《電力》〈送電〉[H24:問2]超高圧送電線で使用される多導体方式に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★☆☆(普通)

次の文章は,主に超高圧以上の送電線に多く用いられる多導体に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

多導体は,単導体に比べて次に挙げるような多くの利点があるため,主に超高圧以上の送電線に多く採用されている。

a.単導体と合計断面積が等しい多導体は,単位長当たりの全導体表面積が大きくなるとともに,\( \ \fbox {  (1)  } \ \)が小さいので,許容電流を大きくとることができる。

b.送電線の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が減少し,静電容量が\( \ \fbox {  (3)  } \ \)するため,固有送電容量が増加する。

c.導体表面の\( \ \fbox {  (4)  } \ \)が減少できるので,コロナ開始電圧が高くなり,コロナ損失,雑音障害を防止できる。

d.送電線の\( \ \fbox {  (2)  } \ \)が小さくなるので,系統安定度が向上する。

なお,多導体では,導体相互の間隔を保持するためにスペーサを取り付ける必要があるが,スペーサの取り付け間隔は,サブスパン振動,常時電流による\( \ \fbox {  (5)  } \ \),捻回復元現象及びクランプ把持力によって決定される。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 放熱効果     &(ロ)& アドミタンス     &(ハ)& 相互反発力 \\[ 5pt ] &(ニ)& 局部過熱     &(ホ)& フェランチ効果     &(ヘ)& 表皮効果 \\[ 5pt ] &(ト)& 抵 抗     &(チ)& 電磁吸引現象       &(リ)& インダクタンス \\[ 5pt ] &(ヌ)& 増 加     &(ル)& 磁束密度     &(ヲ)& 減 少 \\[ 5pt ] &(ワ)& 電流密度     &(カ)& 電位傾度     &(ヨ)& 対地電位 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

送電線の多導体方式に関する問題です。
多導体方式は二次試験の論説問題でも出題される可能性があるので,空欄穴埋レベルでなく,説明できるレベルまで理解するようにしておきましょう。

1.多導体方式の特徴
送電線の\( \ 1 \ \)相あたり\( \ 2 \ \)条以上の電線を用いる方法で,以下の特徴があります。
①コロナ臨界電圧が高くなる。 \( \ ≒ \ \) コロナ(電線表面での放電現象)が発生しにくくなる。
②インダクタンスが減少し,静電容量が増大する。
③同一断面積の単導体と比較すると表皮効果(導体内の電流分布が外側に集中する現象)が小さくなる。


出典:架空送電線の調査・設計HP
https://www.k-tls.co.jp/overhead-tml/chousa.html

【解答】

(1)解答:ヘ
題意より解答候補は,(イ)放熱効果,(ホ)フェランチ効果,(ヘ)表皮効果,等になると思います。
ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通り,表皮効果が最も適当となります。

(2)解答:リ
題意より解答候補は,(ロ)アドミタンス,(ト)抵抗,(リ)インダクタンス,等になると思います。
ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通り,インダクタンスが最も適当となります。

(3)解答:ヌ
題意より解答候補は,(ヌ)増加,(ヲ)減少,になると思います。
ワンポイント解説「1.多導体方式の特徴」の通り,多導体にすることで送電線の静電容量は増加します。

(4)解答:カ
題意より解答候補は,(ル)磁束密度,(ワ)電流密度,(カ)電位傾度,(ヨ)対地電位,等になると思います。
コロナ放電は電界の強さが空気の絶縁耐力より大きくなることにより発生する現象で,電位傾度とは電界の強さと同じ意味の用語となります。

(5)解答:チ
題意より解答候補は,(ハ)相互反発力,(ニ)局部過熱,(チ)電磁吸引現象,等になると思います。
このうち,多導体方式のスペーサにかかる外力に関する力は,電磁吸引現象となります。スペーサの取り付け間隔は短絡時の電磁吸引力を検討するということを聞いたことがあります。



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