《電力》〈原子力〉[H19:問1]軽水炉の構造と原子炉圧力制御方法に関する空欄穴埋問題

1 【問題】
2 【ワンポイント解説】
3 【解答】

【問題】

【難易度】★★★☆☆（普通）

次の文章は，わが国の代表的な発電用軽水炉の原子炉圧力制御方法に関する記述である。文中の$ \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ $に当てはまる語句又は数値を解答群の中から選び，その記号をマークシートに記入しなさい。

加圧水型軽水炉$ \ \left( \mathrm {PWR}\right) \ $の原子炉出口一次冷却材温度は約$ \ 320 \ \mathrm {[{}^{\circ}C]} \ $であり，一次冷却材が沸騰しないよう常に約$ \ \fbox {　（１）　} \ \mathrm {[MPa]} \ $の圧力に制御するため，$ \ \fbox {　（２）　} \ $が設けられている。例えば，平常運転中に圧力が若干低下した場合には，$ \ \fbox {　（２）　} \ $内部に設けられた$ \ \fbox {　（３）　} \ $を使って蒸気量を増やし，圧力を上げる。

沸騰水型軽水炉$ \ \left( \mathrm {BWR}\right) \ $の原子炉出口蒸気圧力は約$ \ \fbox {　（４）　} \ \mathrm {[MPa]} \ $，同温度は約$ \ 285 \ \mathrm {[{}^{\circ}C]} \ $であり，平常運転中は原子炉圧力が一定となるよう制御される。例えば，平常運転中に原子炉圧力が若干変動した場合には，自動的に原子炉再循環ポンプの流量や$ \ \fbox {　（５）　} \ $の開度を調整して圧力を設定値まで引き戻す。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&（イ）&　26　　　　　&（ロ）&　16　　　　　&（ハ）&　ヒータ \\[ 5pt ] &（ニ）&　蒸気発生器　　　　　&（ホ）&　加圧器　　　　　&（ヘ）&　20 \\[ 5pt ] &（ト）&　7　　　　　&（チ）&　気水分離器　　　　　&（リ）&　制御棒 \\[ 5pt ] &（ヌ）&　11　　　　　&（ル）&　安全弁　　　　　　&（ヲ）&　主蒸気加減弁 \\[ 5pt ] &（ワ）&　タービンバイパス弁　　　　　　　　&（カ）&　冷却材ポンプ　　　　　　　&（ヨ）&　4 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

軽水炉の構造と原子炉圧力制御方法に関する問題です。
$ \ 2 \ $種や$ \ 3 \ $種で学習した内容を少しだけ深堀りしたような内容が問われています。
安全弁，主蒸気加減弁，タービンバイパス弁は汽力発電でも同じような目的で使用されますので，ここで覚えておきましょう。　

1.原子炉（軽水炉）の型式
①沸騰水型$ \ \left( \mathrm {BWR}\right) \ $
蒸気発生器を持たないので，放射性物質がタービンに直接持ち込まれるのが大きな特徴で，他には以下の特徴があります。
・炉心圧力が低く（約$ \ 6.9 \ \mathrm {MPa},285 \ \mathrm {{}^{\circ}C} \ $）蒸気発生器や加圧器がないので，構造が加圧水型$ \ \left( \mathrm {PWR}\right) \ $と比較して簡単。
・再循環ポンプを持ち，ポンプでの流量によって出力を調整する。炉心流量が増えるとボイドが減少し，中性子の減速効果が高くなるので，反応は促進する。
・制御棒でも出力を調整するが，汽水分離器があるので，下から上に向かって挿入される。
・何らかの原因で出力が上昇すると気泡が発生し，反応が抑制されるため，自動で出力が抑制される。

出典：電験戦士教本「原子力・その他発電」　P.46
ＵＲＬ：https://denkenia-archives.stores.jp/

②加圧水型$ \ \left( \mathrm {PWR}\right) \ $
蒸気発生器で蒸気を発生させるので，通常運転時放射性物質がタービンに持ち込まれないという特徴があり，他にも以下のような特徴があります。
・タービン系統に放射性物質が持ち込まれないので，タービンや復水器のメンテナンス時に放射能対策が不要。
・加圧器を持ち，原子炉内の圧力が高い（約$ \ 15.7 \ \mathrm {MPa},320 \ \mathrm {{}^{\circ}C} \ $）。圧力を上げることで軽水の沸点が上がるので，沸騰しない。
・ホウ素濃度で出力調整を行う。ホウ素には中性子を吸収する性質があるのでホウ素濃度を増すと反応は減少する。
・制御棒の抜き差しでも出力調整するが，上から下に向かって挿入されるため，安全性に有利である。
・蒸気発生器等の過程を経る分，若干熱効率は劣る。

出典：電験戦士教本「原子力・その他発電」　P.48
ＵＲＬ：https://denkenia-archives.stores.jp/

【解答】

(1)解答：ロ
題意より解答候補は，（イ）$ \ 26 \ $，（ロ）$ \ 16 \ $，（ヘ）$ \ 20 \ $，（ト）$ \ 7 \ $，（ヌ）$ \ 11 \ $，（ヨ）$ \ 4 \ $，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，加圧水型軽水炉$ \ \left( \mathrm {PWR}\right) \ $の原子炉出口一次冷却材圧力は約$ \ 16 \ \mathrm {[MPa]} \ $となります。

(2)解答：ホ
題意より解答候補は，（ニ）蒸気発生器，（ホ）加圧器，（チ）気水分離器，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，加圧水型軽水炉$ \ \left( \mathrm {PWR}\right) \ $の圧力に制御するために設けられているのは加圧器となります。

(3)解答：ハ
題意より解答候補は，（ハ）ヒータ，（リ）制御棒，（カ）冷却材ポンプ，になると思います。
加圧水型軽水炉$ \ \left( \mathrm {PWR}\right) \ $において，平常運転中に圧力が若干低下した場合に，蒸気量を増やし圧力を上げる目的で，加圧器内に設けられているのはヒータとなります。本空欄は少し専門性が高いですが，消去法で正答が導き出せると良いでしょう。

(4)解答：ト
題意より解答候補は，（イ）$ \ 26 \ $，（ロ）$ \ 16 \ $，（ヘ）$ \ 20 \ $，（ト）$ \ 7 \ $，（ヌ）$ \ 11 \ $，（ヨ）$ \ 4 \ $，になると思います。
ワンポイント解説「1.原子炉（軽水炉）の型式」の通り，沸騰水型軽水炉$ \ \left( \mathrm {BWR}\right) \ $の原子炉出口蒸気圧力は約$ \ 7 \ \mathrm {[MPa]} \ $となります。

(5)解答：ヲ
題意より解答候補は，（ル）安全弁，（ヲ）主蒸気加減弁，（ワ）タービンバイパス弁，になると思います。
このうち通常運転時の圧力変動において開度を調整するのは主蒸気加減弁となります。安全弁は蒸気圧力が異常上昇した場合に逃がす弁，タービンバイパス弁は起動時や異常発生時等にタービンをバイパスし復水器に流す弁です。