【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
変電所の母線方式及び母線保護リレーについて,次の問に答えよ。
(1) 変電所の母線方式を選定する上で一般的に考慮すべき事項を三つ挙げよ。
(2) 複母線方式のうち,二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式は様々な電圧階級で採用されている。送電線\( \ 4 \ \)回線(平行\( \ 2 \ \)回線\( \ 2 \ \)ルート),変圧器\( \ 2 \ \)台の場合の二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式の単線結線図を描け。なお,各シンボルは以下の凡例及び記載例に従うものとし,変圧器二次側及び三次側の単線結線図は省略すること。

(3) 小問(1)で挙げた考慮すべき事項について,単母線方式と比較した場合の二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式の特徴を,それぞれ\( \ 50 \ \)字程度で具体的に述べよ。
(4) 複母線方式において,系統の運用状態に応じて母線保護リレーが故障母線を正しく選択遮断するためには,計器用変圧器\( \ \left( \mathrm {VT} \right) \ \)及び計器用変流器\( \ \left( \mathrm {CT} \right) \ \)からの電圧・電流入力に加えて,ある条件(入力要素)が必要となる。母線保護リレーが当該条件を用いてどのように故障母線を正しく選択遮断しているか,\( \ 100 \ \)字程度で具体的に述べよ。なお,計器用変流器\( \ \left( \mathrm {CT} \right) \ \)の設置位置に起因する保護上の盲点は存在せず,かつ全ての遮断器は正常に動作するものとする。
【ワンポイント解説】
変電所の母線方式に関する問題です。
平成19年問2に類題が出題されていましたので,過去問を研究された方は比較的高得点が狙えた問題であるかと思います。
一度しっかりと理解すると忘れにくい内容ですので,ここでしっかりと理解するようにして下さい。
1.変電所の母線方式
代表的な変電所の母線方式として単母線方式,二重母線方式,\( \ \displaystyle 1 \ \frac {1}{2} \ \mathrm {CB} \ \)方式があります。
①単母線方式
図1に示すような方式で,以下のような特徴があります。
・所要機器が少なくなるため,省スペース・省コストとなり経済的である。
・母線事故時には接続されている変圧器や送電線も停電するため供給信頼度は低い。
・母線側の断路器の点検時等に全停電となる場合があるため保守性に劣る。

②二重母線方式
図2に示す二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式や図3に示す二重母線\( \ 4 \ \)ブスタイ方式等があり,以下のような特徴があります。(ブスタイとは母線\( \ \left( \mathrm {bus} \right) \ \)を結ぶ\( \ \left( \mathrm {tie} \right) \ \)という意味です。)
・母線事故時,二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式では\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \),二重母線\( \ 4 \ \)ブスタイ方式では\( \ \displaystyle \frac {1}{4} \ \)の範囲が停電となるが,送電線及び変圧器を健全母線へ切替することで迅速な復旧が可能のため,供給信頼度が高い。
・電源立地等の系統構成の変更に対し,二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイから段階的に二重母線\( \ 4 \ \)ブスタイ方式への移行ができる。
・遮断器点検時には,片母線を作業停止することで送電線及び変圧器を停止させずに点検可能で保守性に優れる。
・単母線方式に比べ,遮断器や断路器等の機器が増え,保護回路も複雑となり,変電所スペースも大きくなるため,経済性に劣る。
③\( \ \displaystyle 1 \ \frac {1}{2} \ \mathrm {CB} \ \)方式
図4に示すような方式で,以下のような特徴があります。
・母線事故時に送電線や変圧器の停止がなく,供給信頼度が高い。
・遮断器点検時に送電線及び変圧器を停止させずに点検可能で保守性に優れる。
・系統を分割して運用する場合,二重母線方式より系統構成の柔軟性に劣る。
・\( \ 1 \ \)回線あたりの遮断器や断路器等の機器が二重母線以上に多くなる。

【解答】
(1)変電所の結線方式を決定する際に考慮すべきことを三つ
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電所の母線方式」の通りです。
・個人的には比較として記述しやすいのが供給信頼度,保守性,経済性なので,これらを記載することをおすすめします。
(試験センター解答)
以下の事項から三つ記載されていればよい。
① 供給信頼度
② 系統運用の柔軟性
③ 保守性・安全性
④ 経済性
(2)送電線\( \ 4 \ \)回線,変圧器\( \ 2 \ \)台の場合の二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式の単線結線図
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電所の母線方式」の通りです。
・送電線\( \ 4 \ \)回線,変圧器\( \ 2 \ \)台の記載を忘れないように注意しましょう。
(試験センター解答)
二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式の単線結線図は以下のとおり。

(3)単母線方式と比較した場合の二重母線\( \ 1 \ \)ブスタイ方式の特徴
(ポイント)
・ワンポイント解説「1.変電所の母線方式」の通りです。
・(1)で記載した項目と合わせる必要があります。
(試験センター解答)
以下の事項から三つ記載されていればよい。
①供給信頼度
母線事故時,送電線及び変圧器を健全母線へ切替することで迅速な復旧が可能のため,供給信頼度が高い。
②系統運用の柔軟性
甲母線と乙母線を分割した異系統運用が可能のため,系統運用の柔軟性に優れる。
③保守性・安全性
送電線及び変圧器を停止させずに片母線を作業停止可能のため,保守性に優れ,作業安全の確保が容易である。
④経済性
変電所用地及び設備(遮断器,断路器など)が増加するため,コストが増加する。
(4)母線保護リレーが当該条件を用いてどのように故障母線を正しく選択遮断しているか
(ポイント)
・図5に示すように,二重母線方式においては送電線や変圧器を母線を分けて運用する方法が取られますが,母線事故時には接続されている送電線や遮断器側の遮断器のみを動作させたいため,断路器の開閉状態を動作条件とする運用がなされます。

(試験センター解答)
複母線方式で採用される母線保護リレーには,送電線及び変圧器回線の母線側断路器の開閉条件が取り込まれており,例えば甲母線が故障した場合には,甲母線に接続されている遮断器に対してのみ遮断指令が出力される。