《電力》〈変電〉[H22:問3]変電所の塩害及びその対策に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,変電所の塩害及びその対策に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句を解答群の中から選びなさい。

変電所で電気絶縁のために使われるがいし,ブッシングの表面には,台風や季節風などによる強い海風により運ばれる海塩が付着する。この表面が湿潤を受けて\( \ \fbox {  (1)  } \ \)性を有するようになり、 漏れ電流が流れ,その発熱により電流が集中するところに\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が形成される。汚損,湿潤の程度によって\( \ \fbox {  (2)  } \ \)での局部的な放電の発生にとどまる場合から,表面が絶縁破壊し停電事故に至る場合もある。

変電所の塩害対策は,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)に耐えることを基本に,塩分付着量度合いを考慮して決められる。塩害対策は,母線がいしにおいては設計汚損量までは\( \ \fbox {  (4)  } \ \)で対策し,機器用がいしやがい管は,\( \ 0.03 \ \)ないし\( \ 0.06 \ \mathrm {[mg / cm^{2}]} \ \)まで\( \ \fbox {  (4)  } \ \)で対策し,それ以上は洗浄による対策を施しているのが実情である。\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の電圧では\( \ \fbox {  (5)  } \ \)塗布が用いられることもある。

また,重汚損地区では,屋内化や\( \ \mathrm {GIS} \ \)など隠ぺい化の対策が採られることが多い。

〔問3の解答群] \[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 汚損帯     &(ロ)& 導 電     &(ハ)& 雷過電圧 \\[ 5pt ] &(ニ)& シリコンコンパウンド        &(ホ)& 耐 熱     &(ヘ)& 乾燥帯 \\[ 5pt ] &(ト)& 格差絶縁     &(チ)& 絶縁強化     &(リ)& 開閉過電圧 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 半導電     &(ル)& 絶縁低減     &(ヲ)& グリース \\[ 5pt ] &(ワ)& 湿潤帯     &(カ)& エポキシ     &(ヨ)& 一線地絡時の健全相電圧上昇 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変電所における塩害発生のメカニズムとその対策に関する問題です。
問題の出題の仕方に少しクセがありますが,いずれも基本的な内容を問う問題です。電験対策としては特に後半の(3)~(5)の空欄が重要となってくるかと思います。

1.塩害発生のメカニズム
下図が塩害のイメージ図となります。
海岸付近では,日常的に海水に含まれる塩分が風により屋外変電所まで運ばれ,がいし表面に付着しますが,通常は降雨等による雨洗効果等で碍子表面の塩分は除去され,がいしの絶縁は保たれます。
しかしながら,台風や季節風等の強風が継続的に続くとがいしの汚損は一気に進行し,さらに霧や小雨等によりがいし表面が湿潤状態になると,がいし表面の絶縁が確保できず,漏れ電流が流れ,その漏れ電流の発熱により乾燥し,その部分に放電現象が発生します。
アークやフラッシオーバが発生したり,可聴雑音や電波障害等が発生することがあります。

2.塩害の対策方法
①密閉化,隠ぺい化
 そもそもがいしに付着しない様,屋内化や\( \ \mathrm {GIS} \ \)などにより隠ぺい化することが一番ですが,現実的にすべてのがいしを密閉化することは困難です。

②がいし洗浄
 定期的もしくは観測しながらがいしを洗い流すことでがいしに付着した塩分を取り除く方法です。


出典:日本ガイシ株式会社 HP
https://www.ngk.co.jp/product/search-business/insulator/

③絶縁強化
 耐塩がいしや長幹がいしを使用して,絶縁強度を高くする方法です。

④はっ水性物質の塗布
 シリコンコンパウンドを塗布することで,がいしに塩分や水分をつきにくくする方法です。0.5~2年程度で塗りなおしが必要となるため,場所が限定されます。

【解答】

(1)解答:ロ
題意より解答候補は,(ロ)導電,(ホ)耐熱,(ヌ)半導電,になると思います。
ワンポイント解説「1.塩害発生のメカニズム」の通り,がいしの表面に海水の塩分が付着して導電性を有することにより,漏れ電流が流れます。

(2)解答:ヘ
題意より解答候補は,(イ)汚損帯,(ヘ)乾燥帯,(ワ)湿潤帯,になると思います。
がいし表面が導電性を有し,漏れ電流が流れると,その熱によりがいし表面が乾燥し乾燥帯というものが形成され,放電現象が発生します。電験としては少し突っ込みすぎな印象の空欄です。

(3)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ハ)雷過電圧,(リ)開閉過電圧,(ヨ)一線地絡時の健全相電圧上昇,になると思います。
変電所の塩害対策は,一線地絡時の健全相電圧上昇に耐えることを基本に,塩分付着量度合いを考慮して決定されます。塩害発生時には一線地絡事故の発生が最も可能性が高くなります。

(4)解答:チ
題意より解答候補は,(ト)格差絶縁,(チ)絶縁強化,(ル)絶縁低減,になると思います。
ワンポイント解説「2.塩害の対策方法」の通り,塩害対策はある一定の塩分量までは絶縁強化により対策し,それ以上は活線洗浄等で対応することになります。

(5)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)シリコンコンパウンド,(ヲ)グリース,(カ)エポキシ,になると思います。
ワンポイント解説「2.塩害の対策方法」の通り,塩害対策として\( \ 154 \ \mathrm {[kV]} \ \)以下の電圧ではシリコンコンパウンド塗布が用いられることもあります。



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