《電力》〈火力〉[H20:問1]タービン発電機の励磁方式に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,タービン発電機の励磁方式に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選び,その記号をマークシートに記入しなさい。

励磁装置は,その電源が回転機か静止器かの区分,使用される半導体電力変換装置の種類及び制御方式により,次のように分類される。

\( \ \mathrm {a.} \ \)直流励磁機方式
 励磁装置の電源に直流発電機を用いる方式をいう。この発電機を直流励磁機という。

\( \ \mathrm {b.} \ \)交流励磁機方式
 励磁装置の電源に励磁用同期発電機を用い,半導体電力変換器と組み合わせて構成される方式をいう。この励磁用同期発電機を交流励磁機という。
 タービン発電機と同一回転軸上に\( \ \fbox {  (1)  } \ \)発電機と半導体電力変換器を取り付け,スリップリングを経由せず直接タービン発電機の界磁巻線に電流を供給する方式を\( \ \fbox {  (2)  } \ \)励磁方式という。
 交流励磁機方式は交流励磁機の電源により,さらに他励,分巻に分類される。他励方式は,タービン発電機や交流励磁機と同一軸上に取り付けられた\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の出力又は,励磁用変圧器を通して交流励磁機に励磁電流を供給する方式である。分巻方式とは,交流励磁機の出力を自身の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)電流の電源として使用する方式である。

\( \ \mathrm {c.} \ \)静止形励磁方式
 励磁装置が\( \ \fbox {  (5)  } \ \)や励磁用変流器などと半導体電力変換器とで構成される方式をいう。半導体電力変換器にサイリスタを使用して励磁装置が構成される方式をサイリスタ励磁方式という。サイリスタ励磁方式は,バルブデバイスの構成により,さらに均一ブリッジ形と混合ブリッジ形に分類される。

〔問1の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 可変抵抗器     &(ロ)& 副励磁機     &(ハ)& ブラシレス \\[ 5pt ] &(ニ)& 電機子     &(ホ)& 巻線形誘導     &(ヘ)& コミュテータレス \\[ 5pt ] &(ト)& 同期化     &(チ)& \mathrm {CVCF}     &(リ)& 回転増幅器 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 回転電機子形同期        &(ル)& 蓄電池     &(ヲ)& 界 磁 \\[ 5pt ] &(ワ)& 励磁用変圧器     &(カ)& 回転界磁形同期        &(ヨ)& スリップリングレス \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

タービン発電機の励磁方式に関する問題です。
5つのうち4つが交流励磁機方式の空欄なので,ほぼ交流励磁機方式に関する出題といっても良いかと思います。
二次試験でも出題される可能性がある内容なので,空欄穴埋のみでなく各名称と概要は答えれるようにしておいて下さい。

1.励磁方式の種類
一般に汽力発電で使用される大型の同期発電機では界磁巻線に直流電流を通電して励磁する方法が使用され,以下に示すような方式があります。

①直流励磁機方式
 最も初期から使用されている方法で,直流発電機を励磁機として界磁電流を調整する方式です。摺動部があるため,定期的なブラシ交換等保守に手間がかかります。

②交流励磁機方式
 交流発電機の出力を半導体電力変換器で整流して界磁巻線に励磁電流を供給して励磁します。他励式と自励式があり,一般に他励式では発電機を励磁する主励磁機と主励磁機を励磁する小形の発電機である副励磁機があります。

③ブラシレス励磁方式
 回転電機子形の交流励磁機の電機子出力を回転整流器により整流して発電機に励磁電流を供給します。ブラシレス励磁方式は主励磁機を回転電機子形とし,ブラシやスリップリングが不要で,保守が容易であるという特徴があります。ただし,サイリスタ励磁方式に比べ,速応性は劣る面もあります。

④静止形励磁方式(サイリスタ励磁方式)
 パワーエレクトロニクス技術の向上に伴い大容量機に採用されるようになった方式で,発電機の主回路に接続した励磁用変圧器の出力をサイリスタを用いた整流器で直流へ変換し,励磁電流とする方式です。サイリスタでは点呼角を調整して直流出力電圧を変化させ,発電機の界磁電流を制御し,発電機端子電圧を調整します。サイリスタで構成される均一ブリッジ形の例を図4に示します。

静止形励磁方式(サイリスタ励磁方式)は応答速度が速く,界磁の印加最高電圧である頂上電圧を高くすることができるので,系統事故除去後の回復電圧を高くし,発電機の電気出力を大きくすることにより,過渡安定度の向上させることができます。また,サイリスタが静止機器であり可動部が少ないため,信頼性が高く,保守も比較的容易となります。

【解答】

(1)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ホ)巻線形誘導,(ヌ)回転電機子形同期,(カ)回転界磁形同期,になると思います。
ワンポイント解説「1.励磁方式の種類」の通り,スリップリングを経由せず直接タービン発電機の界磁巻線に電流を供給する方式に採用されるのは回転電機子形同期発電機となります。

(2)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)ブラシレス,(ヘ)コミュテータレス,(ヨ)スリップリングレス,になると思います。
ワンポイント解説「1.励磁方式の種類」の通り,スリップリングを経由せず直接タービン発電機の界磁巻線に電流を供給する方式をブラシレス方式といいます。

(3)解答:ロ
題意より解答候補は,(イ)可変抵抗器,(ロ)副励磁機,(チ)\( \ \mathrm {CVCF} \ \),(リ)回転増幅器,(ル)蓄電池,(ワ)励磁用変圧器,等になると思います。
ワンポイント解説「1.励磁方式の種類」の通り,他励方式は,タービン発電機や交流励磁機と同一軸上に取り付けられるのは副励磁機となります。

(4)解答:ヲ
題意より解答候補は,(ニ)電機子,(ト)同期化,(ヲ)界磁,になると思います。
分巻方式は,交流励磁機の出力を自身の界磁電流の電源として使用する方式です。電機子は関係ありません。

(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(イ)可変抵抗器,(ロ)副励磁機,(チ)\( \ \mathrm {CVCF} \ \),(リ)回転増幅器,(ル)蓄電池,(ワ)励磁用変圧器,等になると思います。
ワンポイント解説「1.励磁方式の種類」の通り,静止形励磁方式の構成機器として適当なのは励磁用変圧器です。



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