《電力》〈送電〉[H30:問6] 雷過電圧とその試験法に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★☆(やや難しい)

次の文章は,雷過電圧とその試験法に関する記述である。文中の\(\fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$}\)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選べ。

送電線に発生する雷過電圧の原因としては,雷しゃへい失敗により電力線への\( \ \fbox {  (1)  } \ \)や,鉄塔あるいは架空地線に落雷が発生し鉄塔と電力線との電位差で生じる\( \ \fbox {  (2)  } \ \)によるものがある。この他に,\( \ \fbox {  (3)  } \ \)による雷過電圧があり,雷雲から反対極性の電荷が送電線路に誘起され,雷雲の放電に伴い,送電線路上の電荷は拘束を解かれ,\( \ \fbox {  (4)  } \ \)となって線路上を伝搬する。

送電線に現れる雷過電圧の波形は千差万別であるが,試験規格においては\( \ \fbox {  (5)  } \ \)の波形を一義的に統一し,標準波形と称している。標準波形は\( \ \mathrm {JEC}-0202(1994) \ \)「インパルス電圧・電流試験一般」に規定されており,正,負の極性とも\( \ \fbox {  (6)  } \ \)は\( \ 1.2 \ \mathrm {\mu s} \ \),\( \ \fbox {  (7)  } \ \)は\( \ 50 \ \mathrm {\mu s} \ \)が採用されている。\( \ \fbox {  (5)  } \ \)においては,高電圧のインパルス電圧を発生させるため,一般に多段式のインパルス電圧発生器が用いられる。その方式の一つに,多数のコンデンサを並列状態で充電し,直列状態にして放電させるものがある。印加電圧の波形は,供試物との回路に直列に接続する\( \ \fbox {  (8)  } \ \),並列に接続する\( \ \fbox {  (9)  } \ \),波形調整用コンデンサ及びリアクトルによって調整する。

〔問6の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 限流器        &(ロ)& 波高点 \\[ 5pt ] &(ハ)& 雷インパルス耐電圧試験        &(ニ)& 誘導雷 \\[ 5pt ] &(ホ)& 逆フラッシオーバ        &(ヘ)& 地絡サージ \\[ 5pt ] &(ト)& 波頭しゅん度        &(チ)& 制限電圧 \\[ 5pt ] &(リ)& 直撃雷        &(ヌ)& 接地抵抗 \\[ 5pt ] &(ル)& コロナ放電        &(ヲ)& 大地雷撃密度 \\[ 5pt ] &(ワ)& 開閉サージ        &(カ)& 放電抵抗 \\[ 5pt ] &(ヨ)& 波尾長        &(タ)& 波頭長 \\[ 5pt ] &(レ)& 振動波形        &(ソ)& 放電ギャップ \\[ 5pt ] &(ツ)& 進行波        &(ネ)& 制動抵抗 \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

\( \ \mathrm {JEC}-0202(1994) \ \)「インパルス電圧・電流試験一般」は一種平成26年電力問2にも出題されていますので,過去問を研究された方はラッキーであったかもしれません。(1)~(4)は電験一種としては比較的易しい内容となりますので,取りこぼしのないように注意しましょう。

1.雷インパルス耐電圧試験
雷に対する絶縁強度を仮想して確認する試験で,全波では\(1.2 / 50 \ \mathrm {\mu s}\)の波形を用います。
\(1.2 \ \mathrm {\mu s}\)は規約波頭長のことで,\(30%\)波高点と\(90%\)波高点を結んだ線と時間軸の交点から,\(30%\)波高点と\(90%\)波高点の間の時間を\(0.6\)で除した時間まで(図でいう\(T_{1}\))を言います。
\(50 \ \mathrm {\mu s}\)は規約波尾長のことで,\(30%\)波高点と\(90%\)波高点を結んだ線と時間軸の交点から,ピークを通り過ぎた\(50%\)波高点まで時間(図でいう\(T_{2}\))を言います。
また,印加電圧は過渡現象を利用した方法で調整し,回路に直列に接続する制動抵抗,回路に並列に接続する放電抵抗,波形調整用コンデンサ,リアクトルを使用します(図1)。


出典:JEC-0201(1988),JEC-0202(1994)より抜粋

【用語の解説】

(イ)限流器
故障電流をはじめとした電流を抑制するための装置です。

(ロ)波高点
ワンポイント解説「1.雷インパルス耐電圧試験」の通り,耐電圧試験の電圧の最高点のことです。

(ハ)雷インパルス耐電圧試験
ワンポイント解説「1.雷インパルス耐電圧試験」の通りです。

(ニ)誘導雷
雷雲が送電線に近づいて来たとき,静電誘導によって送電線に雷雲と反対の極性が誘起され,雷雲の放電に伴い,送電線路上の電荷の拘束が解かれ,線路上を伝搬する現象です。

