《電力》〈水力〉[H24:問5]中小水力発電所の開発に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,中小水力発電所の開発に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

水力エネルギーの未利用地点は落差や流量の小さい場合が多く,このような地点の発電所に選定される効率のよい水車は限られ,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)水車やバルブ水車などの\( \ \fbox {  (2)  } \ \)水車が多く採用されている。また,\( \ \mathrm {S} \ \)形\( \ \fbox {  (1)  } \ \)水車は,水路外部に発電機を設置できるため,バルブ水車に比べ,発電機構造や機器配置などの設計自由度が高いという特長がある。

\( \ \fbox {  (3)  } \ \)水車は,円筒かご形のランナが特徴的で,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)水車と\( \ \fbox {  (4)  } \ \)水車の両方の特性を併せもち,出力\( \ 1000 \ \mathrm {[kW]} \ \)程度以下で,落差が\( \ 5 \ \mathrm {[m]} \ ~ \ 100 \ \mathrm {[m]} \ \)程度の地点に適用され,流量変化に対して大小に分割したガイドベーンを切り替えることで効率の良い運転ができるものもある。

さらに小規模な数百\( \ \mathrm {[kW]} \ \)以下の発電所では,施工が容易な,汎用\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を逆転させた\( \ \fbox {  (5)  } \ \)逆転水車や,水車と発電機を一体として\( \ \fbox {  (6)  } \ \)に設置する\( \ \fbox {  (6)  } \ \)タービン発電機なども採用されることがある。このような小規模な発電所では,構造も簡単で保守も容易な\( \ \fbox {  (7)  } \ \)発電機を採用することが多い。

また,これらの発電機を高圧連系する場合には,上位系統故障時の感電事故防止や他の電気設備の安全確保等の観点から,周波数上昇リレー,周波数低下リレー及び\( \ \fbox {  (8)  } \ \)装置又は単独運転検出機能を有する装置により単独運転の防止を図っている。

〔問5の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& チューブラ     &(ロ)& ダリウス     &(ハ)& 同 期 \\[ 5pt ] &(ニ)& 水 中     &(ホ)& 衝 動     &(ヘ)& 反 動 \\[ 5pt ] &(ト)& フランシス     &(チ)& 斜 流     &(リ)& クロスフロー \\[ 5pt ] &(ヌ)& 誘 導     &(ル)& コンプレッサー       &(ヲ)& デリア \\[ 5pt ] &(ワ)& 並 列     &(カ)& ポンプ     &(ヨ)& モータ \\[ 5pt ] &(タ)& 転送遮断     &(レ)& 単 相     &(ソ)& 直 列 \\[ 5pt ] &(ツ)& 遠方監視制御       &(ネ)& 自動並列     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

中小水力発電に関する問題です。
平成24年頃は固定買取制度(\( \ \mathrm {FIT} \ \))により太陽光をはじめとする自然エネルギー発電が増えていたため,電験でも中小水力発電に関する問題が出題されたのではないかと思います。
電験ではそのときの時事問題的な内容も出題されますので,そのときの電力のトレンドは把握しておくようにしましょう。

1.中小水力発電の種類
①\( \ \mathrm {S} \ \)形チューブラ水車
チューブラ水車とは円筒形の水車のことをいい,\( \ \mathrm {S} \ \)形チューブラ水車はその形状から\( \ \mathrm {S} \ \)形と呼ばれ,他にも\( \ \mathrm {L} \ \)形,\( \ \mathrm {Z} \ \)形等もあります。
可動式のランナベーンで直並列接続も可能であることから,小水量から比較的大きな数\( \ \mathrm {MW} \ \)級の水力発電まで運転可能となります。


出典:国土交通省 プレスリリース H29.7.26

②バルブ形チューブラ水車
バルブ(電球)形のケーシング内に水車を入れ水中に設置される水車で,直線的な流路であり低落差の水車としては比較的高効率となります。出力は\( \ \mathrm {S} \ \)形チューブラ水車と同様の出力で採用されます。


