《電力》〈火力〉[R05:問5]汽力発電におけるボイラの構成に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,火力発電所のボイラ設備に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

ドラムは,火炉水冷壁や蒸発管などで加熱された汽水混合物を導き,ここで蒸気と水を分離し,蒸気は過熱器へ,水は再度蒸発管に送るための設備である。そのため,汽水混合状態がない\( \ \fbox {  (1)  } \ \)ボイラでは用いられない。

過熱器は,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)に近いところに設けられ,主に放射伝熱により熱吸収する放射形と,主に燃焼ガスとの接触伝熱により熱吸収する対流形に分類される。

再熱器は,タービンで仕事をした蒸気を取り出し,再びボイラで\( \ \fbox {  (3)  } \ \)まで上げるための設備で,プラントの熱効率向上,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)によるタービン翼のエロージョン(侵食)防止などを目的として設置される。

節炭器は,ボイラの下流側に配置され,燃焼ガスの保有する熱を回収してボイラ水に与えるための装置で,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を減少してボイラの効率を高めることなどを目的として設置されている。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 火炉出口     &(ロ)& 過熱蒸気     &(ハ)& 湿り蒸気 \\[ 5pt ] &(ニ)& 過熱温度     &(ホ)& 自然循環     &(ヘ)& 飽和温度 \\[ 5pt ] &(ト)& 排ガス損失       &(チ)& 強制循環     &(リ)& 気化温度 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 抽気損失     &(ル)& 乾き蒸気     &(ヲ)& 火炉入口 \\[ 5pt ] &(ワ)& 絞り損失     &(カ)& 空気予熱器       &(ヨ)& 貫流 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

汽力発電所で使用されるボイラ設備に関する問題です。
汽力発電の細かな設備構成に関する問題は\( \ 3 \ \)種であると正答率が低いですが,\( \ 2 \ \)種だとかなり高くなります。
最初は覚えることが多いですが,一つずつ理解し,本番に臨むようにして下さい。

1.汽力発電所の概略フロー
一般的な汽力発電所の概略フローを図1に示します。ドラムボイラのメカニズムは以下の通りです。貫流ボイラの場合は蒸気ドラムの部分のフローがなくなります。

①復水器から出た水は復水ポンプで昇圧され,低圧給水加熱器でタービン抽気と熱交換し加熱されて脱気器に運ばれます。

②脱気器では給水中に含まれる溶存酸素を除去し,給水ポンプへ送られます。

③給水ポンプでさらに昇圧され,高圧給水加熱器でタービン抽気と熱交換し加熱されます。

④節炭器で燃焼ガスと熱交換し加熱され,蒸気ドラムに供給されます。

⑤蒸気ドラムで蒸気と水に分離され,水は降水管に,飽和蒸気は過熱器に送られます。

⑥降水管に降りてきた水は燃焼室で加熱され,再び蒸気ドラムに送られます。

⑦蒸気ドラムから出た飽和蒸気は過熱器でさらに加熱され過熱蒸気になり,蒸気中の水分がほぼない状態で高圧タービンに送られます。

⑧高圧タービンで仕事をした(タービンを回すエネルギーを使用した)蒸気は再熱器に送られ,再び過熱されます。これを再熱サイクルといい,熱効率向上とともに低圧タービン最下段を通過するときの蒸気の湿り度を下げ,タービン翼のエロ―ジョン(侵食)を防止することができます。

⑨再熱器から出た高温再熱蒸気は中低圧タービンへ送られ,中低圧タービンで仕事をし,復水器で復水に凝縮されます。

⑩復水での熱損失を減少させるため,タービン中段から抽気を取り出し,給水加熱器で給水を加熱します。これを再生サイクルといいます。

2.汽力発電所で用いられているボイラ
①自然循環ボイラ
 水と蒸気の比重差(水より蒸気が軽いので上に行く)を利用してボイラ水を循環させます。汽水ドラムで蒸気と水に分離されます。圧力が高くなると蒸気と水の比重差が小さくなるので,蒸気と水の比重差がなくなる臨界圧より低い圧力で採用されます。
②強制循環ボイラ
 ボイラの降水管に循環ポンプを設置して,ボイラ水を比重差のみでなくポンプの力も利用して循環させるボイラです。自然循環ボイラよりもボイラの高さを低くでき,管径も細くすることができます。その他の仕組みは自然循環ボイラと同じです。
③貫流ボイラ
 蒸気ドラムのような一旦ボイラ水を貯める場所がなく,給水から蒸発管,過熱器へと順次フローが進んでいくボイラです。超臨界圧での採用が可能となります。自然循環ボイラでは汽水ドラムのドレンとして不純物を排出することができますが,貫流ボイラでは蒸気ドラムがないため,給水の水質管理を厳格に行う必要があります。

【解答】

(1)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ホ)自然循環,(チ)強制循環,(ヨ)貫流,等になると思います。
ワンポイント解説「2.汽力発電所で用いられているボイラ」の通り,汽水混合状態がない貫流ボイラにはドラムがありません。

(2)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)火炉出口,(ヲ)火炉入口,になると思います。
ワンポイント解説「1.汽力発電所の概略フロー」の通り,過熱器は火炉出口に設けられる設備です。

(3)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)過熱温度,(ヘ)飽和温度,(リ)気化温度,になると思います。
ワンポイント解説「1.汽力発電所の概略フロー」の通り,再熱器ではできるだけ乾いた蒸気を中低圧タービンに送るため,飽和温度よりさらに高い過熱温度まで蒸気の温度を上昇させます。

(4)解答:ハ
題意より解答候補は,(ロ)過熱蒸気,(ハ)湿り蒸気,(ル)乾き蒸気,になると思います。
ワンポイント解説「1.汽力発電所の概略フロー」の通り,タービン翼のエロ―ジョンは湿り蒸気になると発生しやすくなります。

(5)解答:ト
題意より解答候補は,(ト)排ガス損失,(ヌ)抽気損失,(ワ)絞り損失,になると思います。
節炭器は燃焼ガスの保有する熱を回収するため,排ガス損失を低減させることができます。



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