《電力》〈火力〉[H22:問5]汽力発電所の蒸気タービン制御に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,汽力発電所(コンバインドサイクル発電所を除く)の蒸気タービン制御に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切な語句又は数値を解答群の中から選びなさい。

運転中の蒸気タービンの回転速度を一定に保つには,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)によって\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を駆動・制御し,タービンに流入する\( \ \fbox {  (3)  } \ \)の調節を行う。なお,再熱タービンにおいては,系統の負荷が急激に遮断されたとき,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を閉じても再熱蒸気がタービンに流入するため\( \ \fbox {  (4)  } \ \)によってこれを阻止し,過速を防止する。\( \ \fbox {  (2)  } \ \),\( \ \fbox {  (4)  } \ \)などを作動させる駆動力には一般に\( \ \fbox {  (5)  } \ \)が用いられる。

発電機の系統並列運転時には,タービンの回転速度は系統周波数に左右されるため,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)は系統周波数変化に対するタービン出力応答機能として働く。

系統事故時などにおいて,蒸気タービンが定格負荷運転から無負荷になり安定した時点では,蒸気タービンの回転速度は\( \ \fbox {  (6)  } \ \)するが,この回転速度変化量の定格回転速度に対する割合を\( \ \fbox {  (7)  } \ \)という。\( \ \fbox {  (7)  } \ \)が大きすぎると周波数変化への対応が鈍感になり,逆に小さすぎると敏感になる。\( \ \fbox {  (7)  } \ \)は,通常\( \ \fbox {  (8)  } \ \mathrm {[%]} \ \)程度に設定される。

〔問5の解答群] \[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 電動機     &(ロ)& 低 下     &(ハ)& 2 \ ~ \ 5 \\[ 5pt ] &(ニ)& 速度調定率     &(ホ)& 蒸気加減弁     &(ヘ)& 再熱蒸気止め弁 \\[ 5pt ] &(ト)& 負荷変化率     &(チ)& 12 \ ~ \ 15     &(リ)& 調速装置 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 蒸気温度     &(ル)& インタセプト弁       &(ヲ)& 同期装置 \\[ 5pt ] &(ワ)& 油 圧     &(カ)& 7 \ ~ \ 10     &(ヨ)& 蒸気流量 \\[ 5pt ] &(タ)& 主蒸気止め弁     &(レ)& 空気圧     &(ソ)& 上 昇 \\[ 5pt ] &(ツ)& 給水ポンプ出口弁       &(ネ)& 周波数変化率     && \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

汽力発電所の蒸気タービンの回転速度制御に関する問題です。
出題内容が機械的な内容が多く,火力発電所の運転業務をしてことがある方が作成した問題かなという印象です。
電気屋を志す受験生ならば,半分程度埋められれば十分かなと思います。

1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図
図1に再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図を示します。
ボイラの過熱器から出た主蒸気は主蒸気止弁,蒸気加減弁を介して高圧タービンに送られ,高圧タービンで仕事をした後,再熱器に送られます。
再熱器で再加熱した再熱蒸気は再熱蒸気止弁,中間阻止弁(インタセプト弁)を介して中低圧タービンに送られ,中低圧タービンで仕事をした後,復水器で凝縮されます。
中低圧タービンは大型のプラントであれば,さらに中圧タービンと低圧タービンに分けられます。
主蒸気止弁は全開・全閉運用で蒸気を縁切りする弁,蒸気加減弁は調速装置と連動して高圧タービンに流入する蒸気の流量を調整する弁,再熱蒸気止弁は主蒸気止弁と同様全開・全閉運用で緊急時に再熱蒸気を遮断する弁,中間阻止弁(インタセプト弁)は通常時は全開運用ですがタービン回転数上昇とともに弁を閉じていく制御をする弁です。

