《電力》〈水力〉[R06:問3]部分放電測定による変電機器の内部異常診断に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,ペルトン水車,カプラン水車,フランシス水車の効率に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

水車の設計にあたっては,その発電所における年間の河川流量を踏まえて,一般的に\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を最大とすることを目的として,ある出力で水車の最高効率が得られるように設計され,出力によって効率は変化する。

ペルトン水車では,出力に応じて\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の使用数を変化させることによって,出力による効率の変化が小さくなるようにしている。同様に,カプラン水車では\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の角度を変えることによって,幅広い出力範囲で高い効率が得られるようにしている。

一方,フランシス水車では,軽負荷では流量の減少によるランナ内の水流の乱れにより,定格負荷と比べて著しく低効率になる。また,フランシス水車では,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)場合には,ランナが扁平(へんぺい)になることから,クラウン部の\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が増加するなどにより水車効率が低下する傾向にある。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& ガイド軸受力     &(ロ)& 円板摩擦損失     &(ハ)& 定格出力 \\[ 5pt ] &(ニ)& ケーシング     &(ホ)& ランナベーン     &(ヘ)& 漏水損失 \\[ 5pt ] &(ト)& 同期速度が高い       &(チ)& 年間発電電力量       &(リ)& 比速度が小さい \\[ 5pt ] &(ヌ)& デフレクタ     &(ル)& 比速度が大きい     &(ヲ)& バケット \\[ 5pt ] &(ワ)& 定格回転速度     &(カ)& ステーベーン     &(ヨ)& ノズル \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

各種水車の効率の特性に関する問題です。
内容自体はかなり専門性が高いので,難問の部類になるかと思いますが,文章からある程度類推できる空欄もあるため,じっくりと読解すれば高得点も狙える問題ではないかと思います。
ぜひ本番でも落ち着いて,問題文を手掛かりに正答を見つけるようにしてみて下さい。

1.衝動水車
水のもつ位置エネルギーを運動エネルギーに変え,流水をランナに作用させる水車を衝動水車と言います。
代表的なものにペルトン水車があり,図1に示すように主にノズル,ニードル,ランナ等から構成され,ノズルから水を噴射し,ランナを回転させます。それぞれの役割は以下の通りです。

ノズル
ランナに向けて水を噴射します。横軸型では\( \ 1~2 \ \)個,立軸型ではさらに多くのノズルで構成されることがあります。出力に応じて使用数を変更することでニードルでの絞り損失を低減させ,効率の低下を抑えることが可能です。

ニードル
ノズルから噴射する水量を調整する弁です。

ランナ
水を受けるバケットとバケットを取り付けるディスクから構成され,噴射された水の勢いを回転力に変換します。

デフレクタ
水車の負荷が急激に減少しランナにあたる水量を減少させるときに,水圧管内圧力の異常上昇を防ぐために挿入してランナに当たる噴流をそらせます。

2.反動水車
水のもつ位置エネルギー(位置水頭)を圧力エネルギー(圧力水頭)に変換し,ランナに作用させる水車を反動水車と言います。
代表的なものにフランシス水車があり,入口にあるガイドベーンとランナの羽根の開度で出力を調整します。他にもランナを通過する流水の方向が斜めのものを斜流水車(ランナを可動羽根としたものをデリア水車),流水がランナの軸方向に通過するものをプロペラ水車(ランナを可動羽根としたものをカプラン水車)があります。高落差のものからフランシス水車→斜流水車→プロペラ水車となります。
フランシス水車はケーシング,ガイドベーン,ランナ,吸出し管等で構成され,それぞれの役割は以下の通りです。

ケーシング
渦巻形の管で水をガイドベーンに流し込むための管です

ガイドベーン
ケーシングとランナの間に設け,ランナに流入する水量を調整します。

ランナ
ケーシングから流入する水の圧力エネルギーを反動力により回転エネルギーにします。

吸出し管
ランナ出口部に設けるラッパ状の管で,ランナ出口から放水面までの速度エネルギーを位置エネルギーとして回収します。


出典:みんなが欲しかった!電験三種電力の実践問題集 P.7

【解答】

(1)解答:チ
題意より解答候補は,(ハ)定格出力,(チ)年間発電電力量,(ワ)定格回転速度,等になると思います。
いずれも水力発電所建設には重要な検討項目ですが,年間の河川流量を踏まえて検討するのは年間発電電力量の最大化となります。

(2)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ニ)ケーシング,(ホ)ランナベーン,(ヌ)デフレクタ,(ヲ)バケット,(カ)ステーベーン,(ヨ)ノズル,になると思います。
ワンポイント解説「1.衝動水車」の通り,ペルトン水車で出力に応じて使用数を変化させるのはノズルとなります。

(3)解答:ホ
題意より解答候補は,(ニ)ケーシング,(ホ)ランナベーン,(ヌ)デフレクタ,(ヲ)バケット,(カ)ステーベーン,(ヨ)ノズル,になると思います。
ワンポイント解説「2.反動水車」の通り,カプラン水車はランナの羽根の角度を調整できるので,ランナベーンとなります。

(4)解答:リ
題意より解答候補は,(ト)同期速度が高い,(リ)比速度が小さい,(ル)比速度が大きい,になると思います。
遠心力等設計条件により,一般にランナの形状が扁平(へんぺい)になるのは比速度が小さいときです。


出典:goo ブログ 流体機械設計による近未来に役立つエンジニアリング
URL:https://blog.goo.ne.jp/tbmamo/e/094e0434a2d3db5db7a8472940cf1ce7

(5)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)円板摩擦損失,(ヘ)漏水損失,等になると思います。
扁平な形状であることから,クラウン部の円板摩擦損失は一般に増加することになります。



記事下のシェアタイトル