《電力》〈変電〉[H26:問2] 変圧器の耐電圧試験に関する空欄穴埋問題

【問題】

【難易度】★★★★★(難しい)

次の文章は,変圧器の耐電圧試験に関する記述である。文中の\( \ \fbox{$\hskip3em\Rule{0pt}{0.8em}{0em}$} \ \)に当てはまる最も適切なものを解答群の中から選びなさい。

変圧器の耐電圧試験は,短時間交流耐電圧試験,長時間交流耐電圧試験と雷インパルス耐電圧試験の3種に区分される。

短時間交流耐電圧試験は,所定の商用周波交流試験電圧を1分間程度印加し,絶縁破壊を生じることなく耐えることを確認する試験である。

長時間交流耐電圧試験は,有効接地系統に接続される段絶縁巻線の運転期間中の常規対地電圧と\( \ \fbox {  (1)  } \ \)に対する絶縁強度を検証することを目的とする。商用周波交流試験電圧を規定の時間印加し,\( \ \fbox {  (2)  } \ \)を測定することにより,短時間交流耐電圧試験より低い印加電圧で,前駆的な段階での絶縁検証が可能である。\( \ 550 \ \mathrm {kV} \ \)変圧器では,
\[
\begin{eqnarray}
475 \ \mathrm {kV}\times 5 \ 分 \ ~ \ \fbox {  (3)  }\times t \ 秒~475 \ \mathrm {kV}\times \fbox {  (4)  } \\[ 5pt ] \end{eqnarray}
\] と規定されている。ただし,\(\displaystyle t=\frac {120\times 定格周波数    }{試験時の周波数} \ \left[ 秒\right] \) (注)である。

雷インパルス耐電圧試験は,主に雷サージに対する絶縁強度を検証することを目的とする。全波試験電圧波形は,標準雷インパルス電圧波形\( \ \fbox {  (5)  } \ \)を用い,通常正負両極性において各3回ずつ印加を行う。\( \ 550 \ \mathrm {kV} \ \)変圧器では,\( \ 1300 \ \mathrm {kV} \ \)と\( \ 1550 \ \mathrm {kV} \ \)の値が規定されている。

(注) 試験時の周波数が定格周波数の2倍以下の場合は,1分とし,2倍を超える場合に適用する。ただし,最短15秒とする。

〔問2の解答群〕
\[
\begin{eqnarray}
&(イ)& 共振過電圧   &(ロ)& 1 \ 時間   &(ハ)& 635 \ \mathrm {kV} \\[ 5pt ] &(ニ)& 750 \ \mathrm {kV}   &(ホ)& 短時間過電圧   &(ヘ)& 550 \ \mathrm {kV} \\[ 5pt ] &(ト)& 2 / 70 \ \mathrm {\mu s}   &(チ)& 開閉過電圧   &(リ)& 絶縁抵抗 \\[ 5pt ] &(ヌ)& 250 / 2500 \ \mathrm {\mu s}   &(ル)& 誘電正接   &(ヲ)& 30 \ 分 \\[ 5pt ] &(ワ)& 部分放電   &(カ)& 2 \ 時間   &(ヨ)& 1.2 / 50 \ \mathrm {\mu s}
\end{eqnarray}
\]

【ワンポイント解説】

変圧器の工場試験に携わっている方でなければ,ほとんど理解していることがない難問と言えると思います。電験の教科書ではまず出てこないのではないかと思います。本問を通じて理解しておくようにして下さい。

1.短時間交流耐電圧試験
下表に規定されている正弦波交流電圧を1分間程度印加し,絶縁破壊を生じることなく耐えることを確認する試験です。表1にある通り,公称\( \ 154 \ \mathrm {kV} \ \)系統までに採用されます。

2.長時間交流耐電圧試験
電圧の上昇に伴い,短時間交流耐電圧試験が厳しすぎると考えられるようになったため,経済的かつ高信頼度を確保できるように設定されたのが長時間耐電圧試験です。試験内容は,下表にある電圧をそれぞれ規定された時間かけます。公称\( \ 187 \ \mathrm {kV} \ \)以上の系統に採用されます。

3.雷インパルス耐電圧試験
雷に対する絶縁強度を仮想して確認する試験で,全波では\( \ 1.2 / 50 \ \mathrm {\mu s} \ \)の波形を用います。
\( \ 1.2 \ \mathrm {\mu s} \ \)は規約波頭長のことで,下図において,\( \ 30 \ % \ \)波高点と\( \ 90 \ % \ \)波高点を結んだ線と時間軸の交点から,\( \ 30 \ % \ \)波高点と\( \ 90 \ % \ \)波高点の間の時間を\( \ 0.6 \ \)で除した時間まで(図でいう\( \ T_{1} \ \))を言います。
\( \ 50 \ \mathrm {\mu s} \ \)は規約波尾長のことで,下図において,\( \ 30 \ % \ \)波高点と\( \ 90 \ % \ \)波高点を結んだ線と時間軸の交点から,ピークを通り過ぎた\( \ 50 \ % \ \)波高点まで時間(図でいう\( \ T_{2} \ \))を言います。


出典:JEC-0201(1988),JEC-0202(1994)より抜粋

【解答】

(1)解答:ホ
題意より,解答候補は(イ)共振過電圧,(ホ)短時間過電圧,(チ)開閉過電圧,になると思います。短時間過電圧か開閉過電圧か迷うところですが,絶縁強度の検証と文中に書いてあることから,短時間過電圧が適当と言えると思います。

(2)解答:ワ
題意より,解答候補は(リ)絶縁抵抗,(ル)誘電正接,(ワ)部分放電,になると思います。長時間交流耐電圧試験では,部分放電を測定することにより低い印加電圧で,前駆的な段階での絶縁検証が可能となっています。

(3)解答:ハ
題意より,解答候補は(ハ)\( \ 635 \ \mathrm {kV} \ \),(ニ)\( \ 750 \ \mathrm {kV} \ \),(ヘ)\( \ 550 \ \mathrm {kV} \ \),になると思います。ワンポイント解説「2.長時間交流耐電圧試験」で表に示されている通り\( \ 635 \ \mathrm {kV} \ \)となります。

(4)解答:ロ
題意より,解答候補は(ロ)\( \ 1 \ \)時間,(ヲ)\( \ 30 \ \)分,(カ)\( \ 2 \ \)時間,となると思いますが,\( \ 500 \ \mathrm {kV} \ \)級変圧器では1時間と規定されています。

(5)解答:ヨ
題意より,解答候補は(ト)\( \ 2 / 70 \ \mathrm {\mu s} \ \),(ヌ)\( \ 250 / 2500 \ \mathrm {\mu s} \ \),(ヨ)\( \ 1.2 / 50 \ \mathrm {\mu s} \ \),となると思います。ワンポイント解説「3.雷インパルス耐電圧試験」の通り,\( \ 1.2 / 50 \ \mathrm {\mu s} \ \)の波形を用います。



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