停電を引き起こすおそれがある。このため,短絡容量抑制対策として,系統分割をせずに実施する対策(①,②)あるいは,系統分割する対策(③,④,⑤)が必要に応じて実施される。

① 発電機や変圧器などに高インピーダンス機器を採用する。

② 送電線に直列に\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を設置する。

③ 変電所の母線分離運用を行う。

④ 短絡電流を流さない\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を設置する。

⑤ 現在採用されているよりも上位の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を導入し,既存の系統を分割する。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 電圧階級       &(ロ)& 遮断容量 \\[ 5pt ] &(ハ)& 過負荷耐量       &(ニ)& 大容量機器 \\[ 5pt ] &(ホ)& 基準電圧(相電圧)       &(ヘ)& 絶縁変圧器 \\[ 5pt ] &(ト)& 直列コンデンサ       &(チ)& ヒューズ \\[ 5pt ] &(リ)& 熱容量       &(ヌ)& 限流リアクトル \\[ 5pt ] &(ル)& \mathrm {BTB} ( \mathrm {Back \ to \ Back} )       &(ヲ)& \mathrm {SVC} \\[ 5pt ] &(ワ)& 短絡事故後の相電圧       &(カ)& 基準電圧(線間電圧) \\[ 5pt ] &(ヨ)& 保護リレー \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

系統の短絡容量に関する問題です。本問では短絡容量抑制対策としてメリットのみが挙げられていますが,短絡容量を抑制することで系統の信頼度が低下する,コストがかかる等のデメリットがあります。二次試験対策としてはそこまで理解しておいた方が良いと思います。

1.電力系統の短絡容量抑制対策
①発電機や変圧器などに高インピーダンス機器を採用する
インピーダンスを大きくすることで,短絡電流を抑えることができますが,電圧変動率や安定度が低下する,負荷損が増加する等のデメリットがあります。

②送電線に直列に限流リアクトルを設置する
限流リアクトルを設置することで,短絡電流を抑えることができますが,無効電力損失の増加,安定度の低下等のデメリットがあります。

③変電所の母線分離運用を行う
母線分離運用を行うことで,並列回路数が少なくなり,系統のインピーダンスが増大しますが,安定度が低下します。

④短絡電流を流さない\( \ \mathrm {BTB} ( \mathrm {Back \ to \ Back} ) \ \)を設置する
同一構内に交直変換装置を設置する方法で,間に直流を挟むことにより交流系統を分割して短絡電流を抑えることができますが,安定度が低下し,設置コストがかかるデメリットがあります。

⑤現在採用されているよりも上位の電圧階級を導入し,既存の系統を分割する
電圧が高くなることで,電流を抑えることができ,安定度も向上しますが,コストが非常にかかります。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)基準電圧(相電圧),(ワ)短絡事故後の相電圧,(カ)基準電圧(線間電圧),等になると思います。短絡容量\( \ P_{\mathrm {s}} \ \)は系統電圧(線間電圧)\( \ V_{\mathrm {n}} \ \),三相短絡電流\( \ I_{\mathrm {s}} \ \)を用いて,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {s}}&=&\sqrt {3}V_{\mathrm {n}}I_{\mathrm {s}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められ,これが公式となります。本問では,係数が\( \ 3 \ \)となっているので,系統電圧(相電圧)\( \ \displaystyle E_{\mathrm {n}}=\frac {V_{\mathrm {n}}}{\sqrt {3}} \ \)を用いると,
\[
\begin{eqnarray}
P_{\mathrm {s}}&=&3E_{\mathrm {n}}I_{\mathrm {s}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

(2)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)遮断容量,(ハ)過負荷耐量,(リ)熱容量,になると思います。短絡容量が遮断容量を上回ると事故時の遮断ができなくなり,広範囲に影響を及ぼすことになります。

(3)解答:ヌ
題意より,解答候補は(ト)直列コンデンサ,(チ)ヒューズ,(ヌ)限流リアクトル,(ヲ)\(\mathrm {SVC}\),等になると思います。ワンポイント解説「1.電力系統の短絡容量抑制対策」の通り,限流リアクトルを設置することで短絡電流を抑制することができます。

(4)解答:ル
題意より,解答候補は(ニ)大容量機器,(ヘ)絶縁変圧器,(ル)\(\mathrm {BTB} ( \mathrm {Back \ to \ Back} )\) (ヲ)\(\mathrm {SVC}\),等になると思います。ワンポイント解説「11.電力系統の短絡容量抑制対策」の通り,\( \ \mathrm {BTB} ( \mathrm {Back \ to \ Back} ) \ \)を設置することで,短絡電流を抑えることができます。

(5)解答:イ
題意より,解答候補は(イ)電圧階級,(ニ)大容量機器,(ヘ)絶縁変圧器,等になると思います。ワンポイント解説「1.電力系統の短絡容量抑制対策」の通り,電圧階級を上げることで,短絡電流を抑えることができます。系統拡大等で導入されることが多い手法です。



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