出典:日本水力開発株式会社 HP
https://jhd.co.jp/products/kaplan/

③クロスフロー水車
クロスフロー水車は衝動水車と反動水車の両方の特性を併せ持つ水車で,出力\( \ 1 \ \mathrm {[MW]} \ \)程度以下の水力発電所に採用される方式です。
図においてガイドベーンで出力をコントロールしているのに,流出側が反動水車のように水で満たされている訳ではないところがポイントとなります。
ガイドベーンが\( \ 1 \ \)枚ないしは\( \ 2 \ \)枚で構成されるのが一般的であり,\( \ 2 \ \)枚の場合はガイドベーンを切り替えることで,軽負荷まで効率的な運転が可能となります。


出典:中部電力株式会社 HP
https://www.chuden.co.jp/energy/renew/ren_shikumi/wat_shikumi/suisha/

④ポンプ逆転水車
一般的に使用されるポンプの逆向きに水を流し,通常とは逆方向に回転させる水車です。
ポンプであることからもわかる通り,流量調整はできず効率も低くなりますが,ポンプと同じ部品を使用できるため安価であるという特徴があります。

⑤一体形水車
水車と発電機が一体となっている水中ポンプをポンプ逆転水車と同様に逆向きに水を流すことで発電する水車です。
一体となっている分,コンパクトに設計することが可能となります。

⑥ターゴインパルス水車
構造はペルトン水車と同様な構造ですが,ペルトン水車がランナの接線方向から入射するのに対して,ターゴインパルス水車は斜めの角度から入射します。
流量はニードル弁で調整でき,比較的流量が少なくても効率低下が小さいという特徴があります。

【解答】

(1)解答:イ
題意より解答候補は,(イ)チューブラ,(ロ)ダリウス,(ト)フランシス,(チ)斜流,(リ)クロスフロー,(ヲ)デリア,等になると思います。
ワンポイント解説「1.中小水力発電の種類」の通り,小出力で採用されている水車はチューブラ水車となります。ダリウス形水車はランナの形状が矩形のものをいいます。(画像検索ですぐに形状はわかるかと思います。)

(2)解答:ヘ
題意より解答候補は,(ホ)衝動,(ヘ)反動,等になると思います。
チューブラ水車,バルブ水車ともランナが水で満たされている反動水車に分類されます。

(3)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)チューブラ,(ロ)ダリウス,(ト)フランシス,(チ)斜流,(リ)クロスフロー,(ヲ)デリア,等になると思います。
反動水車と衝動水車の両方の特性を併せ持つ水車はクロスフロー水車となります。

(4)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)衝動,(ヘ)反動,等になると思います。
(2)が反動水車なので,こちらの空欄は衝動水車となります。

(5)解答:カ
題意より解答候補は,(ル)コンプレッサー,(カ)ポンプ,(ヨ)モータ,等になると思います。
ワンポイント解説「1.中小水力発電の種類」の通り,小出力で採用されている水車はポンプ逆転水車となります。

(6)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)水中,(ワ)並列,(ソ)直列,等になると思います。
ワンポイント解説「1.中小水力発電の種類」の通り,小出力の水力発電所では省スペースで配置できることから水中の一体形構造のものが採用されることがあります。

(7)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ハ)同期,(ヌ)誘導,(レ)単相,になると思います。
中小水力発電所では建設費や保守費用を抑えるために,同期発電機ではなく誘導発電機を採用することが多くなります。

(8)解答:タ
題意より解答候補は,(タ)転送遮断,(ツ)遠方監視制御,(ネ)自動並列,になると思います。
題意の故障時の対策として有効なのは転送遮断装置で,遠方で事故が発生した際に事故拡大防止のため自動的に発電機遮断器を開放する装置のことです。
遠方監視制御装置は,その名の通り遠方でも監視できるようにする制御で通常運転時の制御装置となります,また,自動並列装置は,発電機を系統に並列する際に自動的に位相等を合わせ並列する装置です。



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