《機械》〈パワーエレクトロニクス〉[H26:問2]絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の誘導負荷スイッチング試験に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(\(\mathrm {IGBT}\))の誘導負荷スイッチング試験に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

図1は,\(\mathrm {IGBT}\)に対して誘導負荷スイッチング試験を行うための試験主回路,及び試験時にリアクトル\(\mathrm {L}\)に流れる電流\(i_{\mathrm {L}}\)の波形の一例である。

\(\mathrm {IGBT}\)のゲート-エミッタ間電圧\(v_{\mathrm {GE}}\)を制御し,時刻\(t=0\)で\(\mathrm {IGBT}\)をターンオンさせると,\(\mathrm {L}\)に流れる電流\(i_{\mathrm {L}}\)は\(0\)から徐々に増加する。時刻\(t_{1}\)で\(i_{\mathrm {L}}\)が試験設定電流\(I_{\mathrm {C}}\)に達したとき,\(\mathrm {IGBT}\)をターンオフさせ,短時間後の\(t_{2}\)に再度ターンオンさせた。\(t_{1}\)から\(t_{2}\)までの間,\(i_{\mathrm {L}}\)は,ダイオード\(\mathrm {D}\)を還流し減衰するが,\(\left( t_{2}-t_{1}\right) \)が短時間であるので,ここでは\(I_{\mathrm {C}}\)に維持されるものとする。このときのターンオフ時のコレクタ-エミッタ間電圧\(v_{\mathrm {CE}}\)及びコレクタ電流\(i_{\mathrm {C}}\)の概略波形は,図2の\(\fbox {  (1)  }\)となる。また,ターンオン時の同概略波形は,図2の\(\fbox {  (2)  }\)となる。

ターンオフ時,\(\mathrm {IGBT}\)のコレクタ電流\(i_{\mathrm {C}}\)が\(0.1I_{\mathrm {C}}\)から\(0.02I_{\mathrm {C}}\)に降下するまでの時間を\(\fbox {  (3)  }\)という。

\(\mathrm {IGBT}\)がオフ時のコレクタ-エミッタ間電圧を\(V_{\mathrm {CE}}\)とする。また,オン時のコレクタ-エミッタ間飽和電圧\(V_{\mathrm {CEsat}}\)は十分に小さいものとして無視する。ターンオフ損失は,ターンオフ時,\(v_{\mathrm {CE}}\)が\(0.1V_{\mathrm {CE}}\)に上昇した時点から,\(i_{\mathrm {C}}\)が\(0.02I_{\mathrm {C}}\)に減少した時点までの\(\fbox {  (4)  }\)の積分値である。

同じ\(I_{\mathrm {C}}\)及び\(V_{\mathrm {CE}}\)のとき,誘導負荷スイッチング時における\(\mathrm {IGBT}\)のスイッチング損失は,抵抗負荷スイッチング時に比較して\(\fbox {  (5)  }\)。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& (\mathrm {e})   &(ロ)& (\mathrm {b})   &(ハ)& 大きい \\[ 5pt ] &(ニ)& エミッタ損失   &(ホ)& (\mathrm {a})   &(ヘ)& 同等である \\[ 5pt ] &(ト)& テイル時間   &(チ)& (\mathrm {c})   &(リ)& 降下時間 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 小さい   &(ル)& (\mathrm {f})   &(ヲ)& (\mathrm {d}) \\[ 5pt ] &(ワ)& 遮断時間   &(カ)& コレクタ損失   &(ヨ)& コレクタ-エミッタ損失
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

\(\mathrm {IGBT}\)は比較的新しいデバイスで,受験生で特に年配の方には厳しい問題であったかもしれません。波形にテイル時間があることが\(\mathrm {MOSFET}\)との大きな違いであり,ポイントとなります。

1.\(\mathrm {IGBT}\)の概要
バイポーラトランジスタと\(\mathrm {MOSFET}\)を組み合わせたようなデバイスで,\(\mathrm {MOSFET}\)の速度と大容量化を同時にできる良いとこどりのデバイスです。ただし,速度は\(\mathrm {MOSFET}\)の方が高速のため,小容量では\(\mathrm {MOSFET}\)を使用します。
構造は図3のような構造であり,ゲート電圧を加えると,\(\mathrm {n}\)層が繋がるようにチャネルが形成され,コレクタエミッタ間に電流が流れます。コレクタからは正孔が\(\mathrm {n}\)層に注入されるようになり,正孔と電子のバランスを取るため,上部から電子が供給され,真ん中の\(\mathrm {n}\)層のキャリア密度が高くなります(伝導度変調効果)。
\(\mathrm {IGBT}\)のオンオフ波形は図4のようになります。図4の通り,テイル電流と呼ばれる,伝導度変調効果により蓄積されたキャリアが再結合して消滅するまでの時間に流れる電流があります。この間のコレクタ-エミッタ間電圧とコレクタ電流との積が\(\mathrm {MOSFET}\)と比べ大きくなりスイッチング損失を大きくさせます。また,ターンオン時にもキャリア蓄積時間と呼ばれるスイッチング損失が大きくなる要因があるため,\(\mathrm {IGBT}\)の課題となっています。


【解答】

(1)解答:チ
ワンポイント解説図4の通り,(C)が最も適当となります。

(2)解答:ル
ワンポイント解説図4の通り,(f)が最も適当となります。

(3)解答:ト
ワンポイント解説「\(\mathrm {IGBT}\)の概要」の通り,テイル時間と呼ばれます。

(4)解答:カ
ターンオフ損失は,コレクタ-エミッタ間電圧とコレクタ電流の積であり,コレクタ損失となります。

(5)解答:ハ
同条件下においては,誘導負荷スイッチング時の方が\(\mathrm {IGBT}\)に流れるコレクタ電流が大きくなり,スイッチング損失は大きくなります。



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