《電力》〈新エネルギー発電〉[H23:問3] 風力発電設備の雷害対策に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,大形の風力発電設備の雷害対策に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

近年,自然エネルギーの有効利用という観点から風力発電設備が多数設置されている。高い構造物が単独で海岸などに設置されるため,雷害を受けやすい。特に,わが国の風力発電設備の雷害は,多くが日本海沿岸で発生しており,また,冬季におけるものが半分以上を占めている。

風力発電設備の雷害対策において考慮すべき特徴は,下記のようなことが挙げられる。

① 長大な\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が回転する。
② ナセル内部には高電圧部と制御用の低電圧部が混在する。
③ 日本海側の冬季雷は\( \ \fbox {  (2)  } \ \)の雷が多く,高構造物から雷雲に向かって放電が進展するため,落雷する確率が他の地域より高い。

風力発電設備の雷害対策としては,下記のようなものがある。

① 風力発電設備には,ナセルに\( \ \fbox {  (3)  } \ \)が設置されているものが多いが,回転する\( \ \fbox {  (1)  } \ \)を保護するのは困難であることから,風車が保護角度範囲内に入るように,独立して\( \ \fbox {  (3)  } \ \)を設置することが有効である。
② \( \ \fbox {  (1)  } \ \)の先端に\( \ \fbox {  (4)  } \ \)を,内部に引き下げ導線を設置すれば,雷撃による\( \ \fbox {  (1)  } \ \)破損の可能性は小さくなる。
③ 制御システムの雷害対策としては,\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の低減や制御ケーブルへの誘導の防護が有効である。

〔問3の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 正極性     &(ロ)& 絶縁レベル     &(ハ)& 負極性 \\[ 5pt ] &(ニ)& 絶縁部     &(ホ)& 接地抵抗     &(ヘ)& 避雷針 \\[ 5pt ] &(ト)& 接地棒     &(チ)& 受雷部(レセプタ)       &(リ)& ブレード \\[ 5pt ] &(ヌ)& 絶縁抵抗     &(ル)& 放電部     &(ヲ)& 動力伝送軸 \\[ 5pt ] &(ワ)& 接地線     &(カ)& 遮へい線     &(ヨ)& ハブ
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

風力発電の構造と雷害対策に関する問題です。
風力発電設備の構造は図1程度の概略で良いので理解しておくようにしましょう。
また,夏の太平洋側で起こる雷と冬の日本海側で起こる雷は極性が異なることも豆知識として知っておきましょう。

【用語の解説】

(イ)正極性,(ハ)負極性 
 雷は一般的には負極性で雷雲から構造物に雷(電子の塊)が落ちます。しかしながら,冬季の日本海側では正極性の雷雲が4割程度発生し,その場合は構造物から雷雲に向かって放電します。

(ロ)絶縁レベル
 絶縁階級のことと思われます。本題とは関係ありません。\( \ \mathrm {Y} \ \)種:\( \ 90 \ \)℃,\( \ \mathrm {A} \ \)種:\( \ 105 \ \)℃,\( \ \mathrm {E} \ \)種:\( \ 120 \ \)℃,\( \ \mathrm {B} \ \)種:\( \ 130 \ \)℃,\( \ \mathrm {F} \ \)種:\( \ 155 \ \)℃,\( \ \mathrm {H} \ \)種:\( \ 180 \ \)℃,\( \ \mathrm {C} \ \)種:\( \ 180 \ \)℃超

(ニ)絶縁部
 ある場所から絶縁している場所の総称です。

(ホ)接地抵抗
 風力発電で使用する場合は,風力発電設備本体と大地間の抵抗のことをいいます。

(ヘ)避雷針
 他の重要設備に雷が落ちないように少し高めの位置に設置し,落雷を受けた場合も安全に電気を逃がす設計をした針をいいます。

(ト)接地棒
 工事等で接地を取り安全に作業するために使用する器具です。本問とは無関係の内容となります。

(チ)受雷部(レセプタ)
 ブレード部に設置され,落雷が発生した際にブレードの損傷を抑えるためにブレードより落雷しやすくしている場所です。

(リ)ブレード
 風車の羽根部のことをいいます。

(ヌ)絶縁抵抗
 電気機器の大地からの絶縁の強さを表す指標です。

(ヲ)動力伝送軸
 ここではブレードから発生する動力から発電機へ伝える部分の意味と思います。

(ワ)接地線
 接地するための線路をいいます。

(カ)遮へい線
 送電線で発生したコロナ放電により通信線に誘導障害が起きないように設置する線で,架空送電の分野で出てきます。

(ヨ)ハブ
 インターネットの接続部のことをよく\( \ \mathrm {HUB} \ \)と言いますが,この設問中での意味は不明です。

【解答】

(1)解答:リ
題意より,解答候補は(リ)ブレード,(ヨ)ハブ,等になると思います。
風力発電で回転するのは長大なブレードです。

(2)解答:イ
題意より,解答候補は(イ)正極性,(ハ)負極性,になると思います。
電子はマイナスなので,正極性であると,構造物から雷雲に向かって放電します。

(3)解答:ヘ
題意より,解答候補は(ヘ)避雷針,(ワ)接地線,(カ)遮へい線,になると思います。
図1の通り,風力発電設備においては避雷針を設置することが有効です。

(4)解答:チ
題意より,解答候補は(ニ)絶縁部,(チ)受雷部(レセプタ),(ル)放電部,となります。
正極性という内容から(ル)放電部を選択しそうですが,名称は受雷部(レセプタ)となります。

(5)解答:ホ
題意より,解答候補は(ロ)絶縁レベル,(ホ)接地抵抗,(ヌ)絶縁抵抗,になると思います。
雷害対策として有効なのは,接地抵抗を低くして雷過電圧を大地に逃がすようにする方法となります。



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