(ホ)逆フラッシオーバ
架空地線や鉄塔等に落雷し発生した電圧が,がいしの絶縁破壊電圧を超え,送電線に過電圧を発生する現象です。

(ヘ)地絡サージ
地絡事故の際,生じる過電圧です。大きさは雷サージに比べるとかなり小さいものとなります。

(ト)波頭しゅん度
サージ電圧の立ち上がりの大きさ,勾配を表す指標です。

(チ)制限電圧
避雷器が放電する際に発生する電圧です。避雷器が放電を開始する電圧と考えても良いと思います。

(リ)直撃雷
物体に直接落雷する現象を言い,非常に大きな電圧が発生し,送電線に落雷した場合はがいし間のフラッシオーバ,架空地線や鉄塔に落雷した場合は逆フラッシオーバが発生します。

(ヌ)接地抵抗
電気機器を接地(アース)した際に大地に流れる電流の抵抗値を示すものです。

(ル)コロナ放電
架空送電線にて,空気の絶縁耐力を超えた場合に電線表面にて発生する放電です。

(ヲ)大地雷撃密度
地域毎の雷撃の発生頻度を示す指標で,雷雨の日数から算出されます。日本では本州の内陸から日本海側,九州等で高いです。

(ワ)開閉サージ
遮断器等の開閉操作により発生するサージ過電圧です。

(カ)放電抵抗
雷インパルス耐電圧試験時に,インパルス電圧を出すために使用される構成機器の一つで,回路に並列に接続する抵抗を放電抵抗と言います。

(ヨ)波尾長
雷インパルス耐電圧試験で規定されている時間で,\(30%\)波高点と\(90%\)波高点を結んだ線と時間軸の交点から,ピークを通り過ぎた\(50%\)波高点まで時間の時間のことです。

(タ)波頭長
雷インパルス耐電圧試験で規定されている時間で,\(30%\)波高点と\(90%\)波高点を結んだ線と時間軸の交点から,\(30%\)波高点と\(90%\)波高点の間の時間を\(0.6\)で除した時間のことです。

(レ)振動波形
進行波と比較して正弦波のような波形のことを指していると思います。

(ソ)放電ギャップ
雷インパルス耐電圧試験ではあらかじめコンデンサに電荷を充電しておき,ギャップを短絡させ放電させます。

(ツ)進行波
雷が落雷した地点から,線路上を伝搬する電圧の波を進行波と言います。

(ネ)制動抵抗
雷インパルス耐電圧試験時に,インパルス電圧を出すために使用される構成機器の一つで,回路に直列に接続する抵抗を制動抵抗と言います。

【解答】

(1)解答:リ
題意より,解答候補は(ニ)誘導雷,(リ)直撃雷になると思います。架空地線等の遮へい失敗により電力線に落雷することを直撃雷と呼びます。

(2)解答:ホ
題意より,解答候補は(ホ)逆フラッシオーバ,(ヘ)地絡サージ,(ル)コロナ放電,(ワ)開閉サージになると思います。鉄塔及び架空地線に落雷し,がいしの絶縁破壊電圧を超え,送電線に過電圧を発生させるものを逆フラッシオーバと言います。

(3)解答:ニ
題意より,解答候補は(ニ)誘導雷,(リ)直撃雷になると思います。雷雲が送電線に近づいて来たとき,静電誘導によって送電線に雷雲と反対の極性が誘起され,雷雲の放電に伴い,送電線路上の電荷の拘束が解かれる現象を誘導雷と言います。

(4)解答:ツ
題意より,解答候補は(レ)振動波形,(ツ)進行波になると思います。線路上を伝搬するのは進行波となります。

(5)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)雷インパルス耐電圧試験一択になると思います。

(6)解答:タ
(7)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ロ)波高点,(ト)波頭しゅん度,(チ)制限電圧,(ヨ)波尾長,(タ)波頭長等になると思います。ワンポイント解説「1.雷インパルス耐電圧試験」の通り,雷インパルス耐電圧試験では波頭長が\( \ 1.2 \ \mathrm {\mu s} \ \),波尾長は\( \ 50 \ \mathrm {\mu s} \ \)が採用されています。

(8)解答:ネ
(9)解答:カ
題意より,解答候補は(イ)限流器,(ヌ)接地抵抗,(カ)放電抵抗,(ソ)放電ギャップ,(ネ)制動抵抗等になると思います。ワンポイント解説「1.雷インパルス耐電圧試験」では,回路に直列に接続する制動抵抗,回路に並列に接続する放電抵抗で印加電圧の波形を調整します。放電ギャップは試験時に短絡する部分であり,電圧の波形の調整には使用しません。



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