《電力》〈変電〉[H23:問6] 変圧器の直流偏磁に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,変圧器の直流偏磁に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

変圧器の鉄心は,非常に磁化特性に優れた電磁鋼板(けい素鋼板)で構成されており,また,磁気回路も磁気抵抗が\( \ \fbox {  (1)  } \ \)なるような接合で構成されている。したがって,鉄心は直流偏磁の影響を非常に受けやすく,結果的に振動・騒音の増加,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の増大などを引き起こす。
直流偏磁が発生する要因としては,次のようなものがある。

①交直変換装置の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)のばらつきなどによって発生する電流の正負のふぞろい分が直流成分となり,これが直接接続される変換用変圧器の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)として供給される場合。

②地磁気誘導電流の直流成分が,直接接地系の系統において\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を介して電力用変圧器に流れ込む場合。

このような直流偏磁の防止策として,一般的には変圧器の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)側に\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を接続することなどで影響を抑制できる場合もあるが,系統条件との整合が必要である。
加えて,直流偏磁の影響を受けやすい\( \ \fbox {  (6)  } \ \)変圧器では,直流偏磁を検出して抑制制御する手段が採られ,直流偏磁の検出を容易にし,各変圧器の交流電圧の分担を均一にするため,鉄心に\( \ \fbox {  (7)  } \ \)を設けて線形励磁特性としている。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& サージアブソーバ       &(ロ)& 緩衝帯   &(ハ)& 小さく \\[ 5pt ] &(ニ)& 中性点   &(ホ)& 大きく   &(ヘ)& 小さな値の抵抗 \\[ 5pt ] &(ト)& トリガ(点弧)角   &(チ)& 三次巻線   &(リ)& ギャップ \\[ 5pt ] &(ヌ)& 零相電流   &(ル)& 自励式変換用      &(ヲ)& 透磁率 \\[ 5pt ] &(ワ)& 励磁電流   &(カ)& 放電ギャップ   &(ヨ)& 他励式変換用 \\[ 5pt ] &(タ)& バイパス   &(レ)& リプル電流   &(ソ)& 安定巻線 \\[ 5pt ] &(ツ)& 接地抵抗差
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

 やや難しめの空欄もありますが,直流偏磁をあまり知らなくても各解答の選択肢が絞れ,ある程度消去法による解答が可能なため,難易度は普通としています。
直流偏磁の定性的な説明は論文等に掲載されていますが,電験対策としては正負の電圧のアンバランスにより,直流分(正確に言うと準直流分)が発生し,鉄心の極性が偏るのが直流偏磁であるという程度の理解で大丈夫と思います。

【用語の解説】

(イ)サージアブソーバ
 避雷器と保護コンデンサを並列に接続したもので,遮断器の開閉サージや雷サージによる機器の損傷を防ぐものです。保護コンデンサは避雷器で応答が間に合わない急峻な異常電圧の波頭峻度を緩和させる役割があります。

(ロ)緩衝帯
 電気的な意味はあまりないと思いますが,おそらく(5)の誤答を誘う解答だと思います。

(ニ)中性点
 変圧器の\( \ \mathrm {Y} \ \)結線の三相の接続点。各中性点接地方式の特徴は理解しておきましょう。

(チ)三次巻線,(ソ)安定巻線
 \( \ \mathrm {Y}-\mathrm {Y}-\mathrm {\Delta } \ \)結線の三次\( \ \mathrm {\Delta } \ \)巻線のことで,\( \ \mathrm {\Delta } \ \)巻線に第\( \ 3 \ \)調波励磁成分を還流させることができます。

(リ)ギャップ
 変圧器においては鉄心の空隙のことです。ギャップを設けることで直流偏磁を検出することができますが,磁気抵抗は大きくなります。

(ヌ)零相電流
 対称座標法における三相の同相電流成分。故障計算時に利用され,一種二次試験では必須の内容です。

(ル)自励式変換用,(ヨ)他励式変換用
 自分の電力で励磁するものが自励式,他の電力を使用して励磁するものが他励式です。電圧のアンバランスが発生した際に自励式の方が励磁電流への影響が発生するため,直流偏磁の影響が受けやすくなります。

(ヲ)透磁率
 持続密度\( \ B \ \)を磁界の強さ\( \ H \ \)で割ったものです。本問には関係ありませんが,(2)の解答の誤答候補と思います。

(ワ)励磁電流
 変圧器には負荷電流の他に励磁電流があります。通常励磁電流は負荷電流より著しく小さいため,鉄損を求める時以外等価回路では省略することが多いです。直流偏磁が発生していると励磁電流は増大します。

(カ)放電ギャップ
 火花放電をさせるためにギャップを設けるため、そのことを言っていると思います。

(レ)リプル電流
 リプル(ripple)電流は変動する電流のことです。コンデンサではリプル電流で発熱するため,許容値を定めています。

(ツ)接地抵抗差
 接地抵抗は大地との抵抗のことをいいます。この問題では(7)の誤答を誘うためと思われます。

【解答】

(1)解答:ハ
 題意より,解答候補は(ハ)小さく,(ホ)大きく,になると思います。
 変圧器では磁気抵抗を小さくし,抵抗損を低減させています。

(2)解答:ワ
 題意より,解答候補は,(ヌ)零相電流,(ヲ)透磁率,(ワ)励磁電流,(レ)リプル電流,となると思います。
 直流偏磁の影響を受けると励磁電流が増大するので励磁電流となります。

(3)解答:ト
 交直変換装置に関する解答候補は(ト)トリガ(点弧)角のみとなります。
 トリガ角がばらつくと電流のふぞろい分が直流成分となります。

(4)解答:ニ
 題意より,解答候補(ニ)中性点のみになるかと思います。
 直接接地系の系統においては誘導電流の直流成分が中性点を介して電力用変圧器に流れ込みやすくなります。

(5)解答:ヘ
 題意より,解答候補は(イ)サージアブソーバ,(ロ)緩衝帯,(ヘ)小さな値の抵抗,(チ)三次巻線,(ソ)安定巻線,となると思います。
 直接接地に抵抗を接続してしまうと直接接地のメリットを排除してしまう気もしますが,他の解答候補は明らかに異なるので(ヘ)小さな値の抵抗が最も適切になると思います。

(6)解答:ル
 題意より,解答候補は(ル)自励式変換用,(ヨ)他励式変換用,となると思います。
 直流偏磁の影響を受けやすいのは自励式変換用変圧器です。

(7)解答:リ
 題意より,解答候補は(イ)サージアブソーバ,(リ)ギャップ,(カ)放電ギャップ,(タ)バイパス,(ツ)接地抵抗差,となると思います。
 直流偏磁の検出を容易にするためには鉄心にギャップを設けることがあります。



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