《電力》〈送電〉[H24:問6]開閉サージと長ギャップに対するフラッシオーバ電圧に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

次の文章は,開閉サージと長ギャップに対するフラッシオーバ電圧に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

送電系統に生じる異常電圧の一つである開閉サージが発生する主なメカニズムは,「超高圧以上の送電線における遮断器の投入により高いサージ電圧が発生する」,「無負荷送電線の\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を遮断する際に遮断器の極間絶縁が不十分であるとき,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を起こし,高いサージ電圧を発生させる」,あるいは「変圧器の\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を消弧性の強い遮断器で遮断すると\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を生じ,変圧器のインダクタンスに応じた過電圧を発生する」などである。

長ギャップに対するフラッシオーバ電圧の\( \ V-t \ \)特性は,数十~数百\( \ \mathrm {[\mu s]} \ \)で最小値をとる。これを\( \ \fbox {  (5)  } \ \)と呼んでいる。この\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の発見をきっかけに開閉サージを模擬する開閉インパルス電圧標準波の\( \ \fbox {  (6)  } \ \)が\( \ 250 \ \mathrm {[\mu s]} \ \)と定められた。開閉インパルス電圧の長ギャップ放電に特有な性質は,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)以外にもいくつか知られている。その一つが飽和特性,すなわち\( \ \fbox {  (7)  } \ \)に比例してフラッシオーバ電圧が増加せず飽和傾向が顕著になる性質である。\( \ \fbox {  (8)  } \ \)以上の電力系統で現れる開閉サージの大きさがこの飽和傾向の強まるところと一致している。このため\( \ \fbox {  (8)  } \ \)以上の送電線では開閉サージ倍数が大きいと絶縁間隔が大きくなり鉄塔も大形化して建設費も増大するため,高性能避雷器の設置,抵抗付き遮断器の採用などの開閉サージ抑制対策が行われる。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& \mathrm {V} \ 特性     &(ロ)& 波頭長     &(ハ)& 印加時間 \\[ 5pt ] &(ニ)& 275 \ \mathrm {[kV]}     &(ホ)& 充電電流     &(ヘ)& 再発弧 \\[ 5pt ] &(ト)& 500 \ \mathrm {[kV]}     &(チ)& 逆フラッシオーバ       &(リ)& 励磁電流 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 過渡回復電圧      &(ル)& 誘導電流     &(ヲ)& 電流裁断 \\[ 5pt ] &(ワ)& ギャップ長     &(カ)& 循環電流     &(ヨ)& パルス長 \\[ 5pt ] &(タ)& 再点弧     &(レ)& \mathrm {U} \ 特性     &(ソ)& 励磁突入電流 \\[ 5pt ] &(ツ)& 横 流       &(ネ)& 波尾長     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

開閉サージの発生メカニズムや開閉インパルス試験の概要に関する内容です。
JEC等で規定されている内容ですが,ほとんどの受験生には厳しい問題であったかと思います。ある程度の基礎知識から類推できるようにしましょう。
過去雷インパルス試験に関する問題も出題されているので,合わせて確認しておくようにして下さい。

1.開閉インパルス耐電圧試験
開閉サージに対する絶縁強度を仮想して確認する試験で,単極性の場合\( \ 250/2500 \ \mathrm {\mu s} \ \)の波形を用います。

開閉インパルス耐電圧試験の波頭長は\( \ 250 \ \mathrm {\mu s} \ \)で,原点から波高点までの時間(下図の\( \ T_{\mathrm {cr}} \ \))で定義されます。
開閉インパルス耐電圧試験は波尾長は\( \ 2500 \ \mathrm {\mu s} \ \)で,原点からピークを通りすぎた\( \ 50 \ % \ \)波高点までの時間(下図の\( \ T_{\mathrm {2}} \ \))で定義されます。


出典:電気工学ハンドブック(第7版) 11編 P.619

2.開閉インパルス電圧の長ギャップ放電の\( \ \mathrm {U} \ \)特性,飽和特性
長ギャップに対するフラッシオーバ電圧に関する特性で,横軸に波頭長をとると,波頭長が長くなっていくと,フラッシオーバ電圧一旦低くなり極小値をとったあと緩やかに上昇していくという特性が発生します。この特性は,その形状から\( \ \mathrm {U} \ \)特性と呼ばれています。
また,ギャップ長に比例してフラッシオーバ電圧が増加せず飽和傾向になる特性は飽和特性と呼ばれています。
過去の文献を確認しても,なぜこのような特性を示すのかは未解決のようです。


