《機械》〈電熱〉[R03:問7]抵抗加熱における熱の伝わり方に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,電気加熱に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

電気エネルギーを熱として利用し,対象物の温度を上昇させることを電気加熱と呼ぶ。電気加熱のうち最も広く使われているのが抵抗加熱である。抵抗加熱は抵抗体に電流を流すことにより生じる\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を利用する。このとき,抵抗体が達する温度は\( \ \fbox {  (1)  } \ \)により生じる熱と抵抗体から放散する熱が等しくなる温度である。この状態を\( \ \fbox {  (2)  } \ \)という。

このうち間接抵抗加熱は,熱源となる抵抗体から伝熱によって被加熱物に熱を伝えるので,被加熱物の材質にかかわらず加熱することができる。伝熱とは熱の移動をさし,次の\( \ 3 \ \)とおりの,\( \ \fbox {  (3)  } \ \),\( \ \fbox {  (4)  } \ \),\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の形態がある。

\( \ \fbox {  (3)  } \ \)とは物質内で熱のみが移動することをいう。

\( \ \fbox {  (4)  } \ \)とは固体と液体の間の熱の移動や,流体の移動などの物理現象をともなった熱の移動を表す。

\( \ \fbox {  (5)  } \ \)では,熱源から電磁波としてエネルギーが放出され対象物に吸収されて熱が移動する。熱源の表面から放出されるエネルギーは,物質の温度の\( \ 4 \ \)乗にほぼ比例する。

〔問7の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 紫外線     &(ロ)& 潜熱     &(ハ)& 放射伝熱 \\[ 5pt ] &(ニ)& 蒸発熱移動       &(ホ)& 抜熱     &(ヘ)& 熱平衡 \\[ 5pt ] &(ト)& 貫入熱     &(チ)& 放熱     &(リ)& 発光伝熱 \\[ 5pt ] &(ヌ)& ジュール熱     &(ル)& 顕熱     &(ヲ)& 対流熱伝達 \\[ 5pt ] &(ワ)& 熱伝導     &(カ)& 熱通達       &(ヨ)& 熱流束 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

電気加熱の熱の伝わり方に関する問題です。
計算問題として出題される可能性のある分野ですが,本問は知識を問う問題となっているため\( \ 2 \ \)種レベルだと多くの受験生が解いてくると思われます。

1.抵抗加熱
抵抗に発生するジュール熱を利用し,熱伝導,熱対流(伝達),熱放射によって物体を加熱します。加熱したい物質に直接電流を流す方法を直接抵抗加熱,ニクロムや炭化ケイ素等に通電し,その熱により被加熱物を加熱するものを間接抵抗加熱と言います。

2.熱の伝わり方
間接抵抗加熱による熱の伝わり方には熱伝導,熱対流(対流熱伝達),熱放射(放射伝熱)があります。
熱伝導は図2に示すように物質内を高温部から低温部に熱が移動する熱の伝わり方です。
熱対流(対流熱伝達)は図3のように,水などの液体が移動することにより熱が移動する伝わり方です。
熱放射(放射伝熱)は図4のように,熱源から電磁波としてエネルギーが放出されて熱が移動する伝わり方です。
熱伝導と熱対流は熱力学のオームの法則,熱放射はステファン・ボルツマンの法則が成立します。



3.熱力学におけるオームの法則
物体の温度差を\( \ \theta \ \mathrm {[K]} \ \),熱抵抗を\( \ R \ \mathrm {[K / W]} \ \)とすると,物体の熱流\( \ I \ \mathrm {[W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
I &=& \frac {\theta }{R} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

4.物体の熱抵抗\( \ R \ \mathrm {[K / W]} \ \)
①熱伝導における熱抵抗
物体の熱伝導率が\( \ \lambda \ \mathrm {[W / (m\cdot K )]} \ \),断面積が\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),長さが\( \ l \ \mathrm {[m]} \ \)であるとき,物体の熱抵抗\( \ R \ \mathrm {[K / W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
R &=& \frac {l}{\lambda S} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。
②熱対流における熱抵抗
物体の熱伝達率が\( \ h \ \mathrm {[W / (m^{2}\cdot K )]} \ \),物体の表面積が\( \ S \ \mathrm {[m^{2}]} \ \)であるとき,物体の表面熱抵抗\( \ R \ \mathrm {[K / W]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
R &=& \frac {1}{h S} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。

5.ステファン・ボルツマンの法則
図4のように,面積\( \ A_{1} \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),温度\( \ T_{1} \ \mathrm {[K]} \ \)の高温面と,面積\( \ A_{2} \ \mathrm {[m^{2}]} \ \),温度\( \ T_{2} \ \mathrm {[K]} \ \)の低温面があるとき,\( \ 1 \ \)秒当たりに高温面から低温面に伝わるエネルギー\( \ \mathit {\Phi } \ \mathrm {[W]} \ \)は,\( \ \varepsilon \ \)を放射率,\( \ \sigma \ \mathrm {[W / \left( m^{2}\cdot K^{4}\right) ]} \ \)をステファン・ボルツマン定数,\( \ F_{12} \ \)を形態係数とすると,
\[
\begin{eqnarray}
\mathit {\Phi } &=& \varepsilon \sigma A_{1}F_{12}\left( T_{1}^{4}-T_{2}^{4}\right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求められます。

【解答】

(1)解答:ヌ
抵抗\( \ R \ \)の抵抗体に電流\( \ I \ \)を時間\( \ t \ \)流すことにより発生する熱量\( \ Q \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
Q &=& RI^{2}t \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] で求めることができ,これをジュール熱といいます。

(2)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ヘ)熱平衡のみになると思います。
抵抗体から生じる熱と抵抗体から放散する熱が等しくなり,抵抗の温度が一定となる状態を熱平衡状態といいます。

(3)解答:ワ
題意より,解答候補は(ハ)放射伝熱,(ヲ)対流熱伝達,(ワ)熱伝導,等になると思います。
ワンポイント解説「2.熱の伝わり方」の通り,物質内で熱のみが移動することを熱伝導といいます。

(4)解答:ヲ
題意より,解答候補は(ハ)放射伝熱,(ヲ)対流熱伝達,(ワ)熱伝導,等になると思います。
ワンポイント解説「2.熱の伝わり方」の通り,固体と液体の間の熱の移動や流体の移動などの物理現象をともなった熱の移動を対流熱伝達といいます。

(5)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)放射伝熱,(ヲ)対流熱伝達,(ワ)熱伝導,等になると思います。
ワンポイント解説「2.熱の伝わり方」の通り,熱源から電磁波としてエネルギーが放出され対象物に吸収されて熱が移動する現象を放射伝熱といいます。



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