《電力》〈変電〉[H20:問5]遮断器の遮断性能と操作方式に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,遮断器の遮断性能と操作方式に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句を記述用紙の解答欄に記入しなさい。

変電所の構内など遮断器近傍で発生した地絡及び短絡故障電流を遮断する性能を,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)遮断性能という。変電所に近い距離の架空送電線で発生した故障電流を遮断する性能を,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)遮断性能という。また,遮断器は,故障点をはさむ両系統が同期状態をはずれ,両系統の電圧ベクトルが最大\( \ 180 \ \)度の位相差を生じた状態で,遮断できる性能を持つことが必要である。この遮断性能を\( \ \fbox {  (3)  } \ \)遮断性能という。

ガス遮断器用の操作方式は,現在,次の\( \ 2 \ \)方式が主に採用されている。\( \ \fbox {  (4)  } \ \)操作方式は,動作応答性に優れ,高速・大出力の駆動に適しており,定格電圧\( \ 300 \ \mathrm {[kV]} \ \)以上の遮断器に主に適用されている。また,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)操作方式は,定格電圧\( \ 168 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の遮断器に主に適用されており,電動機により\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を圧縮したり,あるいはねじったりして蓄勢したエネルギーを利用している。

【ワンポイント解説】

遮断器に求められる遮断性能とガス遮断器用の操作方式に関する問題です。
遮断性能は電験\( \ 1 \ \)種の過去問で何度か出題されていることから解ける方もいるかもしれませんが,遮断器の操作方式に関してはあまり電験では出題されなかった内容なので,設備を扱っている方が有利な問題であったかと思います。

1.遮断器に求められる遮断性能
遮断器には通常状態の電路の開閉に加え,系統に発生した事故による異常状態の電路を開閉する責務があり,以下示すような遮断条件等を考慮し設計されます。

①端子短絡故障遮断\( \ \left( \mathrm {BTF:Breaker \ Terminal \ Fault}\right) \ \)
 遮断器の端子もしくはその近傍で短絡及び地絡事故が発生した場合の遮断を言い,多くの電源から流れ出た電流が集まる点での遮断となるため,故障電流が大きいという特徴があります。電流値が零点で遮断した後,遮断器の極間に発生する電圧を過渡回復電圧と言い,これにより位相\( \ 90° \ \)以内に極間にアークが発生してしまう(再発弧)と遮断失敗となります。


出典:電気工学ハンドブック(第7版) 一般社団法人電気学会 オーム社 P.881

②近距離線路故障遮断\( \ \left( \mathrm {SLF:Short \ Line \ Fault}\right) \ \)
 遮断器から数\( \ \mathrm {km} \ \)線路上での短絡が発生した場合の遮断であり,短絡電流は端子短絡遮断故障よりも小さいですが,遮断器と故障点の間の進行波の往復反射により高い電圧が発生するため極間の電圧が大きくなります。


出典:電気工学ハンドブック(第7版) 一般社団法人電気学会 オーム社 P.882

③進み小電流遮断
 無負荷の送電線,もしくは系統が容量性の負荷を持っている場合の遮断です。系統遮断後電源側の電圧が\( \ 1/4 \ \)サイクル後逆の極性に変化することにより,極間の電圧が大きくなります。


出典:電気工学ハンドブック(第7版) 一般社団法人電気学会 オーム社 P.882

④遅れ小電流遮断
 誘導性負荷が接続されている状態で電路が遮断する時の遮断です。電流裁断により,電流が零になる前に遮断した際,その電流変化により,リアクトル負荷のエネルギーが放出され,遮断器の極間の電圧が大きくなります。

⑤脱調遮断
 故障点を挟み両系統が同期していない状態(脱調状態)の時の遮断です。両系統の電圧が\( \ 180° \ \)の位相差を生じた状態が遮断器の極間の電圧が最も大きい状態となります。

2.ガス遮断器の操作方式
ガス遮断器の操作方式には油圧操作方式,ばね操作方式,空気操作方式等があります。

①油圧操作方式
 油圧を利用して遮断器を操作する方式で,小形で高速・大出力の駆動に適しており,操作音も小さいという特徴があります。

②ばね操作方式
 蓄勢したばねの力を利用して遮断器を操作する方式で,小形・軽量で保守点検も容易であるため,電圧階級の低い遮断器に広く採用されています。

③空気操作方式
 圧縮空気を利用して遮断器を操作する方式で,騒音やコンプレッサの保守の問題もあることから,近年の採用はほとんどない方式です。

【解答】

(1)解答:端子短絡故障\( \ \left( \mathrm {BTF}\right) \ \)
ワンポイント解説「1.遮断器に求められる遮断性能」の通り,変電所の構内など遮断器近傍で発生した地絡及び短絡故障電流を遮断する性能を端子短絡故障\( \ \left( \mathrm {BTF}\right) \ \)遮断性能といいます。

(2)解答:近距離線路故障\( \ \left( \mathrm {SLF}\right) \ \)
ワンポイント解説「1.遮断器に求められる遮断性能」の通り,変電所に近い距離の架空送電線で発生した故障電流を遮断する性能を近距離線路故障\( \ \left( \mathrm {SLF}\right) \ \)遮断性能といいます。

(3)解答:脱調
ワンポイント解説「1.遮断器に求められる遮断性能」の通り,故障点をはさむ両系統が同期状態をはずれ,両系統の電圧ベクトルが最大\( \ 180 \ \)度の位相差を生じた状態で,遮断できる性能を脱調遮断性能といいます。

(4)解答:油圧
ワンポイント解説「2.ガス遮断器の操作方式」の通り,動作応答性に優れ,高速・大出力の駆動に適しており,電圧階級の高い遮断器に主に適用されているのは油圧操作方式となります。

(5)解答:ばね
ワンポイント解説「2.ガス遮断器の操作方式」の通り,電動機により圧縮したり,あるいはねじったりして蓄勢したエネルギーを利用しているのはばね操作方式となります。



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