《電力》〈送電〉[H19:問6]直列コンデンサによる送電能力の向上に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

次の文章は,直列コンデンサによる送電能力の向上に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる語句を記述用紙の解答欄に記入しなさい。

送電線路において直列コンデンサを設置すると,線路の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を減少させ,等価的に線路長を減少させる効果を持つ。このため,長距離送電線に設置すると効果が大きい。しかし,線路の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を減少させることは短絡・地絡事故が発生したときの\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の増大につながるため,遮断器容量の問題や直列コンデンサ端子間に\( \ \fbox {  (3)  } \ \)が発生する問題が生じる。\( \ \fbox {  (3)  } \ \)については,端子間に放電ギャップや酸化亜鉛素子を設置し,保護する。直列コンデンサ設置送電線の負荷側で変圧器を並列した場合には,変圧器鉄心の飽和現象により\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が発生する場合がある。また,同期機の負制動現象による安定性問題として\( \ \fbox {  (5)  } \ \)があるが,この現象は補償度を上げるほど増加する傾向があるので,補償度の上限を決定する要因となる。

【ワンポイント解説】

直列コンデンサによる送電能力の向上に関する問題です。
受験生のレベルを考慮すると,全く知識がない受験生はほとんどいないと想定されますが,解答群がないため空欄をすべて埋めることも難しいかなという印象です。二次試験を見据え解答群なしでも\( \ 3\sim 4 \ \)個程度は正答できるようにしましょう。

1.直列コンデンサを挿入する利点
①電圧変動(電圧降下)の改善
三相の送電線の電圧降下\( \ \varepsilon \ \mathrm {[V]} \ \)は近似式として,
\[
\begin{eqnarray}
\varepsilon &≃&\sqrt {3}I\left( R\cos \theta +X\sin \theta \right) \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となりますが,直列コンデンサを挿入することで\( \ X \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)の値を小さくすることができ,電圧降下を小さくすることができます。

②安定度の向上
送電線の抵抗分を無視したとき,同期化力は\( \ \displaystyle \frac {\mathrm {d}P}{\mathrm {d}\delta }=\frac {EV}{X}\cos \delta \ \)となりますが,\( \ X \ \mathrm {[\Omega ]} \ \)の値を小さくすることで,送電線の距離を電気的に小さくすることができるので定態安定度が向上し,容量性リアクタンスであることにより電圧と電流の位相差が小さくなるので過渡安定度が向上します。

③送電損失の低減
コンデンサを挿入することで,送電線での電流値が減少もしくは電流のバランスが改善し,送電損失を低減させることができます。

2.直列コンデンサを挿入する際の注意点
①タービン発電機との軸ねじれ現象
電力系統でのリアクトルとコンデンサによる電気的振動とタービン発電機軸の機械的振動が共振し,タービン軸に過剰な負担がかかる可能性があります。

②変圧器励磁時の共振現象
直列コンデンサと変圧器が鉄共振が発生する可能性があります。

③自己励磁現象
コンデンサの残留電荷により,自己励磁現象が発生する可能性があります。

【解答】

(1)解答:リアクタンス,インピーダンス
ワンポイント解説「1.直列コンデンサを挿入する利点」の通り,直列コンデンサを設置すると,線路のリアクタンスを減少させることができます。

(2)解答:故障電流,事故電流,短絡・地絡電流
線路のインピーダンスが減少することで,事故発生時の短絡・地絡電流の増大を招く可能性があります。こちらはオームの法則から容易に想像がつくかと思います。

(3)解答:過電圧,異常電圧
事故が発生したときの電流値の増大により,直列コンデンサ端子間には過渡現象による過電圧が発生する可能性があります。

(4)解答:分数調波振動,鉄共振現象,共振性過電圧
ワンポイント解説「2.直列コンデンサを挿入する際の注意点」の通り,直列コンデンサ設置送電線の負荷側で変圧器を並列した場合には,変圧器鉄心の飽和現象により鉄共振現象が発生する場合があります。

(5)解答:軸ねじれ現象
ワンポイント解説「2.直列コンデンサを挿入する際の注意点」の通り,直列コンデンサを設置する際には同期機の軸ねじれ現象についても検討する必要があります。



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