出典:Samething like title HP

【用語の解説】

(ヘ)再発弧
遮断器で交流を遮断した際,電流が零点で遮断しますが,その後\( \ 1/4 \ \)サイクル経過前に極間にアークが発生する現象をいいます。

(チ)逆フラッシオーバ
架空地線や鉄塔等に落雷した雷による過電圧ががいし等を介して送電線に流れこみ過電圧が発生する現象をいいます。

(ヌ)過渡回復電圧
故障電流等を遮断したあと,遮断器の極間の電圧が電源電圧波高値に向け誘起する電圧をいいます。

(ヲ)電流裁断
変圧器の励磁電流や電動機の無負荷電流を遮断するとき,電流零点を待たずに電流が遮断し,負荷側に異常電圧が現れる現象をいいます。

(カ)循環電流,(ツ)横流
複数の変圧器を並列運転した際に,変圧比の違いにより,変圧器間を流れる電流を循環電流もしくは横流といいます。

(タ)再点弧
遮断器で交流を遮断した際,電流が零点で遮断しますが,その後\( \ 1/4 \ \)サイクル経過後に極間にアークが発生する現象をいいます。

(ソ)励磁突入電流
変圧器を遮断器によって電源に接続した際,投入時の電圧の位相によって過渡的に大きな励磁電流が流れる場合があり,これを励磁突入電流といいます。

【解答】

(1)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)充電電流,(リ)励磁電流,(ル)誘導電流,(カ)循環電流,(ソ)励磁突入電流,(ツ)横流,等になると思います。
このうち無負荷送電線に流れている電流は送電線の静電容量に伴う充電電流となります。

(2)解答:タ
題意より解答候補は,(ヘ)再発弧,(ヲ)電流裁断,(タ)再点弧,等になると思います。
仮に無負荷送電線にて抵抗分が無視できる場合,遮断器で電流遮断する場合は,電流が電圧より\( \ 90 \ \)度進んだ状態であり,電流零点で遮断すると電圧は波高値で遮断することになります。この後,電圧が\( \ 1/2 \ \)サイクル経過する電源側の電圧が反対の極性の波高値となり,極間に電源電圧の\( \ 2 \ \)倍の電圧がかかり,アークが発生しやすくなります。したがって,\( \ 1/2 \ \)サイクル後のアークなので再点弧が適当となります。

(3)解答:リ
題意より解答候補は,(ホ)充電電流,(リ)励磁電流,(ル)誘導電流,(カ)循環電流,(ソ)励磁突入電流,(ツ)横流,等になると思います。
このうち無負荷の変圧器を遮断する際に発生する電流は励磁電流となります。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ヘ)再発弧,(ヲ)電流裁断,(タ)再点弧,等になると思います。
用語の解説「(ヲ)電流裁断」の通り,変圧器の励磁電流を遮断するとき,電流零点を待たずに電流が遮断し,過電圧が発生する現象を電流裁断といいます。

(5)解答:レ
題意より解答候補は,(イ)\( \ \mathrm {V} \ \)特性,(レ)\( \ \mathrm {U} \ \)特性,になると思います。
ワンポイント解説「2.開閉インパルス電圧の長ギャップ放電の\( \ \mathrm {U} \ \)特性,飽和特性」の通り,フラッシオーバ電圧の\( \ V-t \ \)特性は一般に\( \ \mathrm {U} \ \)特性と呼ばれます。

(6)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)波頭長,(ハ)印加時間,(ネ)波尾長,になると思います。
ワンポイント解説「1.開閉インパルス耐電圧試験」の通り,開閉インパルス電圧の\( \ 250 \ \mathrm {[\mu s]} \ \)は波頭長であることがわかります。

(7)解答:ワ
題意より解答候補は,(ロ)波頭長,(ハ)印加時間,(ワ)ギャップ長,(ネ)波尾長,等になると思います。
ワンポイント解説「2.開閉インパルス電圧の長ギャップ放電の\( \ \mathrm {U} \ \)特性,飽和特性」の通り,ギャップ長に比例してフラッシオーバ電圧が増加せず飽和傾向になる性質を飽和特性といいます。

(8)解答:ト
題意より解答候補は,(ニ)\( \ 275 \ \mathrm {[kV]} \ \),(ト)\( \ 500 \ \mathrm {[kV]} \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.開閉インパルス電圧の長ギャップ放電の\( \ \mathrm {U} \ \)特性,飽和特性」の飽和特性の図の通り,開閉サージの飽和傾向が交流電圧より強まるのが\( \ 500 \ \mathrm {[kV]} \ \)程度であることが読み取れると思います。



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