2.速度調定率\( \ R \ \)
発電機の定格回転数\( \ N_{\mathrm {n}} \ \),回転速度の変化量\( \ \Delta N \ \)としたときの定格出力\( \ P_{\mathrm {n}} \ \),出力変化量\( \ \Delta P \ \)の比を速度調定率\( \ R \ \)と言い,
\[
\begin{eqnarray}
R &=& \frac {\displaystyle \frac {\Delta N}{N_{\mathrm {n}}}}{\displaystyle \frac {\Delta P}{P_{\mathrm {n}}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] となります。また,同期発電機の回転速度\( \ \displaystyle N=\frac {120 f}{p} \ \)すなわち\( \ \displaystyle N∝f \ \)の関係より,定格周波数\( \ f_{\mathrm {n}} \ \),周波数変化量\( \ \Delta f \ \)とすると,
\[
\begin{eqnarray}
R &=& \frac {\displaystyle \frac {\Delta f}{f_{\mathrm {n}}}}{\displaystyle \frac {\Delta P}{P_{\mathrm {n}}}} \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と変形できます。ただし,上式において周波数が下がったときに出力を上げ,周波数が上がったときに出力を下げ調整するという関係があることを覚えておくと良いと思います。
一般の汽力発電所では,速度調定率は\( \ 3 \ ~ \ 5 \ \mathrm {%} \ \)になるように設計されています。

【解答】

(1)解答:リ
題意より解答候補は,(イ)電動機,(リ)調速装置,(ヲ)同期装置,等になると思います。
ワンポイント解説「1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図」の通り,蒸気タービンの回転速度は調速装置によって制御されます。調速装置は機械式と電気式がありますが,現在は電気式が主流となります。

(2)解答:ホ
題意より解答候補は,(ホ)蒸気加減弁,(ヘ)再熱蒸気止め弁,(ル)インタセプト弁,(タ)主蒸気止め弁,(ツ)給水ポンプ出口弁,等になると思います。
ワンポイント解説「1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図」の通り,汽力発電では,調速装置によって蒸気加減弁の開度を調整し,蒸気流量を調整します。

(3)解答:ヨ
題意より解答候補は,(ヌ)蒸気温度,(ヨ)蒸気流量,等になると思います。
ワンポイント解説「1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図」の通り,蒸気加減弁により,高圧タービンに流入する主蒸気流量を調節し,タービンの回転速度を調整します。

(4)解答:ル
題意より解答候補は,(ホ)蒸気加減弁,(ヘ)再熱蒸気止め弁,(ル)インタセプト弁,(タ)主蒸気止め弁,(ツ)給水ポンプ出口弁,等になると思います。
ワンポイント解説「1.再熱タービンを用いた汽力発電設備の蒸気タービンの系統図」の通り,負荷急変時の再熱蒸気タービンの蒸気流量はインタセプト弁によって阻止されます。

(5)解答:ワ
題意より解答候補は,(イ)電動機,(ワ)油圧,(レ)空気圧,になると思います。
蒸気加減弁やインタセプト弁などを作動させる駆動力には油圧が使用されます。

(6)解答:ソ
題意より解答候補は,(ロ)低下,(ソ)上昇,になると思います。
負荷が無負荷になると,蒸気タービンの回転速度は上昇します。自転車のペダルが軽くなるイメージです。

(7)解答:ニ
題意より解答候補は,(ニ)速度調定率,(ト)負荷変化率,(ネ)周波数変化率,になると思います。
ワンポイント解説「2.速度調定率\( \ R \ \)」の通り,回転速度変化量の定格回転速度に対する割合を速度調定率といいます。

(8)解答:ハ
題意より解答候補は,(ハ)\( \ 2 \ ~ \ 5 \ \),(チ)\( \ 12 \ ~ \ 15 \ \),(カ)\( \ 7 \ ~ \ 10 \ \),になると思います。
ワンポイント解説「2.速度調定率\( \ R \ \)」の通り,一般の汽力発電設備においては速度調定率は\( \ 2 \ ~ \ 5 \ \mathrm {[%]} \ \)程度となります。



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