【問題】
【難易度】★★★☆☆(普通)
定格周波数 50 Hz における磁石の磁極方向の直軸同期リアクタンスがXd=1Ω,磁極に対して電気角90度進み方向の横軸同期リアクタンスがXq=2Ωの埋込永久磁石同期電動機がある。はじめに同期電動機の電機子巻線を開放し,回転速度1500 min−1で回転させたとき,磁極方向を実軸とすると,電機子巻線には相電圧˙E0=j200 V,f=50 Hzの平衡三相交流電圧が現れた。次に,周波数をf=50 Hz一定で,相電圧V [V]を自由に調整できる平衡三相交流電源に接続して運転する。次の問に答えよ。ただし,巻線抵抗による電圧降下や鉄損は無視できるものとする。また,図は突極性がある同期電動機のフェーザ図である。
(1) 負荷トルクがT1 [N⋅m]のとき,交流電源の相電圧Vを調整すると,電機子巻線には˙I=j50 Aの電流が流れた。このときのV [V]を求めよ。
(2) 上記(1)の場合の機械出力P1 [kW]及びトルクT1 [N⋅m]を求めよ。
(3) 交流電源の相電圧Vを調整して,電機子巻線に実効値I=50 Aで˙I=−10+j10√24 Aの電流を流した。このときの相電圧V [V]と発生するトルクT2 [N⋅m]を求めよ。
(4) 電機子電流の実効値がI=50 Aのときに,発生するトルクが最大となる電流˙I[A]を示せ。

【ワンポイント解説】
直軸同期リアクタンスと横軸同期リアクタンスから電動機のトルクと出力を求める問題ですが,中身はベクトル計算の問題となっています。(4)が時間がかかりそうですが,計算が得意な方は比較的容易に解くことができるかもしれません。
1.掛け算の微分
f(x)=u(x)v(x)である時,その微分f′(x)は,
f′(x)=u′(x)v(x)+u(x)v′(x)
となります。
【解答】
(1)電機子巻線に˙I=j50 Aの電流が流れたときのV [V]
題意に沿ってフェーザ図を描くと図1のようになる。
図1より,
−XqIq=−2×50=−100 [V]
であるから,このときのV [V]の大きさは,
V=√(−XqIq)2+E20=√(−100)2+2002≒223.61 → 224 [V]
と求められる。

(2)(1)の場合の機械出力P1 [kW]及びトルクT1 [N⋅m]
(1)の場合の電力P1+jQ1は,遅れ無効電力を正とすると,
P1+jQ1=3˙V¯˙I=3×(−100+j200)×(−j50)=30000+j15000 [V⋅A]
となるので,機械出力P1は,
P1=30000 → 30 [kW]
と求められる。またトルクT1=P1ωであり,
ω=2πN60=2π×150060≒157.08 [min−1]
であるから,
T1=P1ω=30000157.08≒190.99 → 191 [N⋅m]
と求められる。
(3)実効値I=50 Aで˙I=−10+j10√24 Aの電流を流したときの相電圧V [V]と発生するトルクT2 [N⋅m]
電機子電流˙I=Id+jIq=−10+j10√24であるから,
jXdId=j1×(−10)=−j10 [V]−XqIq=−2×10√24=−20√24 [V]
となるので,ベクトル図を描くと図2のようになる。よって,相電圧˙Vは,
˙V=−XqIq+E0+jXdId=−20√24+j200−j10=−20√24+j190 [V]
となるので,その大きさは,
V=√(−20√24)2+1902≒213.78 [V]
と求められる。また,その時の電力P2+jQ2は,
P2+jQ2=3˙V¯˙I=3×(−20√24+j190)×(−10−j10√24)≒30864+j8700 [V⋅A]
となるので,求めるトルクT2は,
T2=P2ω=30864157.08≒196.49 → 196 [N⋅m]
と求められる。

(4)電機子電流の実効値がI=50 Aのときに,発生するトルクが最大となる電流˙I[A]
電機子電流˙I=Icosθ+jIsinθ=50cosθ+j50sinθとおく。このとき,
jXdId=j1×50cosθ=j50cosθ [V]−XqIq=−2×50sinθ=−100sinθ [V]
となるので,相電圧˙Vは,
˙V=−XqIq+E0+jXdId=−100sinθ+j(200+50cosθ) [V]
となるので,その時の電力P3+jQ3は,
P3+jQ3=3˙V¯˙I=3×[−100sinθ+j(200+50cosθ)]×(50cosθ−j50sinθ)=−7500sinθcosθ+30000sinθ+j(30000cosθ+7500cos2θ+15000sin2θ)
となるので,出力P3は,
P3=−7500sinθcosθ+30000sinθ
となる。ここで,トルクが最大になる時,出力も最大となるから,dP3dθ=0となるθを求めればよい。
dP3dθ=−7500(cos2θ−sin2θ)+30000cosθ=0−7500(2cos2θ−1)+30000cosθ=02cos2θ−4cosθ−1=0cosθ=2±√4+22=−0.22474,2.2247(不適)
と求められる。また,sinθは,
sinθ=√1−cosθ=√1−(−0.22474)2=0.97442
となる。よって,求める電機子電流˙Iは,
˙I=50cosθ+j50sinθ=50×(−0.22474)+j50×0.97442=−11.237+j48.721 → −11.2+j48.7 [A]
と求められる。