《電力・管理》〈変電〉[R01:問2]送電用変電所に用いられる油入変圧器の内部に発生する事故に関する論説問題

【問題】

【難易度】★★☆☆☆(やや易しい)

電力系統の送電用変電所に用いられる油入変圧器の内部に発生する事故に関して,次の問に答えよ。小問(2)~(5)については,\( \ 200 \ \)字程度以内で簡潔に述べよ。

(1) 変圧器の事故のうち,巻線に関する事故様相について三つ挙げよ。

(2) 変圧器の流動帯電について,どのような現象であるか説明せよ。また,流動帯電により絶縁破壊に至る過程及び防止策について説明せよ。

(3) 変圧器の保護に用いられる機械式保護リレーと電気式保護リレーについて,代表的なリレーを挙げて検出方式を説明せよ。

(4) 変圧器の事故を未然に防止するための外部診断方法の一つである油中ガス分析について,ガスが発生する過程及び判定方法とあわせて説明せよ。

(5) 変圧器の事故により火災や噴油が発生した際の,当該変圧器の周辺機器や変電所周囲環境への波及防止策について,二つ挙げて説明せよ。

【ワンポイント解説】

1種受験者であれば,一度は学習したことがあるような内容であると思います。このような問題では間違った内容を記載しなければ部分点がもらえると考えられますので,部分点狙いとしては選択すると良い問題であると思います。

【解答】

(1)変圧器の事故のうち,巻線に関する事故様相について三つ
(ポイント)
・事故の基本である短絡,地絡及び断線と,変圧器特有の事故である高圧と低圧の混触の事故が挙げられます。

(試験センター解答例)
・短絡:巻線の層間短絡
・地絡:巻線と鉄心間の地絡
・混触:高圧巻線と低圧巻線の混触
・断線:巻線の断線

(2)変圧器の流動帯電について,どのような現象である。流動帯電により絶縁破壊に至る過程及び防止策。
(ポイント)
・絶縁油は変圧器のコイルにより常に加熱されるので,大容量の変圧器では絶縁油を循環させる必要があります。しかし,絶縁油を循環させることで,摩擦が起こり静電気が帯電することがあります。
・絶縁油の循環流量を抑えることで,発生原因を少なくするか,流動帯電抑止剤を添加することで帯電しにくくする方法が取られます。

(試験センター解答例)
・流動帯電は,大容量の導油式変圧器において,冷却のために絶縁油を循環させる際の摩擦により,固体絶縁物が負電荷の,絶縁油が正電荷の静電気で帯電する現象である。静電気の蓄積が絶縁油の耐圧値を超えると静電気放電が発生し,これが進展すると変圧器の絶縁破壊に至る。防止策として,絶縁油の流速を抑える,流動帯電抑止剤を絶縁油に添加する,などの対策がとられる。

(3)変圧器の保護に用いられる機械式保護リレーと電気式保護リレーについて,代表的なリレーを挙げて検出方式を説明
(ポイント)
①機械的保護リレー
・衝撃圧力リレー
 タンク内の側壁に取り付けられ,事故時に発生する分解ガスによる内部の圧力上昇を検出します。
・ブッフホルツリレー
 タンク内とコンサベータを結ぶ連結部に用いられ,ガスが徐々に溜まりマイクロスイッチを叩くと動作します。地震等の振動で誤動作しやすいので、信頼度もあまり高くなく最近では警報回路のみに使用されることが多いです。私の扱っていた変電所でも警報のみでした。

(試験センター解答例)
・機械式保護リレー:衝撃圧力リレーは,事故時に変圧器内部で発生する分解ガスによる内圧上昇を検出する。内圧上昇が速いほど早く検出することができる。(別解:ブッフホルツリレーは,事故によるガスの発生や油流増大を検出する。ただし,地震により誤動作する場合があるので,警報用とするなど注意を要する。)
・電気式保護リレー:比率差動リレーは,変圧器一次・二次の電流の換算値の差を常に比較し,小さい場合は正常,整定値より大きい場合は内部事故として検出する。差電流を動作量,通過電流を抑制量として比率特性を持たせることで,検出感度と誤動作防止に優れている。

(4)油中ガス分析について,ガスが発生する過程及び判定方法
(ポイント)
・油中ガス分析に関する問題は出題されやすい傾向にあるので,一通り理解しておきましょう。
・変圧器でのガス発生は,部分放電や局部過熱のような発熱を伴い絶縁油や絶縁紙が熱分解することで発生します。
・正経年劣化で生じるガスとしては一酸化炭素,二酸化炭素,メタン,水素等があります。
・異常時に発生するガスとして最も重要なのはアセチレンであり,検出された場合には要注意となります。

(試験センター解答例)
油中ガス分析は,変圧器の絶縁油を採油し,溶解している可燃性ガスをクロマトグラフによって測定することにより,内部状態を診断する方法である。
変圧器の内部に異常が発生すると,高温により絶縁油や絶縁紙が油中ガスとして熱分解し,アセチレンなどのガスが発生する。そこで,油中ガス分析によって検出したガスの種類・発生量や,複数種類のガスの成分比を基準値と比較することにより,変圧器内部の異常の有無や様相を判定する。

(5)変圧器の事故により火災や噴油が発生した際の,当該変圧器の周辺機器や変電所周囲環境への波及防止策について二つ
(ポイント)
・火災や噴油が発生した時の対応は,一般的な火事等と同様に考えれば良いです。思いつくことを書き出しましょう。

(試験センター解答例)
・消火対策:変圧器に火災が発生した場合に早期に消火するため,水噴霧などの固定消火装置や大形消火器を変圧器の周辺に設置し,火災発生時は自動的に起動する。
・類焼防止対策:火災が発生した変圧器から,隣接する変圧器などへの類焼を防止するため,防火壁や防火水幕を設ける。
・公害防止対策:変圧器事故による油流出や,変圧器火災の消火のための消火水が,変電所構外へ流出することを防止するため,油水流出防止せきや排油水槽を設ける。



記事下のシェアタイトル