《電力・管理》〈電気施設管理〉[H19:問4]分散型電源の連系に必要な保護装置に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

配電系統に分散型電源を連系する場合,系統電圧,周波数等の電力品質の確保や公衆及び作業員の安全確保等のために,保護装置の設置が必要となる。

一般の負荷へ電力を供給している\( \ 6.6 \ \mathrm {[kV]} \ \)高圧配電系統に,分散型電源として逆潮流を行う同期発電機をインバータを介さず直接連系する場合,次の三つの事象に対応するため,それぞれに必要な保護装置と,その保護装置が必要な理由,設置に当たり留意する点をそれぞれ簡潔に説明せよ。

なお,高圧配電系統,負荷,分散型電源は図のような状況とする。

 (1) 連系された配電系統の短絡事故

 (2) 連系された配電系統の地絡事故

 (3) 発電設備の単独運転

【ワンポイント解説】

分散型電源の連系に必要な保護装置に関する問題です。
電気設備技術基準の解釈の知識と各リレーに関する知識の両方を必要とする問題です。
実務で取り組んでいる方は有利ですが,その他の受験生には少し厳しい問題であったかもしれません。

【解答】

(1)連系された配電系統の短絡事故
(ポイント)
・必要な保護装置は電気設備の技術基準の解釈第229条の通りです。
・分散型電源が接続された高圧配電系統において短絡事故が発生した際には,短絡電流が配電用変電所側と発電機側の両方から故障点へ供給されます。同期発電機からの短絡電流は比較的小さいため過電流リレー\( \ \left( \mathrm {OCR} \right) \ \)の整定感度では検出できない場合があり,一方で整定感度を高くしすぎると負荷電流等により誤作動する可能性があります。このため,電流の方向も考慮した短絡方向リレー\( \ \left( \mathrm {DSR} \right) \ \)を用いて保護します。

(試験センター解答例)
・連系された配電系統に短絡事故が発生した場合は,短絡方向継電器\( \ \left( \mathrm {DSR} \right) \ \)を用いて検出する。
・系統短絡事故時に,発電設備側から系統へ短絡電流が流出するが,同期発電機の短絡電流が比較的小さいため\( \ \mathrm {OCR} \ \)の整定感度では検出できない場合がある。逆に\( \ \mathrm {OCR} \ \)の感度を高くすると負荷電流などにより誤動作の原因となることから,\( \ \mathrm {DSR} \ \)により短絡事故を検出する。
・この場合,他系統事故との区分が困難なため,系統側変電所のリレーとの時限協調を図る必要がある。また,力率改善用コンデンサによる進み電流により高感度整定の\( \ \mathrm {DSR} \ \)は不要動作する恐れがあるが,電圧低下検出を条件に加えるにより不要動作を回避することができる。

(2)連系された配電系統の地絡事故
(ポイント)
・必要な保護装置は電気設備の技術基準の解釈第229条の通りです。
・高圧配電系統において地絡事故が発生した際には,地絡電流が配電用変電所側と発電機側の両方から故障点へ供給されますが,高圧配電系統は一般に非接地系統であり,地絡電流は極めて小さいことから,地絡過電流リレー\( \ \left( \mathrm {OCGR} \right) \ \)では検出が困難となります。したがって,地絡過電圧リレー\( \ \left( \mathrm {OVGR} \right) \ \)を用いて地絡電圧を検出し保護します。

(試験センター解答例)
・連系された電力系統に地絡事故が発生した場合は,地絡過電圧継電器\( \ \left( \mathrm {OVGR} \right) \ \)を用いて検出する。
・系統地絡事故時,発電設備設置者側から流出する地絡電流は小さく,\( \ \mathrm {OCGR} \ \)では検出が困難であるため,\( \ \mathrm {OVGR} \ \)で地絡事故を検出する。
・\( \ \mathrm {OVGR} \ \)は他系統地絡事故との区別が困難であるため,時限をもたせ,変電所の地絡保護リレーと協調を図る必要がある。

(3)発電設備の単独運転
(ポイント)
・必要な保護装置は電気設備の技術基準の解釈第229条の通りです。
・開閉器等を開放した場合に,需給の状況によっては周波数の変化が少なく,\( \ \mathrm {OFR} \ \),\( \ \mathrm {UFR} \ \)での検出が困難となるため,転送遮断装置又は単独運転検出機能を有する装置を設けます。

