《機械》〈電気化学〉[H28:問4] 一般的な燃料電池に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,燃料電池に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

燃料電池は,水素と酸素が化学反応して水を生成する過程で電気エネルギーを電気化学的に取り出す装置である。理論的には水素と酸素の反応の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)分が電気エネルギーに変換可能であり,熱機関とは違いカルノー効率の制約は受けない。

市販が開始された燃料電池自動車用には出力密度が大きい\( \ \fbox {  (2)  } \ \)燃料電池が用いられ,燃料には水素を用いる。水素は\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の触媒上で酸化されてプロトンとなる。

家庭用の燃料電池システムには\( \ \fbox {  (2)  } \ \)燃料電池のほかに,運転温度が高くて発電効率が高い\( \ \fbox {  (4)  } \ \)燃料電池の商用化も始まっている。この\( \ \fbox {  (4)  } \ \)燃料電池にはイットリウムで安定化した酸化ジルコニウムなどの\( \ \fbox {  (5)  } \ \)伝導性のセラミックスが使用されており,運転温度が高いため,触媒に貴金属を用いる必要はない。

〔問4の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 炭酸イオン     &(ロ)& 溶融炭酸塩形     &(ハ)& ギブスエネルギー \\[ 5pt ] &(ニ)& 酸化物イオン     &(ホ)& エントロピー     &(ヘ)& 直接メタノール形 \\[ 5pt ] &(ト)& アルカリ形     &(チ)& セパレータ     &(リ)& エンタルピー \\[ 5pt ] &(ヌ)& 固体高分子形     &(ル)& カソード ( 空気極 )      &(ヲ)& プロトン \\[ 5pt ] &(ワ)& 固体酸化物形     &(カ)& リン酸形     &(ヨ)& アノード ( 燃料極 )
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

参考書によっては掲載されているものもありますが,なかなか難しい問題と言えると思います。燃料電池の仕組みや主な燃料電池については理解しておいた方がよいと思います。

1.燃料電池の概念図
燃料電池は燃料極に燃料として水素,空気極に酸素を供給して,化学変化から電気エネルギーを取り出す方法で,正極と負極では以下の反応があります。
\[
\begin{eqnarray}
負極&:&\mathrm {H_{2} → 2H^{+} +2e^{-}} \\[ 5pt ] 正極&:&\mathrm {\frac {1}{2}O_{2} + 2H^{+} +2e^{-} →H_{2}O} \\[ 5pt ] 全体&:&\mathrm {H_{2}+\frac {1}{2}O_{2} →H_{2}O} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

2.代表的な燃料電池
①固体高分子形
 電解質:固体高分子
 温 度:80~100℃
 出 力:数百kW
 用 途:家庭用,自動車用

②リン酸形
 電解質:リン酸
 温 度:150~200℃
 出 力:数千kW
 用 途:産業用

③固体酸化物形
 電解質:酸化ジルコニウム
 温 度:900~1000℃
 出 力:数十万kW
 用 途:分散型電源

④溶融炭酸塩形
 電解質:炭酸塩
 温 度:600~700℃
 出 力:数十万kW
 用 途:分散型電源

【解答】

(1)解答:ハ
電気化学で使われる等温等圧変化による仕事をギブスエネルギーもしくは自由エネルギーと言います。

(2)解答:ヌ
自動車用に普及してきたのは固体高分子形燃料電池です。

(3)解答:ヨ
ワンポイント解説「1.燃料電池の概念図」図1の通り,水素は燃料極に供給されます。

(4)解答:ワ
家庭用の燃料電池では固体酸化物形燃料電池の実用化が進んでいます。

(5)解答:ニ
固体酸化物形燃料電池はワンポイント解説「2.代表的な燃料電池」の通り温度が高く,酸化物イオンが移動し反応する構造となっています。



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