《機械》〈電気化学〉[H23:問6] マンガン乾電池及び空気電池に関する計算問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,一次電池に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。
ただし,亜鉛,マンガン,酸素,水素の原子量はそれぞれ\( \ 65 \ \),\( \ 55 \ \),\( \ 16 \ \),\( \ 1 \ \)とし,ファラデー定数は\( \ 27 \ \mathrm {[A \cdot h/mol]} \ \)とする。

マンガン乾電池は一次電池として最も広く利用されている。その負極活物質は亜鉛であり,正極活物質は二酸化マンガンである。この正極では還元反応が起こり,塩基性酸化マンガンが生成する。ここではマンガン\( \ 1 \ \)原子当たり\( \ \fbox {  (1)  } \ \)電子反応が起こっている。負極では亜鉛が酸化反応を起こす。ここでは亜鉛\( \ 1 \ \)原子当たり\( \ \fbox {  (2)  } \ \)電子反応が起こっている。

いま,この電池が放電して負極の亜鉛\( \ 4.1 \ \mathrm {[g]} \ \)を消費したとき,得られる電気量は\( \ \fbox {  (3)  } \ \mathrm {[A \cdot h]} \ \)となる。また,正極の二酸化マンガン\( \ 7.1 \ \mathrm {[g]} \ \)を消費したとき,得られる電気量は\( \ \fbox {  (4)  } \ \mathrm {[A \cdot h]} \ \)となる。

このマンガン乾電池の二酸化マンガンの代わりに空気中の酸素の反応を利用する空気電池がある。この電池の放電に際し\( \ 6.5 \ \mathrm {[g]} \ \)の亜鉛が消費したとき,理論的に消費する酸素の質量は\( \ \fbox {  (5)  } \ \mathrm {[g]} \ \)となる。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 0.8       &(ロ)& 1       &(ハ)& 1.2 \\[ 5pt ] &(ニ)& 1.4   &(ホ)& 1.6       &(ヘ)& 1.8 \\[ 5pt ] &(ト)& 2   &(チ)& 2.2   &(リ)& 2.4 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 2.6   &(ル)& 2.8   &(ヲ)& 3 \\[ 5pt ] &(ワ)& 3.2   &(カ)& 3.4   &(ヨ)& 3.6 \\[ 5pt ] &(タ)& 3.8   &(レ)& 4   &(ソ)& 4.2
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

各電池の酸化還元反応式を知って入ればそれほど難しい問題ではありませんので,マンガン乾電池の反応を知っているかどうかが勝負の分かれ目となるかと思います。
電気化学は毎年出題される問題ではありませんが,出題される場合は比較的易しい問題が出題されることが多いので,余裕があるならば勉強しておいた方が良い分野です。

1.マンガン乾電池,空気電池の反応式
〔マンガン乾電池の反応式〕
 負極:\(\mathrm {Zn+2NH_{4}Cl → Zn(NH_{3})_{2}Cl_{2}+2H^{+}+2e^{-}}\)
 正極:\(\mathrm {2MnO_{2}+2H_{2}O+2e^{-} → 2MnOOH+2OH^{-}}\)

〔空気電池の反応式〕
 負極:\(\mathrm {Zn+2OH^{-} → ZnO+2H_{2}O+2e^{-}}\)
 正極:\(\displaystyle \mathrm {\frac {1}{2}O_{2}+2H_{2}O+2e^{-} → 2OH^{-}}\)

【解答】

(1)解答:ロ
 ワンポイント解説「1.マンガン乾電池,空気電池の反応式」の通り,マンガン\( \ 1 \ \)原子当たり,\( \ 1 \ \)電子が反応しています。

(2)解答:ト
 ワンポイント解説「1.マンガン乾電池,空気電池の反応式」の通り,亜鉛\( \ 1 \ \)原子当たり,\( \ 2 \ \)電子反応しています。

(3)解答:カ
亜鉛\( \ 4.1 \ \mathrm {[g]} \ \)の\( \ \mathrm {mol} \ \)数は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {4.1}{65}&≒&0.0631 \ \mathrm {[mol]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,亜鉛\( \ 1 \ \)原子当たり\( \ 2 \ \)電子反応しているから,得られる電気量\( \ \mathrm {[A \cdot h]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
0.0631 \times 2 \times 27 &≒&3.4 \ \mathrm {[A \cdot h]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(4)解答:チ
二酸化マンガン\( \ 7.1 \ \mathrm {[g]} \ \)の\( \ \mathrm {mol} \ \)数は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {7.1}{55+16\times 2}&≒&0.0816 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であり,二酸化マンガン\( \ 1 \ \)原子当たり\( \ 1 \ \)電子反応しているから,得られる電気量\( \ \mathrm {[A \cdot h]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
0.0816 \times 1 \times 27 &≒&2.2 \ \mathrm {[A \cdot h]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。

(5)解答:ホ
空気電池の反応式より,亜鉛\( \ 1 \ \mathrm {[mol]} \ \)あたりの消費酸素量は\( \ \displaystyle \frac {1}{2} \ \mathrm {[mol]} \ \)である。
亜鉛\( \ 6.5 \ \mathrm {[g]} \ \)の\( \ \mathrm {mol} \ \)数は,
\[
\begin{eqnarray}
\frac {6.5}{65}&=&0.1 \ \mathrm {[mol]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] であるから,消費する酸素量\( \ \mathrm {mol} \ \)数は,
\[
\begin{eqnarray}
0.1 \times \frac {1}{2} \ \mathrm {[mol]} \ &=&0.05 \ \mathrm {[mol]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となる。よって消費する酸素の質量\( \ \mathrm {[g]} \ \)は,
\[
\begin{eqnarray}
0.05\times \left(16 \times 2 \right)&=&1.6 \ \mathrm {[g]} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と求められる。



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