(試験センター解答例)
・発電設備の単独運転を防止するため,周波数上昇継電器\( \ \left( \mathrm {OFR} \right) \ \),周波数低下継電器\( \ \left( \mathrm {UFR} \right) \ \)及び転送遮断装置又は単独運転検出機能を設置して保護を行う。
・開閉器等を開放した場合に,切り離された部分において発電出力と負荷が平衡している場合には,周波数の変化が少なく,\( \ \mathrm {OFR} \ \),\( \ \mathrm {UFR} \ \)での検出が困難となるため,これらに加え,転送遮断装置又は単独運転検出機能を有する装置が必要となる。
・単独運転検出機能の設置に当たっては,外乱信号が系統に影響を与えず,かつ,通常起こり得る系統の変動で不要に解列せず,確実に単独運転を検出できるように整定する必要がある。

<電気設備の技術基準の解釈第229条(抜粋)>
高圧の電力系統に分散型電源を連系する場合は,次の各号により,異常時に分散型電源を自動的に解列するための装置を施設すること。

一 次に掲げる異常を保護リレー等により検出し,分散型電源を自動的に解列すること。

 イ 分散型電源の異常又は故障

 ロ 連系している電力系統の短絡事故又は地絡事故

 ハ 分散型電源の単独運転

二 一般送配電事業者が運用する電力系統において再閉路が行われる場合は,当該再閉路時に,分散型電源が当該電力系統から解列されていること。

三 保護リレー等は,次によること。

 イ 229-1表に規定する保護リレー等を受電点その他故障の検出が可能な場所に設置すること。

※1:分散型電源自体の保護用に設置するリレーにより検出し,保護できる場合は省略できる。

※2:発電電圧異常低下検出用の不足電圧リレーにより検出し,保護できる場合は省略できる。

※3:構内低圧線に連系する場合であって,分散型電源の出力が受電電力に比べて極めて小さく,単独運転検出装置等により高速に単独運転を検出し,分散型電源を停止又は解列する場合又は地絡方向継電装置付き高圧交流負荷開閉器から,零相電圧を地絡過電圧リレーに取り込む場合は,省略できる。

※4:専用線と連系する場合は,省略できる。

※5:転送遮断装置は,分散型電源を連系している配電線の配電用変電所の遮断器の遮断信号を,電力保安通信線又は電気通信事業者の専用回線で伝送し,分散型電源を解列することのできるものであること。

※6:単独運転検出装置は,能動的方式を\( \ 1 \ \)方式以上含むものであって,次の全てを満たすものであること。

 (1) 系統のインピーダンスや負荷の状態等を考慮し、必要な時間内に確実に検出することができること。

 (2) 頻繁な不要解列を生じさせない検出感度であること。

 (3) 能動信号は、系統への影響が実態上問題とならないものであること。

※7:専用線による連系であって,逆電力リレーにより単独運転を高速に検出し,保護できる場合は省略できる。

※8:構内低圧線に連系する場合であって,分散型電源の出力が受電電力に比べて極めて小さく,受動的方式及び能動的方式のそれぞれ1方式以上を含む単独運転検出装置等により高速に単独運転を検出し,分散型電源を停止又は解列する場合は省略できる。

※9:誘導発電機を用いる場合は,設置すること。発電電圧異常低下検出用の不足電圧リレーにより検出し,保護できる場合は省略できる。

※10:同期発電機を用いる場合は,設置すること。

※11:発電機引出口に設置する地絡過電圧リレーにより,系統側地絡事故が検知できる場合又は地絡方向継電装置付き高圧交流負荷開閉器から,零相電圧を地絡過電圧リレーに取り込む場合は,省略できる。

※12:誘導発電機(二次励磁制御巻線形誘導発電機を除く。)を用いる,風力発電設備その他出力変動の大きい分散型電源において,周波数上昇リレー及び周波数低下リレーにより単独運転を高速かつ確実に検出し,保護できる場合は省略できる。

(備考)
1.○は,該当することを示す。

2.逆潮流無しの場合であっても,逆潮流有りの条件で保護リレー等を設置することができる。



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